入院系ファンタジー感動小説「月が堕ちた夜」
まえがき
幼少期の入院の記憶
私は幼少期、入院したことがあります。
親からはひきつけと聞かされていましたが、実際はてんかんという方が正しいかもしれません。
事あるごとに意識を失い、その後しばらく目を覚まさまない。
ある時などインフルエンザで眠っていて、弟が気づいて呼び掛けても反応がなく、大変な騒ぎになったこともあるといいます。
それが更に悪化して数か月の入院を余儀なくされたらしいです。
しかし記憶という記憶はありません。
ただなんとなく、雰囲気を覚えています。ただその空気感とすらいえないような、茫洋としたものを。
経験した二つの大病
そしてある時、ドキュメンタリーや映画やゲームや漫画や小説で、そういったものに触れる機会がありました。
まるでその時の記憶を、追体験しているように感ぜられました。
なぜか、それはどこか心地よく、悪い気がしないものでした。
その後、私はさらに二つの大病を患いました。
不治の病である潰瘍性大腸炎闘と、死に至る病であるうつ病です。それについては以下にて体験記を書かせていただきました。
→ 不治の病――潰瘍性大腸炎闘病記①「予兆のない訪れ」
→ 死に至る病――うつ病闘病記①「認識の誤り」
それにより、私の人生観は大きくひっくり返されました。それも一度ではなく、二度も三度も。
二度と治らないということと、死に瀕するという経験は、自分の価値観や社会性を根底から覆すものでした。
そして様々な体験をして、色々な知識を得て、たくさんの方々の話を聞きました。
病院をテーマにした小説
その末、私は病院をテーマにした小説を書いてみたいと思うようになりました。
学校でもなく、家でもなく、やることもなく、やるべきこともなく、すべてを自動で世話してもらい、本人にはやるべきこともやりたいこともやれることもない。
病人には、いったいなにがあるのか?
それを、個人的に追求してみたくなったのです。
それを、みなさんと共有してみたくなったのです。
たくさんの反響、共感
その結果として、お読みいただいた方には最も反響をいただく作品となりまっした。
恐縮ではありますが、今日という日を苦しく耐えて頂いている方の力になれたらと思っております。
最初は少々読みづらい感は否めませんが、ご一読いただけたら幸いです。
第1章「death」
#1「あの日の邂逅」
空に、堕ちた。
彼女のその姿は、ぼくの瞳にそう写った。
真っ逆さまに、天に吸い込まれていく。
そんな風に見えた。
それは常識で考えられている重力とは、真逆の原理。あり得ない、逆流。
なのに彼女は。
瞳を閉じて。
まるですべてを、流れに委ねているようだった。
恐怖など埒外の感情のように。
それらすべてが、当然のことのように。
それがぼくに、どこか不思議な錯覚を起こさせた。
足元が根底から、崩れ落ちるような。
まるで天地が、逆転してしまったような。
それはすべての理(ことわり)が一瞬にして反転してしまったかのような、形容しがたい不可思議な感覚だった。
大切な宝物が、ガタクラへと姿を変え。
唾を吐いて軽蔑していたものが、なによりも上座に至る。
それは、恐ろしい連想だった。
日々の生活で続けてきたすべての事柄が――努力が。
起こってきた出来事が――思い出が。すべて反転し――悪となり、代わりに犯罪や裏切りなどが、もてはやされる。
それはなんて地獄なんだろうと、一瞬考えた。
もしそれが実際に起こり得るとするなら、ひとはまともには生きていけない。
日々の生活を積み重ねることがひとの営みそのものともいえるのに、それ自体が否定されるとするなら、ひとはなにを寄り代に生きていけばいいのか?
知能というものを脳にプログラミングされたその日に、ひとは本能のみで生きるすべを失った。
それは科学や運動分野やその他もろもろの多大なる発展を生んだが、同時に環境破壊などの大きなジレンマも抱える結果になった。
そして本能にのみ従う動物と違ってひとは、悩むようになった。
それを解決するために意味や意義などから、自身の存在証明を図るに至った。
そしてひとは、自身では解決できない事柄をより大きな寄り代――神や悪魔などの架空の存在に、頼るようになった。
ならばそも。
知能は、本当に必要なんだろうか?
悩み、苦しむためだけのものなら――アダムとイヴが知恵の実を食べてしまったことにより間違って得てしまったものなら、そもそもが不必要なものだったんじゃないんだろうか?
ふと、そう考えたからなのか。
その時のぼくには、空に堕ちていく彼女の姿が――美しいものに、視えた。
なにものにも、縛られていない。世の理と呼ばれるひとがひとのためにひとの手により勝手に作り上げた様々な道理、善悪、ルールなど、その視界にすら入れてはいない。
生まれた、そのまま。
生物としてありえる様々な可能性、あらゆる枠組みを彼女は、超越して視えた。その在り方はもはや、ひとと呼ぶことすらおこがましい。
それこそ天使や悪魔といった、人外の存在。
そんな風に、ぼくには想えた。
ぼくはそれに、手を伸ばした。
#2「ぼくの生き方」
生まれてからぼくは、まともな人間関係というものを知らずに生きてきた。
見えるのは、真っ白なものだけ。
簡素な服に、毛布に、ベッドフレームに、サイドテーブルに、その上に載っている花瓶に、壁に、床に、天井。
なにもかもが磨き上げられた、清潔な場所。きちんと整理されて、埃ひとつ落ちてなくて、その代わり生活感がなくて、それは人の温もりを感じさせない、無機質な空間――
これがぼくの世界の、全てだった。
どんなに見つめても、どんなに願っても、この世界が変わることはない。
開かれた窓からも、なにが聞こえるということもない。
言ってしまえばこの空間は、既に完成された、終わった世界だった。
だからぼくはそこから視線を転じ、手に持っている本に注ぐ。
本のタイトルは、『在るべき人間関係』。特に望んでというわけじゃない。
ただタイトルに、惹かれといえばそうかもしれない。
ずっと、病室のベッドの上で暮らしてきた。
運動なんてしたことないし、会話もたまにやってくる母親か数人の看護士さんに加えて担当医である渡河辺(とかべ)先生と、合計してもせいぜい一日15分ていど。
親に看護士に医者に、大切に、大切に、それこそ腫れ物にでも触るように、扱われてきた。
それをありがたいと感じないわけでもなかった。
それを疎ましいと感じていないわけでも、なかった。
「…………」
パラリ、とページをめくる。
この瞬間だけは、ぼくはぼくでいられる。
その他大勢の人間の顔色を、うかがわないで済む。
窓から流れる風が、ぼくの前髪を揺らした。
だからいつも、本ばかり読んできた。
もしくは漫画や、ひとりで出来るいくつかのゲームなんか。
動けない以上、やれることは少ない。トランプやオセロなんかの第三者を必要とするものは出来ないし、テレビも一応最低限見てはいるが同じことの繰り返しということと一般人との気持ちの共有を図れなくて、最近では手が伸びなくなっていた。
結果としてぼくの日常は活字が中心の生活になっていった。
一人で、物語の世界に浸ってきた。漫画やゲームや小説の世界で、ぼくは生きてきた。
「…………」
パラリ、とページをめくる。
そのたび新しい情景が、脳裏に浮かぶ。想像に浸る。無い経験は、映像メディアで補完する。そうやってでしか、ぼくは楽しむすべがない。
そのなかでは登場人物たちはみな、日々を仲間と、楽しく過ごしていた。
仲間。
それは、心許せる関係だった。
お互いを気遣うのではなく、思いやり、時には怒り、だけどその根底にあるのは誰にも切れない、絆。
それが、ぼくの興味を引いていた。
対等な扱いというものに、憧れていた。
「消灯時間ですよ、成海(なるみ)さん」
突然の呼びかけ。
それにぼくは埋没していた意識を引き上げ、俯かせていた頭を上げる。
そこには背が高く、しかも横にも広くて頑丈そのものといった看護士が壁にある蛍光灯のスイッチに手をかけ、こちらを見つめていた。
ぼくの担当をしている看護士の、裕子(ゆうこ)さんだった。
見立てだが身長は170、体重は80近くに及ぶと思われる。もちろん目測で、さらに参考にする対象が自分のデータしかないという貧弱な予測だったが。
「電気消しますよ、いいですか?」
「あ、はい」
少し強めなその確認に、ぼくは読みかけの本を閉じる。
そしてサイドテーブルに置き――お決まりの笑顔を、浮かべる。
「大丈夫です、お願いします」
「じゃあ、静かにおやすみなさいね、成海さん」
それに裕子さんもいつものたっぷりした笑顔と挨拶を返し――天井の蛍光灯はその役割を、終える。
今日も夜の時間が、やってきた。
#3「ぼくの生き方②」
「――――」
裕子さんがドアを閉めたのを確認し、ぼくは横になり、毛布を肩までかけた。
12月も半ばの今日、暖房が利いているとはいえやや肌寒いのには違いなかった。そして体勢が整ったぼくは、いつものように瞳を閉じる。
閉じたいわけじゃない。閉じる他、ないからだ。
強制的にほとんどすべての活動が停止させられる、この時間帯。
患者であるぼくに許されているのは眠りにつくか、それまでのあいだ無理やりに近い形で様々なことを考えさせられるか、くらいだった。
考えたくも、ないのに、だ。
「――――」
いまの自分を、俯瞰的視点で捉える。
ベッドに横たわり、暗くなった部屋で、言われるままに従い、抵抗するそぶりすらも見せない。
これがぼくの、生き方だった。
「――――」
憂鬱になる。
自分の言葉のせいでというのが、なんとも皮肉で笑みすら作れなかった。それにさらに悪循環的に、気分は落ち込んでいった。
夜に考えごとをするのは、ぼくはあまり好きではなかった。
闇の中で思考を続けられるほど、ぼくは見てきたものが多いわけじゃない。
だからそれは思考ではなく、想像、もしくは空想という方が近いと思う。
だからいつも最初に想うのは、外の世界のことだった。
ずっと、こうして生きてきた。
だから他の生き方を、ぼくは知らない。
というよりは、したことがないというべきか。知る知らないだけでいうなら、ぼくは知っている。本やインターネットを初めとする、様々な情報ツールによって。
だけど、気持ちがわからない。
実際に外の世界で生きていくということが。
その、意味が。
学校に行ったり、遊びに行ったり、仕事をしたり、飲みに行ったり、友達を作ったり、恋人を作ったり、結婚したり。
そういうことが、わからない。
それがいったいどういうもので、どういう意味があるのか? それが当たり前というものなのか? それが幸せ、というものなのか?
じゃあいまのぼくは、いったいなんなのか?
「…………」
わからない。
考えても、実際経験したことがないから。失敗や苦しみを自分ごととして捉えられないから。
それらをどうしても、共有できなかった。
だから叫び出すほど嬉しい、という気持ちもまた、わからなかった。
幸せというものは、そういうことなのか?
なにか信じられないほど楽しい時、そう感じるものなのか?
わからない。
疑問ばかりが溢れ出てくる。だけど答えてくれる人はいない。誰も、ぼくと心の底から付き合おうと、向き合おうとはしてくれない。
誰も、教えてはくれない。
ただ本に、縋りつくしかない。
だけど今は、本を読むことすらできない。だから空想することしか、ぼくには出来ない。できない。ほとんど。
なにも。
なにもぼくはに決められない。自分の運命で、すら。なら。だったら。ぼくは。ぼくはいったい。
――ぼくはいったいなんのために、この世に生まれたのか?
月が、陰った。
「…………?」
ほとんど無意識に、ぼくは眉をひそめた。
それは初めての出来事だった。
消灯後の病室では、基本カーテンは閉め切られている。だからそもそも月光の存在を意識することがなく、だからそれが突然陰るなんてことも、本来ありえないことだった。
ぼくは思わずそちらへ、視線を向けていた。
今日の雲は、そんなに足が速いのだろうか? なんてことを、思いながら。
窓枠に切り取られた闇夜が、視界に入る。
カーテンはそこから吹いているだろう風に、たなびいていた。
そこに、誰かの輪郭が溶け込んでいた。
ぼくは思わず、呻いていた。
「あ……」
黒く塗りつぶされた、小柄で華奢なシルエット。
大人のものではなく、しかし子供というほどでもなく、そして腰の位置から広がるシルエットが、それが自分と同年代程度の少女であることを見ているぼくに、伝えていた。
突然の展開に、まったく頭がついてこなかった。
そしてついてこないままにマグマから溢れる泡のように、次々と疑問が浮かんできていた。
だれ?
なんでそんな所にいるの?
何をしにきたの?
どこから?
どうやって?
どこのひと?
「…………」
だけど言葉は、うまく出てきてはくれなかった。
突然現れた人物に咄嗟に対処できるほど、ぼくは場馴れしていない。そこにはハッキリと、経験の差というものが出ていた出典ライトノベルの戦闘シーン。
そんな何も出来ないぼくをよそに、輪郭は窓枠からつま先を、下ろした。
そしてゆっくりと、こちらに向かって――歩いてくる。
「…………」
どくん、どくん、と心臓が脈打つ。そこに芽生えているのは恐怖なのか、期待なのか、それとも別の感情なのか? 答えは一つも、出ではこなかった。
輪郭の影が、ぼくの姿を覆い尽くす。
伸ばされた掌が、ぼくの頬を撫でる
「――――だ……」
疑問を意味する文章を構築するためのあと一文字が、どうしても出てこない。
「夜は、ひとの世界じゃない」
意味がわからない。
「ここは別のモノも棲まう、死んだ世界」
意図が掴めない。
「だからここではみんな、ホントの姿をさらけだす」
その時だった。雲が移動したのか陰った月が不意に、その姿を見せた。
それに輪郭が、振り返る。
その顔が月光に、照らされる。
一瞬、発光しているのかと思った。
それくらい彼女は――美しかった。
#4「ぼくの日常①」
生きている意味ばかり考えていた。
物心ついてから、ずっと。
それ意外ここでは、することがなかった。
「成海さん、朝ですよ」
ベッドを四角に仕切っていたカーテンが、裕子さんの手によって開かられる。
とたんに窓からの陽射しが、燦々と照りつけてくる。
それに手庇を作って防いでから、ぼくはにっこりとほほ笑む。
「はい、おはようございます裕子さん」
それに裕子さんも事務的というか、やや堅めなというかさらにいえば笑顔にすら見えづらい笑みというか――端的に言って、頬の筋肉をゆるめた。
「おはようございますね、成海さん。朝ですよ。ほら、見てごらんなさい。今日も、いい天気ですよ」
差し出された窓の外に、ぼくは視線を移す。
真っ白な雲と、蒼い空に、輝く太陽。
俗に言う、晴天。
それは果たして、誰にとって都合のよい天気なのだろうか? 少なくともぼくではないことは、確かだと思う。
一日は穏やかに、それこそ春の小川のように流れていく。
裕子さんに起こされたあとは、備え付けの洗面台で洗顔し、歯を磨き、配膳される朝食をとる。
その後ふたたび裕子さんに今度は検温され、薬を飲まされ、そののちようやく、自由時間が訪れる。
基本的にはぼくはその時間、本を読んで過ごす。もしくは漫画、たまにゲーム、稀にテレビというところだ。
子供の頃は、丸っきり逆の配分だった。
そのわかりやすさに、惹かれていた。
だけどいまは、そのわかりやすさが、興味を失わせていた。世の中わかりやすいもので、本質をついているものは少ない。
そののちお昼ごはんを食べ、点滴を受け、安静時間を眠って過ごし、自由時間、晩御飯、そして消灯という流れだ。
僅か150文字程度の、ぼくの日常。
これを延々と繰り返してきた結果、ここにぼくという成海遼という人間が形成されている。
なんて欺瞞。
ぼくは思わず、苦笑を漏らしていた。
懸命にという言葉すら、虚しく響く。
変化がない。
ただ同じ一日が、それこそ金太郎飴みたいに続いてきただけだ。
いや、続けてきたと言い直すべきだろうか? どちらでも同じだとひとは言うかもしれないが、どちらかということがぼくの根幹を揺るがすほど重要なことだったりした。
病気を軸に据えて、ぼく自身の事は隅に追いやられた生活。
それこそが、この日々――引いてはぼくの人生の本質でもあり、そして同時に問題でもあった。
もちろんそんな本音、誰にも話したことはない。話してどうなるものでもない。
だから言わない。だからぼくはこうして、半分自動で動いている。
敵は病気じゃないんじゃないかと、ずっと疑ってきた。
受け入れなければならない現実というものに、ぼくは半分殺されていると思う。
ぼくはもうただワガママを言うだけの子供じゃない。
何も出来はしないし、なにが変えられるというわけではない。すべては決定されていた。
そして医者に、看護士に、両親に、ぼくは生かされている。
それは事実だと思う。もう紛れもなく。
だからぼくがこんな生活を強いられているというのも、仕方がないことだというのも頭で理解はしている。それがきっと、人の世の中で生きていくということだから。
だけど、それでも。
どうか、心までは。
そう願い、ぼくは心の周りに幾重もの防壁を張ることに決めた。
そんな自分が正しいのかどうかは、正直判断できなかった。
少なくとも物語の主人公やヒーローはそんな防壁など張らず、全力で、思いのままに生きている。
だけどぼくにはその生き方は、選択できない。
病人というハンデを背負っている以上は、仕方ないと悟っているようなところはある。
だけど、それでも。
心の底に、ある種の感情は抱えていた。
パンドラの箱の底に残っていたという、アレに近い。
というか、そのまんまだろうか?
ぼくは果たして、日がな愛想笑いを浮かべて床につくという日々を送るためだけに、生まれてきたのか?
#5「ぼくの日常②」
ぼくが病人だから、そうなのか?
ならば病人は、ただ病と闘い死までの時間を引き延ばすことしか出来ないのか?
ずっと心の片隅で、考えていた。
もちろん答えをくれる人はいない。そも、答えを人に求めるものではないと思う。それくらいの知識はある。
だけど逆に言えば、知識しかない。
それで正しい答えが出せるのか、疑問だった。
「今日も体温に問題はなし、ですね。今日もちゃんと安静にして……って、あら。楓が散ってるわね」
検温中、裕子さんが呟く。
それに視線を上げると、裕子さんは窓の外を見ていた。
唯一変化する、中庭の様子を。自然彼女との会話は、そちらに偏る。
ぼくもそちらに視線を移し、
「――ですね。今年も綺麗な紅葉を、見せてくれました」
「もう、冬ねぇ」
「はい」
おそらくぼくの返事など、耳に入っていない。
裕子さんの視界にも、心の景色にも。
ぼくは映ってはいない。それを、感じる。
だからこれは、実も意味もない無為な会話。
「寒くなるわね」
「そうですね」
まるで、ぼく自身のようだった。
昼過ぎに裕子さんがやってきて、こう言った。
「お母さまがお見舞いにいらしてますけど?」
ぼくは2秒だけ間をあけて、答えた。
「はい、ありがとうございます」
そして母と二週間ぶりくらいに会った。
10分間だけ面会した。
いくつかの会話と、近況報告。母は相変わらず忙しそうだった。
ぼくにこんな無為な時間を使わせているのは申し訳ないと思った。早く帰ってもらってもいいのにとも、思った。
その中途ハンパな半笑いが、正直気に障らないでもなかった。
ぼくの苦しみなんかどうせ愛想笑いで誤魔化されてほんの少しも理解はしてくれていないのだろうという意味のない憤りで、気分が悪くならないわけでもなかった。
去り際なにか言っていたが、聞きとれなかった。
ぼくはちょうどその時、窓の外を眺めていた。
気づけばサイドテーブルには、大きなメロンが載っていた。
ぼくはそれを、裕子さんにあげた。看護師さんたちで、食べて欲しいと。https://googleads.g.doubleclick.net/pagead/ads?client=ca-pub-5574937092844562&output=html&h=280&slotname=9058248126&adk=3837988025&adf=1598601171&w=1189&fwrn=4&fwrnh=100&lmt=1600928114&pucrd=CgwIABAAGAIgACgBOAESAhgHeAM&rafmt=1&psa=1&guci=2.2.0.0.2.2.0.0&format=1189×280&url=https%3A%2F%2Fkarate-syosetu-utu-london.site%2F1024%2F.html&flash=0&fwr=0&fwrattr=true&rpe=1&resp_fmts=3&wgl=1&adsid=NT&dt=1600928058611&bpp=5&bdt=589&idt=309&shv=r20200922&cbv=r20190131&ptt=9&saldr=aa&abxe=1&cookie=ID%3Dd8ca605392fa3196%3AT%3D1579860463%3AS%3DALNI_MaN8T-8UdIZP2DUvdRfPhzQmKLYIA&prev_fmts=1200×280%2C1189x280%2C336x280%2C336x280%2C0x0&nras=1&correlator=4629418597038&frm=20&pv=1&ga_vid=35538394.1564587128&ga_sid=1600928059&ga_hid=908045454&ga_fc=0&iag=0&icsg=2406808046731215&dssz=49&mdo=0&mso=0&u_tz=540&u_his=6&u_java=0&u_h=768&u_w=1366&u_ah=768&u_aw=1366&u_cd=24&u_nplug=3&u_nmime=4&adx=75&ady=4718&biw=1349&bih=695&scr_x=0&scr_y=2392&eid=21067104%2C21065725&oid=3&psts=AGkb-H9c-2QMcnHe0dv7u33u855-8EP-5TbQxn9dQBuOYXz_PV6lz4AB4oI&pvsid=191778179378321&pem=659&ref=https%3A%2F%2Fkarate-syosetu-utu-london.site%2F986%2F.html&rx=0&eae=0&fc=896&brdim=0%2C0%2C0%2C0%2C1366%2C0%2C1366%2C768%2C1366%2C695&vis=1&rsz=%7C%7CoeEbr%7C&abl=CS&pfx=0&fu=8320&bc=31&jar=2020-09-24-05&ifi=3&uci=a!3&btvi=4&fsb=1&xpc=CuvIyHX0tc&p=https%3A//karate-syosetu-utu-london.site&dtd=56247
裕子さんはやっぱりいつものように頬の筋肉を緩めていた。
思いたいわけでも興味があるわけでもなかったが。
なにがそんなに面白いのかと、思ったりした。
息を潜めて、ぼくは待っていた。
なにかを待つという行為がこれだけ胸を焦がすものだとは、知らなかった。
それだけでもぼくは、その相手に感謝したいほどの気持ちになっていた。
どれほど経っただろうか。
横になり、毛布をかけて、役目を果たした天井の蛍光灯を見つめていたぼくには、それは知り得ないことだった。
いつの間にか出ていた月が、陰った。
「――こんばんは」
それにぼくは上半身を起こして、窓の方を向き、迎い入れるようにしてから、微笑んだ。
実際それは、かなり勇気がいる行為だった。
自発的な行動など、以前最後に選択肢した時期を思いだすことさえできないくらいだった。ひょっとしたら生まれてきてからずっと、ぼくは受動的だったのかもさえしれなかった。
だからそれはほとんど、囁くような声量になってしまった。
聞こえたかどうか確証は、まったくなかった。
#6「きみは、誰ですか?①」
「……こんばんは」
聞こえていた。
返事がかえってきた。
それにぼくは少し、驚いた。
まるで呟くような声量で、それはぼくと同じくらいだった。
それにぼくはうまくリアクション出来ずにぼんやりと見上げていると、
「……となり、座ってもいい?」
「う、うん」
お互いがお互い、蚊の鳴くような言葉をやり取りする。
だけどそれで十分だった。
夜の世界。人の世界ではない、凍りついたような静寂の世界では。
昨晩の出来事を、思い出す。
最初の接触以来ずっと、言葉のやり取りはなかった。
彼女は無言でベッドの脇に腰掛け、ぼくはどうしたらよいかわからず首だけそちらに向けて、横たわったままだった。
ただ彼女は、そこに在るだけだった。
ぼくは自分の行動を、決めかねていた。
半自動で行われる対人スキルには自信があったが咄嗟の判断などほとんど下したことが無いぼくは、自分からどう動くべきかわからずにいた。
だからずっと、彼女からどういうアクションがあるのか窺い、待っていた。
待っていた。
だけど限界を迎えたのは、ぼくの方が先だった。
「……あの、」
沈黙に耐え切れず、コンタクトを試みた。
微かにだが、声は震えてしまった。最初の印象が強すぎた、というのも一因だろう。不安が、大きかったのかもしれない。
「――――」
返事は、ない。
身じろきすらしない。
聞こえてだけは、いると思う。木の葉の囁きすら、聞こえそうな静寂だったから。
それにぼくもなにを話すべきか、途方に暮れてしまった。
感情のブレすら、感じられない。
背を向けられていたんでは、表情すら読み取れない。
ふと、喉の渇きを感じた。手近のペットボトルに手を伸ばし、一口喉に、流し込む。
ふと、
「……飲む?」
彼女も喉が渇くんじゃないか、と思った。
なんとなくだけど、初めて彼女はこちらを向いた、気がした。
「……いらない」
「そう」
もう一口啜り、ペットボトルをサイドテーブルに置き直す。
話したら、急に眠気が襲ってきた。
壁の時計を見る。うわ、就寝時間から既に二時間近くも経っていた。夜の時間感覚は、昼とはまったく違っていた。
いや、違うか。
ひとが近くにいるから、感覚が違うのか。
「ぼくはもう、眠る……けど?」
月光を背にした黒い輪郭は立ち上がり、
「また、明日もきていい?」
意外な言葉にぼくは目を丸くして、
「うん」
そして彼女は、今日も現れた。
昨日と同じ場所から、昨日と同じ位置に座り、そしてぼくも身体をベッドに横たえ、彼女の方を向く。
でも喋らない。
どちらも。
彼女がどうしてこんな時間にこんな場所に現れたのかも、そして彼女の正体も、なにひとつわからない。
だけど、ぼくは来ていいと言って、そして彼女は言葉通り、現れた。
彼女の心の風景にぼくは存在し、そしてぼくの言葉が彼女の心に届いたという証だった。
それだけで、ぼくには充分だった。
ぼくはなんとなく、瞳を閉じてみた。
深夜の静寂は、群を抜いていた。
昼の喧騒がうそみたいに感じる。視界というものを閉ざしてしまうと、まるで世の中で生きているのはぼくだけなんじゃないかと錯覚を起こしてしまいそうになった。
#7「きみは、誰ですか?②」
だけど隣には、ひとがいる。
名前も知らない女の子が、ベッドの脇に腰掛けている。
だけど会話はない。普通一般に行われるやり取りは、行われない。
不思議だった。
それはぼくが今まで生きてきた経験上、ありえないことだった。
初めての体験。ひとは、ひとと会話を交わすためだけに存在するものだと思っていた。
目を、開けた。
そして隣にいる筈の彼女を、確認する。
そこにいた。存在した。
何も語らず、視線すら交えず。だけど確かに、彼女は存在していた。
会話が、したかった。
「あの、」
「?」
彼女は呆けていたみたいな様子で、振り返った。
改めて見ても、それは信じられないような美しさだった。
月光を浴びているせいか透き通るように青みがかった髪に、切れ長の瞳。
長いまつ毛に、細く長い指先。
そして華奢で小柄な全身を覆う、目が覚めるような真っ青なワンピース。
まるでしなやかな美少女を模した彫刻のようにすら、ぼくの瞳には映った。
だから思わず、口走っていた。
「……きみは、誰ですか?」
まず最初に、沈黙が訪れた。
彼女は視線をこちらに固定したまま、微動だにしない。それにぼくは、妙な錯覚に捕われた。
まるで、夢の中にいるような。
自分自身が、一枚の絵画になってしまったような。
そんな、それは美しい空想だった。
「わたし、マヤ」
絵画が、動き出した。
そんな風に思えた。いやそれはどちらかといえば彫刻が動き出したというべきだろうか?
「わたし、妖精なの」
いずれにせよそれは、やはり彼女の言うようなひとの世界ではない出来事のようだった。
「きみを――殺しに、きました」
月がウソみたいに明るくて、まるで、夢のなかにいるみたいだった。
動揺、しようとした。
しようと、というのが正直過ぎた。
通常の感覚からいえば、きっと動揺するのがまっとうな感覚なのだろうから。
だけど、そうでもなかった。
その時の、ぼくにとっては。
それよりも、疑問や確認の方が先だった。
「……マヤ、ちゃん?」
名前の確認。
麻夜なのか、真彩とかなのか?
名字は?
それともぼくの聞き間違いなのか?
「…………」
返ってきたのは肯定でも否定でもなく、無言のプレッシャーだった。――ひょっとして、この呼び方が気にくわなかったのだろうか。
「……マヤ、さん?」
「…………」
これにも無言で返された。
あまりお気に召さなかったのだろう。でも下の名前しか知らないと、他の呼びようもない。
どうしたらいいのか。だけど会話には、呼び名は不可欠だった。
「えーと……なんて呼んだらいいかな?」
「名前は、なに?」
さしおかれてしまった。
とつぜんの振りにぼくは少し間をおき、
「ぼくは、成海遼(なるみ りょう)」
彼女――マヤはそれに再び沈黙を経て(彼女は人とのコンタクトが苦手なのだろうか?)、
「なるみ、りょう」
「そう、遼でいいよ? あの、ぼくは――」
「マヤ」
再び、鈴の音のような響き。
これはそのまま、その呼び方でいいという意味なのだろうか?
「マ、マヤ……?」
「遼」
確かめるようにその名を呼んだが、それには答えてもらえず逆にぼくの名を呼び返されてしまう。
だけど今までのような、心に穴があいたような感覚を覚えずに済んだ。
それはきっと、彼女がぼくの名前を呼んでくれたことに起因していると思う。
遼、か。
「なにかな?」
「遼は、生きていたい?」
#8「先がない人生①」
本気だったのか?
ふとその言葉が、頭をもたげる。
それに続いて、こちら側からは疑問が浮かんできた。
「きみは、妖精なの?」
「わたし、妖精なの。きみを、殺しにきました」
一文一句変わらない言葉が、ぼくに突きつけられる。
それに、改めて彼女を見る。
一切の音が消失した夜の世界で、妖精と名乗る美しい少女が、ぼくを、殺しにきた。
「遼は、生きていたい?」
同じ言葉、同じ質問。それにぼくは、
「殺してくれても、いいよ」
ぼくの答えに、彼女は動揺したかのように微かに口を開いた。
だけどそんなことは、瑣末な事だった。
ぼくはここに来て、待ちわびていた機会を得たのだ。
ぼくは本当に言いたいことを、相手に告げる。
「殺してくれてもいいから、話し相手になってくれないかな?」
「話し……相手?」
感情が見てとれる言葉。
それが、嬉しかった。
ぼくの言葉が、相手の感情を動かす。
ぼくが生きている間に、やってみたかったことだった。
ぼくは今生きている。
それを、実感できた。
「それって、どういう意味?」
ぼくは気持を落ち着ける意味で少しだけ息を吸い、
「だって、ぼくはもう――あと1ヶ月の、命なんだ」
ぼくにはもう、先がない。
それを知った時は、さすがに正直衝撃を受けた。
それは死ぬことの恐怖より、先の短さに対する焦燥感だった。
ぼくは、絆が欲しかった。
相手を気遣うのではなく、思いやり、時には怒る、仲間。
焦がれるのは、対等な扱い。
そして、答えが欲しかった。
ずっと抱き続けてきた疑問。
ぼくはこんな風に日がな愛想笑いを浮かべて床に就くために、生まれてきたのか?
病人だからなのか?
ならば病人は、ただ病と闘い死までの時間を引き延ばすことしか出来ないのか?
その解答が知識だけで出せるのか、自信がなかった。
だから死ぬ間際に彼女が現れたことは、ぼくにとって圧倒的に予想の範疇を越えた出来事だった。
「あら、成海さん。ダメじゃないの」
「あ……」
考えていたぼくは、不意にかけられた裕子さんの言葉に、思わず反射的に苦笑いを浮かべていた。
しまった、すいません、という風に。
そんなぼくの――ベッドに横たわって毛布がかけられた太腿の上には、握力を鍛える器具が乗せてある。
裕子さんに見つかる直前まで、使っていたものだ。
裕子さんは器具をつまみあげ、
「運動は、必要な分だけと指示されてるでしょ? 何度も説明を受けたでしょう? なんでしたんです? 自分の身体の事がわからないんですか?」
畳みかけられる、四度も続けて、ぼくの言い分など求めることなく。
それにぼくは反論もせず、かといって打ちひしがれて俯くこともなく、ひたすら苦笑いを浮かべ続けた。
最初のうちは真相や心の裡を語ろうと努力していた時期もあったけれど、もうやめてしまった。
ひとは、ひとの話を聞かないものなのだと、理解してから。
「ごめんなさい。ぼくが、悪かったです」
これだけ――心を殺して言うことが出来れば、それ以上相手と関係がこじれることも、ない。
「まったく、成海さんはやんちゃなんですから」
裕子さんはそれに仕方ないといった笑みを浮かべ、そう言ったんだ。
「……それって、おかしくない?」
そこまで。
今日の自由時間にあった出来事をいつものように夜にやってきてベッドの脇に座り込むマヤに話したところで、疑問が投げかけられた。
それに対してぼくは逆に、疑問符を浮かべる。
「なにが、かな?」
「なんで思ってること、言わないの?」
直球な質問だった。
それに逆にぼくの方が戸惑いを覚えるくらい。
そんな質問、受けた覚えがない。
そうするのがあたり前だとさえ、思っていたし。
だから彼女の瞳を、まじまじと見てしまった。
#9「先がない人生②」
「…………」
マヤはそれに、抵抗しない。
ただ見られるままに、見つめ返してくる。
不思議だった。
どこまでも。ぼくが見たことのないタイプの人間だった。
いや、その言い方もおかしいか。
ぼくが生まれてこの方出会ったことのある人間のタイプなんて一種類しかいないし、彼女は人間出会ないのだから。
ぼくは言葉を選び、ひとつひとつ説明することにした。
「ぼくは、病人なんだ。まごうことなく、れっきとした。だから裕子さんが言っていることは本質的に正しくて、それに対してぼくがなにか――」
「正しい? それって誰にとって?」
「…………」
それにぼくは、沈黙してしまう。
それは言わない、考えない、禁句(タブー)のはずだった。
だから今さら言われても、困る。
と思った。
一瞬、最初に。
だけどよく考えると、その考え方はおかしかった。
確かに誰が決めたわけでもなかった。
ぼくが病人で、安静に、医者の指示に従わなくてはいけないだなんて。
これは常識だ。
でも常識に従わなければならないなんて、誰が決めたんだ? いや確かに通常世の中に溶け込んで生きて行く分には、本や漫画を参考にするに、従う方が無難のようだった。
しかしぼくは、死ぬ。
これはまごうことなき事実だ。
なのに今さら、常識に縛られる?
社会に溶け込む?
ちゃんちゃらおかしかった。
もっといえばぼくは、そもそも社会に溶け込んでいた経験すらないのだ。それなのに一般人のふりをしている方が、よほどおかしい。
彼女の言い分の方が、いくらも的を射ていた。
「そう、だね。確かに、そうだ。なんでぼくは思ってることを、言わなかったんだろうね」
「? それは遼がやったことが間違ってて看護婦さんが言ってることが正しかったからじゃないの?」
根本的な部分に戻った。会話の流れも主張も無視しして。
そこでぼくは、察する。
マヤは別に、ぼくを論破しようとしているわけでなく、純粋にぼくの話の疑問部を尋ね、そしてぼくの疑問に答えているだけなのだと。
そのありようはどこまでもシンプルで、そして美しいとさえ思った。
なんてぼくは頭でっかちで、そして一切行動に移せない根性無しなんだろうとさえ思った。
だからこう死の際になって、ジタバタあがく羽目になるのだろう。
泣けてきてしまう。
ぼくの人生は、本当に受け身だった。
だけど、間に合った。
そう思えた。
君に、会えたから。
マヤを見て、自嘲気味に笑う。
「笑った」
それにマヤは――無邪気に、笑った。
「え……」
ドキッ、とした。それは初めて見る表情だった。
ずっと無表情に近いものしか見てこなかったから、それは胸に突き刺さるような、眩しいものだった。
なんだか皮肉な話だった。
驚愕の台詞や新しい考え方よりも、単なる表情の方が心を動かすだなんて。
「遼、初めて笑ったね。嬉しい?」
「う、うん。嬉しいよ」
初めて笑ったわけではないと思う。
というかぼくの場合対人スキルがオートで発動しているはずだから、基本人前では愛想笑いがデフォのはずだ。
どういう意味だろう?
考えて、理解に近いものを得る。
よく考えればデフォ以外でなにかに反応して笑ったのは、彼女の前では確かに、初めてかもしれない。
でも、そんな意味なのだろうか?
そんな意味があるのだろうか?
「――――」
そして彼女は、無言になった。
それにぼくも潮時を悟る。
彼女との交流は、これくらいのものだった。
時間にして――時計は見ていないが、おそらく一時間には満たないだろう。
決して彼女の方から去ることはない。
そしてぼくも無理に引きとめることはない。
ただ、空気を察し、瞳を閉じて、眠りにつく。
起きた時彼女の姿は、ない。
期間限定の邂逅。
ひと夏の恋人というフレーズを思い出した。
少し違うけど、少し憧れていたもののひとつだ。
新鮮な出会いに乾杯。
どうか明日も、君が現れてくれますように。
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