四十五話「友人の戦場」
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目次
本編
だが、この前の教室での、慎二との戦い。
倒した後の、達成感という言葉では足りない、目を閉じ、唇を噛み締めた、感極まった堪らない顔。
彼はあの生気を吐き出すような無茶な練習から、何かを手に入れたのだ。
彼の努力は、実ったのだろう――
彼はあの生気を吐き出すような無茶な練習から、何かを手に入れたのだ。
彼の努力は、実ったのだろう――
「あー、暑かった……て、なに浸ってんのよ遥?」
その言葉に、不意に遥は現実に戻される。
「……いや、浸ってるっていうか」
「さっさと先行くわよ」
「はいはい」
三日前。
二時限目の、休み時間。
天寺は照れたような顔をして、遥の席にやってきた。
そして訝しがる遥に、天寺は以前に見せた仕草――ばつが悪そうに苦笑いしながら頬をかき、
「あ、あのさ、その……今度さ、その……自分ごとなんだけど、あの……」
「なに?」
「いや……あのさ、今度さ、その……なに?」
「だから、なんなんだよ?」
遥はそのハッキリしない態度に、いい加減イライラしていた。
それに天寺も息を吸って覚悟を決め、
「こ……んど、さ、その……大会が、あんだ。だから、よ、よかったらさ……見に来ねぇ?」
「…………」
一瞬遥は、その意図を掴みかねた。
その隙をつくように、天寺は捲くし立てる。
「いや、あのさ、この前道場に来てくれた時は、かっこ悪いとこ見せちゃったじゃん? でもさ、オレ、普段はあんなんじゃないんだ。そこそこは強いし、倒されたのだってあの時が初めてで。あ、こう言うといい訳くさいけど、オレもここんとこオレなりに頑張ってたんだ。知らなかったとは思うけど。だから、もし時間があったら見に来てくんないかなぁ……とか思ったり思わなかったり」
最後の言葉にはどっちだよ、と突っ込みを入れたくなったが、遥は苦笑を作った。
――本当に彼はこう、人に対して臆病なのだな。愛すべき愛嬌を持っているし、あれだけ強いのに、もったいない。
そして不思議そうな顔をしている天寺に、
「喜んで応援に行かせてもらうよ」
「なんの話?」
その時朱鳥が話に参加したことに、天寺は複雑な表情を作っていた。
時は現在に戻る。
会場では選手たちの体重測定が行われていた。
空手に限らず打撃系格闘技では、体重が大きなウェイトを占める。
よって事前申告と実際計った体重に10キロ以上の差があった場合注意勧告、酷い場合は失格処分にされる。
よって事前申告と実際計った体重に10キロ以上の差があった場合注意勧告、酷い場合は失格処分にされる。
もう一つ、それはルールに関わる問題。
練仁会空手では本戦3分間を闘い、その間K.O――空手では一本が決まればその時点終わりだが、そうでなけえば審判5人による旗判定が行われる。
基本的に優勢だと思われる側に旗を上げてもらい、3本以上に達した場合、そちらの勝利。
その形式は技あり・一本、反則が行われた場合も同様だ。
選手のダメージが、技あり――ボクシングでいうダウンだと思われる場合旗を真横。
その技ありが二つ、もしくは状態が危険な場合は旗を真上に掲げて、一本。
反則の場合は旗を上げるのではなく振ってもらい、やはり回数により注意、減点、反則負けとペナルティは重くなる。
その形式は技あり・一本、反則が行われた場合も同様だ。
選手のダメージが、技あり――ボクシングでいうダウンだと思われる場合旗を真横。
その技ありが二つ、もしくは状態が危険な場合は旗を真上に掲げて、一本。
反則の場合は旗を上げるのではなく振ってもらい、やはり回数により注意、減点、反則負けとペナルティは重くなる。
本戦で決着がつかなかった場合は二分間の延長を2回、それでも引き分けの場合、そこで体重判定が行われる。
10キロ以上の差で、軽い側の勝ちとなる。
それでもなお決着つかずなら、最終延長になる。
10キロ以上の差で、軽い側の勝ちとなる。
それでもなお決着つかずなら、最終延長になる。
選手達が上半身裸で、体重計に乗っていく。
それを見て神薙は、力士の部屋入りのテレビ番組を思い出していた。
それを見て神薙は、力士の部屋入りのテレビ番組を思い出していた。
そこで遥は、天寺を目で探していた。
一言、声を掛けたかった。
今どんな気持ちでいるのか、聞いてみたかった。
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