新着記事

極真空手家の妖刀村正大石代悟

: 空手および格闘技

“妖刀村正”大石代悟 67kgの軽量で全日本初出場3位、四連続一本勝ちで金城健一、吉岡幸男に勝ち世界大会4位入賞したその足技の極致!

第3回全日本大会 妖刀村正。 史上最も高名な刀工名の1つであり、その見た目は息を ...
極真空手家のギャリークルゼヴィッツ

: 空手および格闘技

“白い水牛”ギャリークルゼヴィッツ 三瓶啓二と死闘の連続世界ベスト16!大山空手vs正道空手5対5マッチで角田信朗に勝利した無尽蔵の突進!

ギャリー・クルゼヴィッツ この名前をご存知の方は、相当な極真通とお見受けできると ...
ブアカーオポープラムックvs散打の孫涛

: 空手および格闘技

ブアカーオvs孫涛 ムエタイ×散打の異種格闘! K-1制覇以前王者同士の決闘、踵落としも飛び出す衝撃の結末を見逃すな!

ムエタイvs散打 散打。 数多ある中国武術の中で、現在の直接的な他流試合、実際に ...
うつ病

: うつ病

うつ病と神経不安症 死にたい気持ちと生きたい心、家族の介護と苦難、現代の耐えがたい現実!

社会不適合者 現代は生きづらい世の中だと言われている。 いや、こんな格式張った、 ...

記事ジャンル一覧

六十七話「右肘」

2021年11月7日

まずはブログランキングにクリックのご支援
何卒宜しくお願いします。

 にほんブログ村 にほんブログ村へ 
 にほんブログ村ランキング   人気ブログランキング

最初から読みたい方はこちらへ! → 初めから読む
___________________

目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 夕人の焦燥は、誰の目からも見て取れた。

 天寺は横目で腕時計を確認した。
 試合開始から、既に2分を越えている。
 残り時間はもう、1分を切っていた。

 この時点で技ありを取られるということは、ほとんど決定的に痛かった。
 実力差があれば別だが、接戦の場合技ありを取り返すのは、容易なことではない。

 当然、判定になったら技ありを取っている方に旗が上がる。
 取った方は、極端な話残り時間逃げ回っても勝つことが出来るのだ。
 それを夕人は理解しているのだ。

 再び主審が続行を宣言するが、夕人の構えに今までのような強固さは見られない。
 明らかに、次の手に迷っている。

 今までのような戦い方では勝てない。
 軸となるべく右ミドルは当たらないし、ローや中段膝は堪えられるし、飛び膝は躱される。
 そう考えてると思われる表情のところに、纏が飛び込んだ。

 再び拳の連打が、胸骨に叩き込まれる。
 それは、もうお前はここまでか? と挑み訊いているかのようだった。
 そこには驕りも卑屈さもなく、ただ純粋な闘志があった。

 夕人は、しばらくその拳を受け続けた後。
 フッ、と不敵に笑った。
 それを見た時、天寺の背筋に、

 ぞく、





 と強烈な悪寒が走りぬけた。
 それはまるで、全てを諦めたようにも、また、自分が考えついた何か面白い考えに自ら陶酔しているようにも見えた。

 その厭な笑みに、予感が駆け抜けた。
 咄嗟に何か叫ぼうと口を開いた、その時。

 常に曲げられ、脇におかれていた夕人の右肘が――



 横から、纏のアゴをかち割った。



 がちっ、という鳥肌が立つような不気味な音がして、その口から何か白いものが二、三、マットの上に転がった。

 歯だった。
 砕けていた。

 そのまま纏は横向きに、ゆっくりとうつ伏せに倒れた。
 そして倒れたその顔の周りに、赤い液体が広がっていく。

 血の海が、広がっていく。

 不意に、天寺の頭の中にスプラッタ映画の映像が流れた。
 トラックが暴走して家に突っ込んで、阿鼻叫喚の地獄絵図になるってやつだ。
 その時も歯が飛び、物凄い顔になった被害者が血まみれになり、血の海を広げていた。

 纏は、動かない。
 それこそ、死んだように。
 ぴくりとも、動かなかった。

 その場の誰もが、しばらく動けなかった。
 みんな、何か見えない力に縛られているように、纏の様子を見続けていた。

「――――は」

 それを破ったのは、笑いだった。
 自嘲気味な、乾いた笑い。

「……ははははは」

 夕人だった。
 纏の目の前に立ち、しかしその目は纏を見ておらず、天井を仰ぎ、口の端を引きつらせるような笑みを見せている。

 その姿は、どこか狂気を孕んでいた。

 そこでやっと、気持ちが現実に戻ってきた。
 映画では、ないのだ。
 現実に、纏が、反則で――

「て、纏――――ッ!」

 叫びが、喉から迸り出た。

 は、反則じゃないか!?
 何を貴様は――やっているのか!

 怒りが暴風のように体に渦巻き、試合場に上がろうと片足をマットにかけ――

 纏が立っていた。

 まず驚きが先にあり、様子を窺おうとその顔を見た時、戦慄が、天寺の全身を稲妻のように駆け抜けていった。

 前歯が、鼠にかじられたチーズのように割れていた。
 口の中が、ペンキみたいな真っ赤に染められていた。
 目が、病人のように血走っていた。
 脂汗が、滝のように試合場に零れ落ちていた。

 それが、纏の状態の危険さを雄弁に物語っていた。
 今すぐ治療が必要だと、誰もが息を呑んだ。
 しかし纏は、両手をアゴの高さに上げた。

 構えた。
___________________

続きはこちらへ! → 次話へ進む

クリック👍のご支援お願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村へ 
ありがとうございますっ!🙇