”大鷲” チャールズ・マーチン~極真史上最強の五人
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極真第一回世界大会の特殊性
チャールズ・マーチン。
極真空手の、記念すべき第一回世界大会。
ベスト8のうち6人を日本人が占める中、唯二人、外国人の中でベスト8に食い込んだアメリカ人である。
ならば所詮ベスト8と思われるかもしれない。
しかし実状は違う。
第一回世界大会は、創始者であり館長でありその総裁である大山倍達が、日本人が負けたら腹を切るとまで言い切った大会である。
大山倍達についてはこちら → “ゴッドハンド”大山倍達① ~神なる実像に迫る
日本人最強を示すためにも、まさか第一回で負けるわけにはいかない。
だからと言うわけではないが、この大会は、外国人には知らされなかった1つの、あまりにも大きな情報があった。
日本以外には、下段回し蹴りが知らされなかったのである。
下段廻し蹴りを知らされていないという巨大なハンデ
今ではありえない話であるが、当時の空手事情では、相手の太ももを蹴る、脚を蹴るという技術が、ムエタイと3対3の対抗戦を行われるまでは考えられなかった。
事実として、初めてその蹴りを見た空手家は、相手の足などを蹴ってと笑って馬鹿にしている。しかしその後、そのあまりの破壊力に、何も言えなくなるのだが。
事実として過去全日本大会で準優勝に輝いたハワードコリンズ。鳥人として前評判が高く、跳び後ろ回し蹴りを開発したウィリアムオリバー。後にあまりに圧倒的な力により疑惑の反則負けを犯しそれでも世界大会3位に入った、既に極真史上最強の1人にあげたウィリーウィリアムス。
そんな強豪外国人と謳われた彼らが、誰1人としてベスト8に入ることがなかった。
それが下段回し蹴りと言う、その攻め方もさることながら、守り方も知らなかったがための圧倒的なハンデのためである。
ちなみに特にハワードコリンズとウイリーウイリアムスは、その前々段階で潰し合わされると言う徹底ぶりもあったりすのだが……。
ウイリーウイリアムスについてはこちら → ”熊殺し” ウイリーウイリアムス ~極真史上最強の五人
宙を舞う巨体、相手を食い破る後ろ回し蹴りと正拳という名の爪と牙
そしてチャールズマーチン。
彼は、タイトルにも述べたが、大鷲と謳われた。
彼はその2メートルにも及ぶ巨大で、宙を舞うのである。
脛受けすら知らなかった彼は、相手から飛んでくる未知の技であるローキックを、なんと空中に飛ぶことによって回避し、そのまま蹴り、もしくは凄まじい威力を持つ正拳中段突きを相手の胸ぐら、腹に叩き込み、ベスト8――準々決勝まで勝ち上がった。
特にハイライトといわれているのが、2メートルのマーチンをして見上げるカダリ選手との対戦。
ここで彼は、使われこそするが当時まずほとんど当たることのない後ろ回し蹴りをぶち当て、相手を失神にまで追い込んでいる。
さらにはベスト16では当時のホープ東谷巧に何もさせず、その正拳突きで腹を徹底的に効かせ完勝した。
ローキックの大家・盧山初雄との準々決勝の真相
そして準々決勝で当たったのは、ローキックの大家と言われた、盧山初雄。
事実として、その時点で極真で最も下段廻し蹴りがうまく、強かった選手である。
ではその戦いは結局のところ惨敗だったのか?
まず結果だけをいう。
延長、3対0。
これだけでも、いかに接戦だったかと言うことが見てとれる。
そして実際私が試合を拝見したところ、正直なところ3対0とするほどの差はついていない。ひいき目に見ても、1本旗が上がってもまぁ納得できるか? と言うところだ。
盧山初雄の蹴りを飛び上がって躱し、右の突きをぶち込み、遠くから蹴りこみ、盧山初雄もまた下突きを返す。
その後この盧山初雄は決勝まで上がり、優勝した佐藤勝昭と事実上の互角の展開で例を見ない三度の目の延長まで戦い抜き、最後は3対2と言う薄氷を踏む接戦の末、敗れている。
事実上の世界最強者と言っていい。
そんな彼と、下段廻し蹴りの攻め方受け方を知らないと言う信じられないほどのハンデを背負った上で、ほとんど五分。
不運の最強紳士
もし彼が、4年後下段回し蹴りを知った上で、日本に上陸していたのなら?
彼は結局それで引退し、後は本職である優秀なビジネスマンとして今度はその知性を活かして活躍しているという話である。
そして後進を、同じアメリカの後輩であるウイリーウイリアムスに任せ――そしてその結果はすでに述べたとおりである。
チャールズマーチン。
現代に生きていれば、世界チャンピオンになった可能性が非常に高い逸材であろう。
その不運に、私はただただ思いを馳せるばかりだ。
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