九龍ジェネリックロマンス 郷愁と自分と混沌、甘く切なく苦しさすら愛おしいその恋

2024年4月9日

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舞台設定の重みと意図

最初聞いた時は九龍という位だから、やはり九龍城が舞台なのかと考えた。

九竜城は激レアさんを連れてきたと言う番組で知った。

一種の無法地帯で、やりたい放題の増改築を繰り返してあまりにも増殖して、手抜き工事で、異常なほどにあちこちがつながって、まともな建築じゃないからガタが来て、トイレなんかも屋上から1階まで落ちていったりとか、衛生状態がめちゃくちゃで、まさに魔境と化していた。

だけどその空間がまさに故郷で、その空間でしか生きられない人々がいて、だけど時代の流れでついにやってきた区画整理の時、そこから抜け出すことをかたくなに拒絶していた住人たちの姿がテレビに映し出されて、それが私の胸に、目に、焼き付いていた。

話は戻ってこの漫画だが、九龍城をベースにしているにしてはやたら小綺麗だな、と感じていた。

そしてこの作者眉月じゅんは、女子高生とバイト先の店長の二人という、その禁断の恋を軸にした「恋は雨上がりのように」の作者だと言う事はすぐに察しがついた。

だからこそどこか甘酸っぱい、そういった展開が繰り広げられるのだと考えていた。

それが見事に裏切られたと気づくまで、それほどの話数は必要なかった。

胸に落ちるニコチンと上がる煙のような切なさ

ヒロインである鯨井令子は32歳と、それなりに歳はいっているという設定だったが、しかしその仕草は可愛らしく、ウブで、そして最初から同僚の先輩であるあか抜けない工藤発を慕っており、だけど年齢的なものなどから積極的になれず、自信が持てず、だけど好きだと言う気持ちははっきりしていてと、なかなか筆舌に尽くしがたいほどの魅力に溢れていた。

そして個人的にメガネでショートカットでキャリアウーマン風だけどそれを表に出せないと言うギャップ、スタイルが良くてセクシーな子は好みなので、そういう意味でもとても楽しく読み進められる勢いがあった。

そして舞台になっている九竜城のその、どこか懐かしく、雑多なのだけれどそこ特有の温かみや、カオス、本格中華、行きつけの定食屋、カフェなどが、まるでそこに住んでいるかのような臨場感をもたらし、どんどん作品に引き込まれていく。

そして現れる名言。

懐かしさって、恋なのよ。

いつまでもいつまでも脳裏に残るような、刹那的な、感覚に訴える言葉。

そして何気ない九竜町での職場恋愛を取り上げている、と思わせておいて、ジェネリックという何とも言えないタイトルに込められた、日本では低価格の薬品を表すそれの意図。

既に解体されたはずの九龍城がいまだに残る謎、自分と同姓同名の人間が生きていた奇妙な実態、そして九龍城全体に幅を利かせるジェネリック会社の怪しさ、不気味な社長蛇沼みゆきとその恋人の暗躍。

その中で自分と言う物の本質、偽物ではないかと言う恐怖、相手を思うこの気持ちは誰のものなのかと言うその葛藤。

それは懐かしさと切なさと、そしてその奥にあるほんのりとした暖かさと自分と言うものの本質。

ほんの少し大人向けだけれど、様々な年代、性別の人に、手に取ってもらって、その本質を覗いてほしいと思えるような、私自身もその結末を見たいと思えるような、そんな不思議な作品だった。

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