四十一話「都大会」

2021年11月7日

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目次

本編


 天寺と慎二、そして纏が所属する煉仁会空手の東京都大会、高校生の部が開催される。

 毎年行われるこの大会。
 去年は当時高校一年生だった天寺が初出場にして、いきなり優勝を決めている。
 その時慎二も同じ一年生ながら4位に入賞していた。

 もちろんそれは簡単な事ではなかった。
 特に決勝戦の相手の建末元示(たてすえ げんじ)は巨体で、20キロ以上の体重差をフルに活かされ、試合全般を通してほとんど押されっぱなしだった。

 しかし、体格的には中。体力的には並にも達していない天寺を優勝に導いたのは、絶対的な防御テクニックと、天才的な間合いのコントロール。
 そして、接近してから超高速で放たれる後ろ回し蹴りだった。

 押されながらも決定的なダメージは負わず、最後の最後まで蹴りの間合いを保ち、狙いに狙い澄ました一撃で倒した時、会場中が熱狂の渦に呑み込まれた。
 その華麗な組み手に、見る者全ては魅了された。

 その全ては、天寺は今年の都大会には出ず、全国大会一本に絞るものと思っていた。
 しかし彼は、今年の都大会も出るという。
 その話が水面下の格闘技ファンたちの間に広がり、高校生の地方大会とは思えない人数がチケットを買っていた。

 ――あの天寺司が、今年も出る。
 それは熱気となって、試合前から都内に広がっていった。
 しかし当の天寺は、そういう思惑とは別にただ一人のために己の牙を磨いていたとは、その誰も知らない事実だった。

 未だ無名の獣、橘纏。
 公式には記録されることがなかった一度目の対決から、7ヶ月。
 その猛威をさらに猛らせ、纏は表舞台に降り立とうとしていた。





 だが、大会はトーナメント。
 他選手で注目選手筆頭に上げられるのは、なんといっても去年準優勝の建末元示(たてすえ げんじ)だろう。

 最終的に敗れたとはいえ、184センチにして85キロという高校生離れした圧倒的体格はいかんともしがたい迫力を持つ。
 今年最年長である3年生になる彼は、今年も優勝候補最右翼であることは疑いようがない。

 去年4位に甘んじた海宮慎二も、二年生になり去年より格段の力をつけていた。
 元来正攻法で闘うタイプではない彼の組み手スタイルは、荒かった。

 だがそれゆえ実践的で、実力差をひっくり返す可能性を秘めているものでもあった。
 事実去年の準々決勝、一昨年3位に食い込んだ芳染(よしじみ)と当たった時は、誰もが彼の負けを予想した。
 突きと下段蹴りの重厚さ、試合の組み立ての巧さ、全て芳染が上回っていた。

 だが。
 なんと慎二は突きの打ち合いの最中、相手のアゴ先に頭突きをかましたのだ。

 しかしそのタイミングは故意と判断するには非常に曖昧なもので、どちらかというと突きを思い切り打つあまり体が流れて当たったかのように見られた。
 それで、審判も一瞬迷ってしまった。

 その隙をつき、慎二は芳染の顔面にハイキックを決めてしまったのだ。
 審議は揉めたが、結局は彼の一本勝ちになった。
 頭突きの故意も判断できなかったし、審判の静止もなかったからだ。
 今年も存分にかき回してくれることが予想できる。
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