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七十四話「死体」

2021年11月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 でも、それもいいと夕人は思う。
 今は、何でもプロの、売り物の時代だ。
 選手も売れるように色々工夫するのは悪いことじゃない。

 それで信念とか道が曲がるとか、そういう考えは時代遅れもいいところだと思う。
 事実自分も、ムエタイ選手であることにこだわりはない。
 呼ばれ、待遇さえよければ、どこにでも行く。

 反対側の入場口で、爆発が起こった。
 同時に大量のスモークが焚かれ、無数のレーザーやスポットライトがそこに現れるであろう選手を照らす。
 夕人も物思いを止め、その人影を探した。

 スモークが薄れていき、レーザーが消え、一筋のスポットライトだけが、それを照らした。
 空手衣を着た天寺が、会場に姿を現した。
 夕人はリングの上からそれを見て――ギョっとした。

 血管が、体中に浮いていた。
 初め、そんな風に見えたからだ。

 違った。
 道着のあちこちに無数の血の線が走り、肌が露出している部分全体がミミズ腫れになっていたのだ。

 ――どうすれば、あれほど体が痛め付けられるのか。

 無数の血の線とミミズ腫れで、体が巻き取られているかのようだ。
 毎日毎日数え切れないほど鞭で叩かれでもしない限り、あんな状態にはならないだろう。

 そして、それは目も同様だった。
 今にも破裂しそうなくらい、血走っている。
 しかも、焦点があってない。
 まるで、意識が半分トんでいるかのようだった。

 口を半開きにした状態で、虚ろに花道を歩いてくる。

 その異常な事態に、流れる音楽もレーザーも、まるで別世界のような違和感を醸し出していた。
 観客からため息や、悲鳴が上がる。
 その異様な姿に、誰もかれも戸惑いを隠せないでいた。

 そしてそれは、リング上の夕人も同様だった。
 以前見た天寺とはあまりに違うその姿に、胸中は激しく揺らいでいた。

 リングを、這い上がってくる。のそのそと、それは越えるではなく、死体が墓からはい出ようとしているように夕人の目には錯覚された。
 アナウンスが天寺の名前を読み上げるが、夕人の時のような歓声はなかった。
 そして、天寺からの反応も、なかった。

 レフェリーが二人を中央に呼ぶ。

 向かい合ったその顔は、より恐怖を掻き立てるものだった。
 赤いミミズ腫れのそれと、血走った目は、まるで地獄をくぐり抜けてきた亡者のようだった。
 レフェリーがルールを確認していたが、そんなもの耳に入らなかった。
 言われて、頭だけ下げた。

 コーナーに戻り、ゴングが鳴るのを待った。
 一刻も早く、終わらせたかった。
 四方をロープで隔離されたこの場所が、まるで狭い檻のように思えた。

 ゴングが、鳴った。





 死体が、いきなり蘇った。

「がああッ!」

 生気の無い顔でリング端で俯いていた天寺は、ゴングと同時に顔を跳ね上げ、気が狂ったような雄叫びを上げて、まるでロケットのように対角線上に――夕人目掛けて、吹っ飛んできたのだ。

 ――こいつ。

 何の変哲もない、ガードすら上げていない一直線な突撃。
 ならば……と、以前と同じように夕人は、真下からの跳び膝をアゴに合わせようとした――が。

 ――――はやいっ!

 その膝の間合いを疾風のように擦り抜け、胸に、頭から衝突された。
 まるで相撲のぶちかましだ。
 その衝撃に、夕人は二、三歩たたらを踏む。

 こいつ――正気か!?

 空手にも、ムエタイのセオリーにだってないとんでもない突撃を受け、夕人の眉間にしわが寄る。

「あああ!」

 いきなり凄まじい絶叫を上げて、天寺の頭が、腰を中心に時計の針のように右に回転していった。

 なにを――?

 ごん、

 と夕人の右拳が、自身の顔に殴りかかってきた。
 頬が内側に張り出して歯に食い込み、脳が揺れる。
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