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“天を突く膝蹴り” ディーゼルノイ・チョー・タナスカン~ムエタイ史上最強の五人

2021年12月27日

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この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

格闘技――人が人に対して行うもので、最強の攻撃

まず有名なものが眼球に対する目突きと、睾丸に対する金的蹴りだろう。

格闘漫画であるグラップラー刃牙や続編のバキや範馬刃牙等により世の中に浸透するようになったが、逆にいえばえげつない行為であり、技術的なものを疑問視する声もあるという。

続いて、倒れている相手に対する、踵蹴り。

ただですら足で行う蹴りというものは、腕の3倍のパワーを秘めている上に、真下におろすために重力の加速もあり、さらに踵という足の中でも強固にして尖った箇所。

そして狙いは顔面の為、決まった場合はそれこそ生死に関わる。

さらには、膝関節に対して正面から行う関節蹴り。
決まれば一発で関節がひっくり返り、戦闘不能に陥るだろう。

鼻の下にある人中というツボに入れば、人は死に至る。

格闘漫画ではよくそこを撃ち抜くシーンなどが描かれているが、そのツボはあまりに小さいため、指1本でしか狙うことができず、基本的には現実的な攻撃とはいえないかもしれない。

そして今回の焦点となる攻撃が、掴んでの膝蹴りである。

今回いわゆるムエタイでは基本中の基本にして奥義ともいわれる、首相撲。

そこからの膝蹴りなど、一般的すぎて、大げさに思われるかもしれない。

デカい相手に捕まれての膝蹴り

しかし、最強たるには、いわゆる条件がある。

自分より体格が上回る相手に、完全にロックされた形で掴まれてしまった状態からの、膝蹴り。

自分よりデカい相手に捕まり、その場合だいたいは腕力も上で、結果的に完全に重心と体幹をコントロールされて、延々と膝蹴りを打たれてしまったら、もはや反撃も防御も無意味となる。

いわゆるその理想を実現させたのが、このディーゼルノイ・チョー・タナスカンである。

ディーゼルノーイは「小さな機関車」という意味だという。

まさしく彼の人間離れした力を体現した異名と言えるだろう。

資料がそれほど残ってないので大量の試合を検証したというわけでは無いのだが、私が拝見した試合――

ムエタイ対フルコンタクトの異種格闘技戦――フルコンタクトとは日本でいうフルコンタクト空手のことではなく、アメリカで伝統派空手から発生した、ローキックを廃したキックボクシングのことで、今回はローキックと膝は有りとのことだ。

ディーゼルノーイ・チョータナスカン vs. ジョン・モンカイヨ。

そこではいくつかのミドルキックやハイキックを放っていたが、基本的にはそれはつなぎで、そのまま首相撲に持ち込んでの膝蹴りに持ち込んでいた。

それもそんじょそこらの首相撲からの膝蹴りではない。

ライト級としては圧倒的ともいえる188cmの長身、その長い両腕で遠間から補足、そして万力のようにがっちりロックし、凄まじい勢いで引き込み、鋭角に膝蹴りを突き刺し、続けるという――それこそ処刑を連想させるような、えげつないものだった。

相手はその洗練された流れと、あまりの体格差に対抗できずに毎回その展開に持ち込まれ、その凄まじい威力の膝蹴りを腕でブロックすることしかできず、たまに返すパンチも腰も体重も入らずまるで意味をなさない。

そしてラウンドが進むにつれて、徐々に相手のガードにも隙が生まれていき、そしてかすかに開いた、といっても決定打となる顎や顔面ではなくボディ、そこに膝蹴りが打ち込まれると、

一発。

そのたった一発で、あばらがへし折られたのか内臓にまで響いたか、ジョンは悶絶しマットに崩れ落ち、そこで試合は終わりを告げる。

その他数試合拝見させて頂いたが、まるで焼き直しのように同じ展開が続く、ほぼそういった試合となっていた。

それをやっている者、見ている者はどう感じていたのか?

異種格闘技戦となった最初に取り上げさせてもらった戦いは大変な盛り上がりだったが、実際平時のスタジアムではどうたったのか。

実戦的ゆえのエンタテイメント性との兼ね合いの難しさ

諸説あるというが、一説には122戦110勝40KO10敗2分とされ、実際本人のインタビューでも120勝10敗程度の記憶はあるらしい。

1981年から四年間ルンピニースタジアムライト級チャンピオンのタイトル保持。

1982年、ワールドフリースタイルマーシャルアーツライト級チャンピオン獲得。
同年、ルンピニースタジアム Fight of the Year 及び スポーツマスコミ協会年間MVP受賞。

しかしあまりの強さに――ムエタイは賭けの対象でもあり、強すぎると成立しないため海外へ遠征。

韓国、アメリカ、カンボジア、ミャンマーを転戦し全勝するも、わずか24歳の若さで強制引退に追い込まれたという。

あまりにも原始的かつ実践的なその戦いは、K-1などではブアカーオが出てきて首相撲も禁止されたことから敬遠される可能性は高く、他の格闘技もエンタメ性が求められることから、やはり活躍の場を外に探す事は難しかったかもしれない。

事実ネット上でもディーゼルノイを動画をみて「がっかりした」という意見は多い。

もしかしたらそれは、UFCなどの総合格闘技などのジャンルならば、適応できた可能性もあるのかもしれないが、それも想像に過ぎないだろう。

ディーゼルノイが語る技術論に、相手の胸に視線を置き、人一倍技術を研究、闘争心と冷戦な頭脳というものがあるという。

ただ1つ、自分の特性を理解し、人との戦いというものを解析し、そして必要なものを取捨選択し、ただそれだけに特化する。

原始の、大山倍達がいったような本当の人と人の戦いの、その原点を見たような、彼の試合を見た後はそのような感覚に陥る。

不遇の最強戦士、彼が現代に現れたらどのような戦いを演じたのか、今は想像することしかできないのが残念でならない。

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