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ムエタイ幻想の正体〜キックボクサーが味わうムエタイマジック

2020年11月9日

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この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikukose

キックボクサーが味わう序・中盤のムエタイマジック

実戦想定

では前回から引き続き、ムエタイと相対した場合にどのような結果になるか?

まず基本的に日本のキックボクシングは、どちらかと言うとフルコンタクト空手を顔面ありにしたような、延長線上にあるような体系だと考えます。

基本的な狙いは、ノックアウト。それが叶わない場合でも、ダメージが1番、手数を2番目に考えて、それによる判定勝ちを狙う。

そのためには、1番手っ取り早いのが顔面にパンチを集めて、顎もしくはテンプルを叩いてるの、ローキックをまとめてのKO、もしくはダメージを与えてのポイントアウト。

そのため、キックボクシングの間合いは、極真空手から、ほんの半歩ほど下がった程度の接近戦がメインになります。

そしてほとんどのキックボクサーは、同じような戦い方でムエタイに挑みます。

ムエタイの洗礼

まずそこで洗礼として、通常考えられないほどの勢いをつけたミドルキックが飛んできます。

キックボクサーも鍛えているとはいっても、パイプ椅子をその脛で陥没させるほどには鍛えていません。それでまずいちど衝撃を受けます。

ガードに使っているとは言え、腕も骨。痛いものは痛い。

そしてローキック、通常であれば自分のパンチに体重を乗せるために前足に体重をかけているため、ある程度もらってくれるはず。

それが、全く入りません。ムエタイは常に前足を浮かせておくほどに、無駄なダメージをもらわないように防御偏重型です。

いっぱつ当てて、リズムを取ると言う選手は多い。だからこそ、まだ遠いと思っていた間合いをミドルで突き放され、ローが一発も入らないとリズムが取れません。

そこで思い切って近づいていってパンチの連打で強引にペースを取ろうとしたところで、ムエタイ独特の前の手を突き出し、もう一方の手で自分の顔を覆うような独特のガードが行く手を塞ぎます。
これだと打つスペースがありません。ストレート、フック、全てが無効化されます。

だとすればさらに近づいてそのガードを引っぺがすか、アッパーしかありません。そう考えて、ほとんどの選手がさらに半歩近づきます。

そこで待ってましたと言わんばかりに、首相撲地獄に引きずり込まれます。

これらが基本的なキックボクサーが味わう、対ムエタイ戦における序盤から中盤の基本戦術となります。

キックボクサーが味わう終盤のムエタイマジック

外れない首相撲

今回は前置きなしに早速中盤から終盤の話をさせていただきたいと思います。

ムエタイの首相撲は、基本的に脱出不可能と思って間違いないでしょう。
なぜならムエタイは、首頭を重視しており、その練習だけで1時間とか2時間とか行うそうです。

キックボクシングではまずあり得ません、そんな練習するぐらいだったらミットとかサンドバックとかスパーリングとか走り込みとかするでしょう。

毎日毎日1時間とか2時間とか練習してる相手で、その土俵に飛び込んで対抗できるはずがありません。
振り回されて、コントロールされて、膝の嵐をボディーに食って、顔面にも膝をぶち込まれる、一瞬突き放されて肘を飛ばされる、転がされる、様々な展開が考えられます。

そして3ラウンド制だったら2ラウンドから、5ラウンド制だったら3ラウンドあたりから、相手は一気にギアを上げてきます。

これがまた曲者なのです。

急激なギアチェンジ

一気にギアを上げられると言うことに、人はついていけません。最初から同じテンポで殴られていれば強いパンチも耐えられますが、急転直下で威力が上がると、一気に持っていかれるものです。

今まで体重を後ろにかけて徹底的に待ちだったムエタイが、ものすごい勢いのミドルキックから、一気に膝で飛び込んできます。

しかし狙いは、その膝でもありません。

思い切りミドル蹴ったり、たまにローキック蹴ったり、ハイ蹴ったり、首相撲したり、膝ぶち込んだり、そんなふうにしながら狙っているのは、基本的に一撃必殺の――肘です。

しかしその全てが凄まじい威力を秘めているので――それはあまりに骨が硬く、そのためにフルスイングしてくるので、どれも無視できません。

ですので結果的に、どうしても顔面のガードが空きがちになり、反射的にパンチで応対したくなって、それで肘をもらってしまいます。

そうでなくても繰り返しになりますが鍛えに鍛えたミドルキック以上の蹴り、首相撲のコントロールで、ポイントをとることが非常に困難。

結果的に、ムエタイを切り崩す事は非常に難しい。

以上が今までのオーソドックスなキックボクシングが味わう、ムエタイテクニックの全貌となります。

しかし、最近ではこれらの戦いから、大きく逸脱した技術革新が起こっています。

時流が作った革新派ムエタイスタイルの概要

前傾ムエタイ

今回はムエタイに起こっている技術革新、新しいタイプのムエタイ戦士の存在ということで、その概要について述べさせていただきたいと思います。

まず、ムエタイ全体が、他の団体への進出を果たしています。

それはすでに述べた通り、センチャイPKセンチャイムエタイジム、ブアカーオの功績が大きいと私は考えています。

そしてその結果として、K-1などの、首相撲、肘打ちを禁じたルールの中でも戦うことを余儀なくされる場合もあります。

それに適応するために、技術革新、新タイプのムエタイ戦士が出現したのでしょう。

まず、そもそもの構え、スタンスが違います。

様子見をしない

典型的な選手を上げるなら、セクサンが1番典型的と言えると思います。

ガードを顎の下程度まで下げて、かなり体重を前足にかけた前傾に近い態勢。

革新のスタイルは、まずここからが出発になります。

そこから大振りのミドルキックを蹴るあたりは従来のスタイルにかなり近いです。

しかしそれをいっぱつぶち当ててからが、大きく異なってきます。

革新派のムエタイ選手は、1ラウンドから行きます。

ポイント制、そしてノックアウトが評価を受けると言うことを知っているので、様子見や競馬のパドック的なことをしません。

いっぱつぶち当てて、一気に間合いを詰めます。

そして、ほとんどノーガードで、左右のフックを全力で振り回してきます。

そう、従来のムエタイと違い、彼らの狙いは基本的にパンチです。

パンチでダメージを与え、早いラウンドで倒そうとしてきます。

その戦い方は、従来のムエタイと比べてももちろん、ハイレベルなキックボクサーと比較しても、一見して稚拙なものに映ります。

何しろ最初からアクセル全開で、様子見もなく、ガード無視でただフックを振り回してくるのですから。

丁寧にさばいて、ガス欠を狙ったり、カウンターを合わせたり、そういった基本的な戦法で崩せそうな気がします。

しかし、それが通じないのです。

そんな戦い方が、猛威をふるっているのです。

区切りがいいので、今回ここまで。
次回はそのカラクリについて紐解いていきたいと思います。

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