戦慄場外KO!具志堅用高vsファンホセグスマンは歴史的大番狂わせ、世界を射止めたその一戦!

2024年4月9日

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圧倒的不利な前評判

日本が誇る偉大なるボクシングの世界チャンピオン、具志堅用高。

WBA世界ライトフライ級を13度も防衛し、その記録は未だ日本人男子世界王者の最多記録であり、故郷である沖縄を越えて日本屈指のボクサーであり、そして引退後のタレント活動でも凄まじい知名度を誇る彼。

そんな具志堅用高の試合である意味最も強烈なインパクトを持ち、有名とも言える試合が、1976年、10月10日、WBA世界Jrフライ級タイトルマッチ、ファン・ホセ・グスマン戦である。

この試合は、それまでに五万試合ものボクシングの試合を見てきたと言う香川照之にして、ナンバーワンと言わしめるほどの劇的なものだったと言う。

この試合、当時21歳の具志堅用高は、日本中の人間から絶対に負けると思われていたと言う。

対戦相手のファンホセグスマンは、当時22戦21勝18KO、しかもその18KOのうち、11回が1ラウンドKOと言う衝撃の強打者。

事実としてその試合の前の公開練習では、ヘッドギアをつけて、14オンスと言う大きなグローブをつけているにもかかわらず、スパーリングパートナーをドカドカと倒してしまったと言う。

そのあまりの破壊力からつけられた異名が、"象を倒す"パンチと言われたヘビー級の名ボクサーになぞられた、"リトル・フォアマン"。

その時点で具志堅用高はプロで8戦しかしておらず、世界ランキング10位。

試合会場は山梨県甲府市、山梨学院大体育館、新チャンピオンの期待を持てないこの試合は、世界タイトル戦としては異例の地方都市での開催となったと言う。

しかもスパーリング用のリンクはチャンピオンにしか与えられず、具志堅用高やむを得ず近くの娯楽施設でトレーニングを積んだと言う。

グスマンのあまりの破壊力を目の当たりにした具志堅用高は、夜も眠れずに、ひたすら試合をし、追い詰められるイメージが脳裏に繰り返され、トイレを行き来する数だけを積み重ねていたと言う。

具志堅用高は8戦8勝5KO、15ラウンド、あまりにも無謀ともいえる挑戦が始まった。

壮絶な幕開け

第一ラウンド、飛び出す具志堅用高に、迎え撃つグスマン。

かなり近い間合いで、右ジャブを飛ばす具志堅用高。

一瞬のグスマンの右アッパーが、空気を切り裂くような鋭さ。

そしてチョッピングライト、左右フック、重たい、音が場内に響き渡る。

さらに強引な右フック、しかし具志堅用高負けずにフックを返す。

ここまで見る限り、破壊力では雲泥の差があるように思われる。

そう思っていたら、1分過ぎ、飛び込んでの左ストレートがグスマンの顎をとらえる。

まるで交通事故のような鋭さ。

さらにボディー、負けていない、具志堅用高は決して負けていない。

飛び込んでの鋭い左右、空間把握能力、間合いと言う意味では、具志堅用高が上と言って間違いないだろ。

ワンツーの打ち合いから、2分過ぎ、具志堅用高の左右フックの4連打!

強い!

グスマンのオーバーハンドの右にも、確実にガードして、それに慣れてきているように思わせる。

2ラウンド、開始早々から右フックからの左ストレート、それがグスマンの顎をまともにとらえる場面が繰り返される。

グスマン、ここまでほとんど手が出せていない。

と思っていたら50秒で、グスマンの何気なく出されたような右で、具志堅用高がよろめく。

化け物め……本当に一発の破壊力のものが違う。

しかし接近してくるところに回り込んでの右フックと言うお手本のような回避術で、見事にその危機を脱する。

この試合、右フック、グスマンが見えていない、そこが焦点になるだろう。

と思っていたら1分半、左フック、右フック、右アッパー、そこからの正面に向けた右フックからの、左フック、それが左をフルスイングしていたグスマンにレフトフックの形で顎を貫き、体を半回転させ、劇的なダメージとなり、膝を折らせる。

しかしそこでダウンと油断せず、左フック、左ストレートでロープに吹き飛ばし、跳ね返ってきたところに、右フック、左右の6連打!

もはや体勢は完全に崩れているが、構わずロープにのしかかっているそのあごめがけて、渾身の右アッパー!

その一撃で、グスマンをロープの外に叩き出す!

なんだこの一撃、お前は鷹村守か!?

試合続行、具志堅用高が詰めて、グスマンの右に左を合わせる。

さらに左右の連打連打連打、しかしグスマンも応えて、紙一重でかわすと言う高等技術を見せつける。

さすがにグスマンも一発がある。

あまりにも前かがみは大丈夫なのかと心配になる。

しかし具志堅用高は構わず、体ことを投げ出すようなパンチの連打。

コーナーに追い込み、右フックで拭き飛ばし、さらに畳み掛けてアッパーの連打から左ストレートをカウンターで打ち明けて、止めは右アッパーで再びダウンを奪う。

カウンターが交錯する中盤戦

3ラウンドは初っ端から接近戦の打ち合い、その中で狙って一発の左のカウンターで効かせる。

そして今度は反対のコーナーに追い込んで、ショートの本当に鋭い左右のストレートの連打でまたも膝を砕く。

ほんとこの人、フック、アッパーストレート、何でもできるな!

なんと濃厚な7分半か。

しかしそこでやや失速したところで、2分すぎ、グスマンの飛び込んでの右からの、左、右、左のフックがまともにカウンターの形で具志堅用高の顎を撃ち抜く。

がくっとなる。

そこを狙ってグスマンが左右フック、アッパーで猛然とおそいかかる。

しかしそれを具志堅用高は見事に交わし、逆に右ストレートをカウンターでぶち当てる。

壮絶な戦い。

4ラウンド、具志堅用高が追い、グスマンが下がる展開。

1分近くでコーナーまで追い詰めて、やはり左のカウンター。

ようやく気づいた、具志堅用高とは、はじめの一歩の宮田一郎のような、カウンターファイターだ。

待つ事はせず、自分から攻めていき、接近する中、危険な一撃を狙う。

それが1分半で炸裂し、左右のフックから、コーナーに追い詰め、カウンターを炸裂させ、外に出す勢いでロープに磔にする。

そして一瞬離れたところで相手を前に出させて、そこで右左のワンツーで、下半身が吹き飛ぶほどのダメージ、ダウンを奪い取る。

追い詰める、左ストレートの連打、無尽蔵のスタミナ、この男は永久機関でも積んでいると言うのか?

そして訪れたカンムリワシの一撃

5ラウンド、ガンガンプレッシャーをかけていき、ボディーと顔目に見事に打ち明け、終了間際コーナーに追い込む。

6ラウンド、前回多少勢いを抑えたせいか、動きがまた軽快になっているように見える。

右ジャブの連打から、振り回してくるフックの1つをとって、左フックのカウンター一閃。

そして2分近くで、ボディーの連打、それが効き、アッパーからのストレートでさらに追い込み、そこから天空に届くようなものすごい右アッパーカット。

ボディーが効いた。

7ラウンド、閃光のような右ジャブから、左ボディ、そしてさらに右左の連打から同じ閃光のような左ストレート。

右、左のアッパーカット三連打、そこに左フックのフォローを加え、グスマンはマットに崩れ落ちるように倒れ込んだ。

そのまま大の字、上半身を起こすが、首を振って起き上がるのを拒否。

完膚なきまでに、完全な形で、無敵のチャンピオンを、木っ端微塵に打ち砕いだ。

その最後のアッパーカット、その神々しい姿は、まるで、形を指し示す先駆者のようにすら映った。

ここから、具志堅用高のカンムリワシ伝説が始まる。

試合後に本人が語ったと言う、ワンヤ、カンムリワシニナイン、自分はカンムリワシになりたいと言う、その言葉の通りに。

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