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五十六話「ヒーロー」

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikukose

本編

 知らず天寺は、遥を睨みつけていた。
 それは、今までの溜まりに溜まったプレッシャーのはけ口を見つけたかのようだった。
 眉間をきつくしかめ、歯を食いしばり、目尻を吊り上げる。

 だが、遥はその視線に気づいていない。
 俯いたまま、それは何を言うか計りかねているようだった。

「俺は」

 声が来た。
 天寺が一瞬身構える。
 しかし、

「俺は……頑張れ、なんて、お前に言えない。あいつは規格外の化け物だと思う。纏さんもいるんだし、あの人ならきっと倒してくれると思う。負けても、恥なんかじゃないと思う」

 意外な言葉が、来た。
 それに天寺はいからせていた肩の――いや、全身の緊張が、ほどけるのを感じた。

 ――規格外の化け物だと思う。

 ――負けても恥なんかじゃないと思う。

 それは、自分が思っていながら、最後まで誰にも言ってもらえなかった言葉だった。
 過剰な期待をせず、等身大の自分と現実をわかってくれる者の言葉だった。
 それを、遥は言ってくれた。

 肩の荷が降りた、と思った。

「でも、」

 だが。
 遥はそこまで天寺の気持ちを理解した上で、"でも"と続けた。

 そこで遥は、顔を上げた。

 揺れる瞳が、訴えかけていた。

「出来れば、勝ってくれ……! お前は俺にとって、強さの、憧れの……ヒーローなんだ!」

 その言葉に、天寺は動きを止める。

 勝ってくれ。

 今まで何度も言われてきたその言葉は、だが、意味することが全く違っていた。

 お前は勝たなければならない。
 勝って当たり前だ――ではない。

 強敵であり、苦難であるのはわかる。
 だが、その上で、勝ってくれることを願う。

 俺はお前を信頼しているのだ。
 お前は俺にとって、ヒーローなんだ。

 ――今まで、様々な激励を受けてきた。
 だが、その言葉がこれほど力を沸き上がらせてくれたのは、初めてではないか?

 拳を、握る。
 力が、入る。
 足を、踏み出す。
 前へと、進めた。

 それはすべて、この七ヶ月間の必死の日々が天寺に与えてくれたものだった。

 燃え上がる。
 体が、火のように燃え上がっていく。
 その熱が天寺に、死線へと――難敵、蓮田夕人へと立ち向かう力を、与えていく。

 ニヤリ、と天寺は、纏と戦っていたときのような楽しげな笑みを作った。
 そして最後に遥の背中を叩き、

「見てろ、神薙。オレは今、あいつを華麗に倒すプランを思いついたぜ」

 彼は戦場に赴いていった。
 それを結局最後までなにも話さなかった朱鳥は、去り際に横目で確認していた。
 どこか、哀しげな瞳で。





 試合場に立つ。

 途端に、今まで耳に叩きつけていた歓声が、一気に遠のいていった。
 代わりにセコンドの声の内容だけが、やけによくわかる。

 ――天寺先輩、ファイトです!
 相手の左中段廻しに注意です!

 ――天寺、気を抜くな!
 お前のセンスなら、必ずやれる筈だ。
 いつもの道場の稽古を忘れるな!

 カクテルパーティー現象ってやつを思い出した。
 周りが喧騒に包まれていても、自分に向けて話される内容だけは聞き分けられるというやつだ。
 この状態も、それに似たものなのだろうか?

 夕人が、こちらを見ている。
 その顔は、どこか愉しげだった。

 建末を倒した時と、同じだ。
 その顔はどこか醜悪で、どこか人間のものと違うように思われた。

 化け物じみている。
 悪魔じみている。

 その白い肌も、棍棒のような体躯も、圧倒的迫力として体に叩きつけてきた。
 それに、天寺の体は試合場から押し出されそうだった。

 手を、握る。
 息を、吐く。

 主審に促され、正面に礼を送る。

 橘師範の顔が見えた。
 距離があり、その表情は見て取れなかった。

 次に相手に礼を送る。

 不器用な角度で頭を下げ、へたくそな十字を切っていた。
 慣れていない。
 ますますこいつが空手をやってきていないという事に、確信がついた。

「構えて――」
 神薙も、セコンドで声を張り上げてくれているのだろうか――

「始めッ!」
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