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第七話「天寺司考察②」

2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 再び思考。

 あの時大島と天寺の間には、腕を伸ばしたくらいの距離があった。しかも大島の目の前には自分がいた。
 身長差があるし、あの時自分は俯いていたから大島の上半身は覗いていたとはいえ、色々制限は掛かるだろう。

 パンチじゃない。

 グローブを弾き飛ばしてるし大島は仰向けに倒れたから、アッパー系だ。それだと届かない。だとすると、あと考えつくのと言えば――

 腕が届かないなら、足。キックだ。

 ……違う気がする。

 もしキックだとして、後方に、下からの攻撃で倒されてるから、顔面を蹴られたということになる。
 ただでさえ腕がギリギリという距離で難しいのに、その上大島の身長は180近い。
 それに何より、そんな派手な攻撃をしたのなら、その場にいた全員から目撃されているだろう。却下。

 手足じゃないなら、飛び道具。
 なんか物を投げた。

 これだったらまだ可能性があると思う。
 あの一瞬、自分に危険が迫ろうとしているのに気づいた天寺が、懐から出した何かを下手投げであごに直撃させ、同時にグローブも弾いた。

 高速で投げられる野球のボールは見えない。吹っ飛んでいった物は、あとから回収すればいい。とりあえず保留。

 さらに一歩踏み込んで。天寺は何かの超能力者で、あの一瞬それを行使した。
 ――まぁ、有り得ない話でもないような気もする。

 まず超能力が存在するという逆説的証明が必要になる上に、なおかつ天寺がその世界でも例がほとんどない使い手だ、という奇跡的な前提が成り立つならば、だが。
 それなら空間がブレたとかいう話も辻褄合うし、誰からも目撃されないで何かを行うことも可能だろう。これもまあ本当に一応念のためだが、保留。

 考えられるものはこんなところだろうか。
 多少荒唐無稽な仮定も混じってる気がするが、何しろ情報が少ない。

 なんて考えている間に、天寺は廊下の突き当たりに行き着いていた。遥は改めてその動向を注視する。

 天寺はそこから踊り場を越えて、階段を上がり始めた。それに朱鳥も注意深くついていく。
 その先にあるのは、食堂。現在最も混雑しているスペース――

 である四階の踊り場を、天寺は素通りした。

「…………え」





 思わず遥はつぶやき、ハッと口を押さえた。
 天寺を見る。こちらには気づかなかったようだった。

「……なにしてんのよ、遥」

「あ、いや……ごめん」

 小声で謝り、尾行再開。

 だが疑問はやはり残る。既に現在ここは四階だ。この先にあるのは、ただ――

 そんな遥の危惧をよそに、天寺は"屋上"へと続く鉄扉を、開けた。

 そしてそこに現れる、コンクリート製の巨大な壁。

「……どうすんのよ?」

 朱鳥のつぶやきに、遥も唾を飲む。
 屋上へと繋がる、僅か50センチのスペース。

 そこに、侵入者を拒むよう視界いっぱいに広がる一面の、壁。

 左右に隙間はなく、その高さは3メートル近く。
 話によると、以前屋上で傷害事件が起こったらしく、それ以来生徒が入れないように設置されたとか。
 その中央には教員用にとドアがとりつけられているが――

 天寺が手を伸ばして、ドアノブを握った。
 そしてそれを、回す。

 がちゃがちゃ、と二回硬い音を立てて、それは屋上への侵入を拒んだ。

「よねぇ……」

 朱鳥が呟いた。
 遥も同様の感想を抱き、眉をひそめた、その時。


 ガチん、と何かがハマるような音がして。

 見ると天寺は、グリッと90度に完全な形で、天寺はドアノブを回転させていた。

「――――え?」

 遥と朱鳥が言葉を失う中、天寺は強引に捻ったドアノブを押して、屋上へ歩みを進めていった。
 悠然と、こんな事いつもやってるという様子でドアを閉めて、あとにはガチャ、という硬い音が続いた。

 朱鳥は口の端を痙攣させて、呟いた。

「……とんでもないやつね、あいつ」
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