“光速の廻し蹴り”レチクルバノフ 全日本重量級初外国人王者 オールアメリカン2002で日本2位の木村靖彦を後ろ蹴りで葬り、世界王者テイシェイラにを追い込んだ奇跡の後ろ回し蹴り!
後ろ回し蹴り
極真空手の世界においておそらくはその得意技であり必殺技、後ろ回し蹴り、もしくは飛び後ろ回し蹴り、それによって、最も多くの技あり、1本勝ちを奪い取った選手と言えるかもしれない。
正面を向いて戦っている状態から、ほぼ一回転し、勢いをつけ、意表をつき、その遠心力、体重をかかとの1点に集約して、相手の顔面に叩きつける、まさしく大技。
当然それだけのモーションがあり、破壊力があり故に、試合で決まる事は非常に珍しい、その技を主な武器として用いる選手と言うのは、もしかしたらこれまでも、そしてこの先も、出てくる事は無いのかもしれない。
そんなレチクルバノフは2002年6月8日、9日に開催された、第19回全日本ウェイト制空手道選手権大会に出場。
西ロシアとして出場したレチクルバノフは、初戦を上段廻し蹴りに下段廻し蹴り、強烈無比の下突き、正拳突き、インローと繋げ、奥足下段を効かせ、どんどんどんどんプレッシャーをかけていき、前蹴りで場外に叩き出して圧倒しての勝利。
2回戦もどんどんどんどん前に出て、下突きを叩き込み、腹を効かせての上段回し蹴り、前蹴りでプレッシャーをかけ、鉤突き下突きのコンビネーションで技あり2つ取っての圧巻の1本勝ち。
3回戦は、腹を突き刺すようなものすごい後ろ蹴りを放ち、そこからプレッシャーを受け止めながら下段下段下突き下突き。
さらに鉤突きき鉤突き膝蹴りで跳ね返し、中段廻し蹴りを効かせ、場外線上にて左上段前蹴りからの飛び後ろ回し蹴りで会場沸かせる。
続く準決勝戦、対戦相手は体重125キロを誇ると言われる、近藤博和。
30kg差を薙ぎ倒す
30キロにも及ぶと言われる体重差ながら決して押されることなく、自らの組み手スタイルを崩さず、一瞬の隙をついての後ろ回し蹴りを側頭部へ。
下突き鉤突きインロー膝蹴り、超接近戦でのその打ち合い、そう思い、視線が下を向いた瞬間、胸へのパンチの連打で弾幕を作り、その死角からの高速の飛び後ろ回し蹴り!
会場に戦慄が走る。
体重125キロが、崩れ落ちた!
見事な、それは見事なまでに当てるまでのプロセスだった。
ポイントを取り返そうと迫ってくる巨体を、逆に下突きで効かせ、左中段廻し蹴りで跳ね返し、またの後ろ回し蹴り。
30キロの連打をものともせず、最後まで正々堂々と戦っての完勝。
決勝の、第17回大会で準優勝に輝いている徳元選手との戦いはやはり変わらず接近戦で下突き下段廻し蹴り。
早々に腹を効かせて、奥足も完全に効かせ、一本足の棒立ちになったところ隙を見逃さず後ろ回し蹴り一閃。
技ありをとり、追撃の下段廻し蹴りで貫禄の一本勝ち。
正直この大会、レチクルバノフの強さは頭一つ抜けていたと言って間違いないだろう。
全日本ウェイト制史上初の外国人チャンピオンとなり、歴史に名を刻み、レチクルバノフはそこから驚くべきことに1ヵ月の間も開けずわずか20日後、同年6月29日に行われたオールアメリカンオープン2002に出場。
オールアメリカンオープンとはジュニアからシニアまでの戦士たちが体重や年齢別に分かれて組み手や型を競う大会であり、ヨーロッパを始めとしてロシアやブラジルといった有力な外国人選手が世界中から集まり、ある種もう一つの世界大会とも言える様相を帯びていると言う。
オールアメリカンオープン2002
優勝まで多数の試合をしながら、しかも全日本クラスの大会を経てのこの出場は驚くべきことと言えるが、その緒戦は下突きを連打で圧倒して勝利し、ベスト16では近づいてくる相手にしばらく守勢に回りながらも、距離が離れた瞬間を狙っての後ろ回し蹴り、左上段廻し蹴り、さらに後ろ蹴りのコンビネーション。
ここから反転攻勢に回り、小技を組み合わせながら膝蹴りを当て、最後は飛び後回し蹴りで沈める衝撃!
ほんとのほんとにこの人後回し蹴り当てるなぁ、しかも倒すなぁ!
準々決勝では接近しての気合の入った下段廻し蹴りを払ってくる相手に、それをこらえ、下段を脛受けて、左の下突きを放ったその反動利用しての一回転しての跳び後ろ回し蹴り!
もろに顎を正面から捉え、相手は吹き飛び、そのまま戦慄の一本勝ちとなった。
そして準決勝、対戦相手は全日本大会2大会連続の準優勝を果たしており、世界大会2大会連続の6位となる、正しく日本の大黒柱、木村靖彦との対決。
開始早々から額がつくほどの接近戦となり、そこから木村康彦が右の下段、レチクルバノフが左の下突き。
そこから下段の蹴り合い、木村靖彦の右の下段、レチクルバノフの左の奥足下段となる。
その最中、軽く放たれた木村靖彦の左前蹴り、そして放たれた間合いを利用しての、一周の飛び後ろ回し蹴り!
木村靖彦はギリギリのところで躱し、事なきを得て、戦いは地道な削りあいとなる。
延長戦開始直後、内股で大きく崩して、右の正拳突きで距離をあけて、強引な後ろ回し蹴りがまたも木村靖彦をあわやと追い詰める。
そこからかかと落とし、胸へのパンチ、上段回し蹴りに繋げ、さらに胸への突き、上段廻し蹴り、そこから間合いを詰めてくるところにカウンターの後ろ蹴り一閃!
完全完璧なるコンビネーションで、木村靖彦を、あの日本最強クラスの重鎮をマットへ大の字!
技ありを奪い、再開後も腹へ突き、蹴りを集中させ、やはり後ろ回し蹴りで顔面を脅かし、最後まで重厚にして息をつかせぬ華麗なる組み手。
決勝は後の第9回世界大会で優勝に輝く、"褐色のマシンガン"エヴェルトン・テイシェイラ。
エヴェルトン・テイシェイラとの闘い
レチクルバノフは決勝においても、どんな対戦相手においても変わることなく、開始と同時にずんずんと詰めていき、強烈な下突き、ローキックでその巨体を揺るがす。
やはり超接近戦となり、鉤突きと腹狙いのレチクルバノフに対して、テイシェイラは上からの胸への突きという構図となる。
重量級同士の、世界クラス同士の、超近接で迫力あるド突き合い。
しかしその最中、高速の後ろ回し蹴りが会場を沸かせる。
手数、圧力ともに上回り、後の世界チャンピオンをどんどん押し込んでいくレチ。
断続的に放たれる跳び技に、マシンガンも不発となっているようだった。
かなりの攻勢になっているように見受けられたが、延長となり、レチクルバノフは今度は鉤突きを連打。
反撃のエウェルトンテイシェイラへの前蹴り、上段回し蹴りを外して、お返しの後ろ回し蹴り。
しかしそこで接近してパンチを打った際に、それが押しの反則をとられてしまう。
続行され、鉤突き、そして右の下段廻し蹴りが効いていると思った最中、またもなぜかそのような様子は無いのにもかかわらず押しの反則を取られ、減点1となってしまう。
最後はとにかく反則を取られないように気をつけながらもラッシュ、飛び後ろ回し蹴り、それで詰め切ったが、旗は向こうに上がり、残念ながら準優勝となるも、その実力は間違いなく最強クラスであった事は、誰もが疑う事は無いだろう。
そのニつ名――"光速の廻し蹴り"。
いやまあ間違いなく光の速度ではないし、廻し蹴りだといわゆるオーソドックスなローミドルハイのそれになってしまうし、実際の方だと漢字が違うとかツッコミどころは満載なのだが、しかし一般の人に訴えるキャッチフレーズとしてはさすがはプロだと言うことで、今回はこちらを採用させてもらった。
そのニつ名に恥じぬ、目にも止まらの必殺技で、ダウンの山を築き、それだけに頼ることのない、完璧なる流れ、後ろ蹴りや下突き、下段廻し蹴りの破壊力、その打たれ強さや重厚なる組み手を見せつけた男、レチ・クルバノフ。
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