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第六話「天寺司考察①」

2021年11月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 天寺司(あまでら つかさ)。

 2年1組、出席番号1番。
 容姿は、とにかく長く伸ばされた襟足が目立つ。まるでカンフー映画の主人公のようにゴムで括られている。前髪も結構長い。

 体格は、次の出席番号の人間――内山満(うちやま みつる)君の、健康診断の日に見たという証言により、身長173センチ、体重57キロと判明。平均的で、特筆すべきところはないと思う。

 性格は、温厚――というより、抜けているというのが周りの評価だ。
 いつもボーっとしており、授業中はしょっちゅうあくびをし、居眠りをすることもしばしば。実際自分の目から見るに、先生からこづかれてることすらよくある。

 部活には所属しておらず、通学には自転車を使用し、特に仲のいい友達と連れ添ってはいない。

 今のところ、何か引っかかるような情報は特にない。

 そんな男が引き起こした"なにか"によって大島のグローブは弾き飛ばされ、大島本人も、倒された。
 その実態は俯いていた自分にはわからないし、手下たちは大島の影に隠れていたので見ることは叶わなかったという。

 そのあと遥は周りの人間に何が起こったのか訊いてみたが、誰一人としてまともな解答はくれなかった。

「え。あれって大島が足元のバナナに滑って転んだんじゃねえの?」

「大島くんが何かにびっくりして、万歳してひっくりかえったように見えたけど」

「……なんかよくわかんねんだけど、天寺と大島のあいだの空間がブレてるように見えたっていうか……」

「私、聞いたのよね。大島君が倒れたあとにトン、ていう音。あれ、スリッパの爪先が床に当たる音だったと思うのよ!」

 それらの断片的な情報を総合すると、あの時大島は"バナナで滑って転んだみたいに派手に"、"万歳した格好で引っくり返り"、"その際天寺とのあいだの空間がブレて"、"そのあとスリッパの爪先が床に当たるみたいな音がした"。





 そこから言える事その1。
 大島はかなり派手に倒されている。そこから、かなりの勢いで引き、もしくは押し倒された可能性がある。

 その2。
 万歳した格好で後方に倒されている事から、その何かは下方からぶつかってきたものかと思われる。

 その3。
 天寺と大島のあいだの空間がブレて見えたという事から、その攻撃は天寺の手によって行われた可能性が高くなる。

 そこに加えて、おかっぱ頭の女子である勅使川原(てしがわら)さんが聞いたというトンという、スリッパの爪先が床に当たったような音。

 ここに、この疑問を解く鍵が隠されている気がする。

 スリッパの爪先で床を叩く行為。普段行うとすれば、それはそう――スリッパが脱げ掛かってる時。つまり天寺は、大島に向かってスリッパを飛ばして、

 ――やめよう。

 そこまで考えて、遥は思考を止めた。
 いくらなんでも、それはない。
 スリッパを飛ばして砂鉄入りのグローブを弾き飛ばせて、なおかつあんな油ゴリラを倒せるなら、誰も苦労はしない。それに、もしそうだとするならスリッパは宙を舞い、天寺の足元になど戻ってこないだろう。ブーメランじゃないんだし。

 じゃあなんなんだろう?

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