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五十七話「硬い骨」

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikukose

本編

 夕人が構えている。くん、くん、と上下にリズムを取っている。

 拳を握った状態で、手の平側を天寺に向けている。
 左手を前方に突き出し、右手を顔のすぐ傍におき、脇を締める。
 右足をべったりと地に着け、膝を伸ばす。
 左足を爪先だけで着けたり上げたりして、リズムを取っている。

 ムエタイ式の構え。
 それを見て、天寺は思う。

 ――オレの構えに、似てる。

 対する天寺も左手を前に出す。
 しかし手は拳ではなく、掌だ。
 右手も夕人と同じように顔のすぐ傍において、脇を締める。
 前足である左足は、ゆったりと床につける。

 射馬の構え。

 静かな始まりだった。
 お互いに、動かない。
 まるでそれぞれが、相手が来るのを待っているようだ。

 10秒ほどは、まったく動きがなかった。
 緊張感が、会場を包む。

 夕人が先に動いた。

 スッ、とまったく構えを崩さず前に出て、ローを飛ばす。
 叩きつけるような、直線的な右ロー。
 それを天寺は、脛で受けた――が。

 ――――硬(か)っ、て……!

 顔をしかめた。
 受けた脛が、受けたはずなのに痛んでいた。

 まるで鉄パイプで殴られたような衝撃だった。
 これで本当にサポーターを付けてるのか……7ヶ月前の、纏との戦いを思い出した。

 つづいて、左ミドルが飛んでくる。
 脇を締めて、それに備える。

 ガツン、と脇を締めている腕の骨を直撃した。
 体が一瞬、浮く。
 骨が軋みを上げて、痺れて、一瞬感覚がトんだ。

 ――これか。

 これが……建末の動きを一発で止めた、左ミドルか。

 さらに連打がきた。
 蹴り足をスイッチ――前足と後ろ足を入れ替える事により、左ミドルを連発してくる。

 二つ、強烈な威力に体全体が揺さぶられる。
 三つ、堪え切れず、体の軸が崩される。

「――ちぃ!」

 四つ目が来るタイミングに合わせて、右前蹴りを腹に放った。
 膝を上げながら畳み込み、腰を入れて、スナップを十分にきかせて――

 ドスッ、と道着の上から中足が腹にぶつかる――が。

 ――貫けない?

 硬かった。
 まるで腹筋の形をした杉板を蹴ったような感触だ。
 余分な脂肪、というものがまるでない。

 脛の硬さといい、こいつの体は鉄で出来ているのか?
 戦慄が、天寺の体を包むのを感じた。

「……シッ!」

 夕人が吠えた。
 瞬間、天寺は左足に衝撃を感じ――

 そのまま、頭がマットにぶつかった。

 ぐるりと視界が半回転した。
 左側にあった観客席が右にいき、右側にあった観客席が左にいき、天井のスポットライトが地に落ちて、床のマットが天に覆いかぶさり、頭に乗っかった。
 上下感覚が喪失し、自分がどこにいるのか忘れる。
 ただ頭が揺れているという実感のみが残り、目の前にある相手のやたらと白い剥き出しの素足を見て、自分が試合の最中だったことを思い出した。

 あの瞬間。
 天寺が右前蹴りを放ったタイミングを狙って、夕人が右のイン・ローを、軸足になってる左足に叩き込んだのだ。

 それはさながら、柔道の足払いのようだった。
 それで天寺は今、床に転がっていた。

 倒れたまま天寺は、夕人を見上げた。

 スポットライトの逆行で、その全身は黒く染まっていた。
 その姿は巨大で、まるで地獄の番人のよう。

 手をつき、膝を立てた。
 蹴られた左足の足首に、鈍い痛みを感じた。
 軽く捻ったか?

 手でマットを押し、立ち上がった。

 負けるわけに、いかない。
 決勝で、纏と戦うのだ。

「続行!」

 主審の声が響いた。





 その様子を、纏は腕を組み、赤コーナーの次の選手が待つためのパイプ椅子に座りながら、見つめていた。
 いつもと変わらぬ、無表情だった。
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