Ⅴ/ただただ不安①
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本編
気づけばアレは、眠っていたようだった。
「……ん、んん?」
瞼を開け、そして上半身を起こす。
寝ぼけ眼、霞がかった意識。
よく、理解できない。
どういう状況なのか、ここがどこなのか、さっぱりわからない。
ただ脱力しきった身体を、不思議に思っていた。
「――なんだろ? どこだろ、ここ?」
見回すと、そこは暗かった。
あまりよく見えないが、モノの輪郭ぐらいはなんとか。
そこには束になった細いなにかが積み上げられ、棒状の何かが立てかけられ、そして鎧がたくさん無造作に置かれていた。
ん?
鎧?
それに束になってるものに、棒状の何か――
意識覚醒。
「――こ、ここどこ!?」
思わず叫びアンド立ち上がり――頭を天井に、ぶつける。
目に、火花が弾けるような痛み。
「たっ! たいたいたいっ……ぐす、ここどこ?」
ごとんごとん、とその空間は揺れていた。
それに積み上げられているものは藁に違いなく、そして棒状のものは剣だった。
そして移動しているという事実からも、
「……馬車、なの?」
確認しようにも、止まる気配はない。
叫んでみようかとも思ったが、それもそれで恐い。
連れ去られたと見て、間違いないだろうから。
そこまで考えて、アレは直前の出来事を思い出した。
「ベト……」
は、どうしたのだろうか?
ひょっとしてここに連れてきたのは、ベトなのか?
しかし真意を知る前に寝てしまった自分は、この状況下でどうすべきかわからない。
とりあえず、立ちあがっては危ないし杖なしではそもそも歩けないから、四つん這いで移動してみることにした。
「んしょ、んしょ……」
人生初の四つん這いは、なんだか杖とは別のところに力が必要だった。
胸のあたりとか、あと擦れて膝が痛む。
でも仕方ない。そのまま真っ直ぐ進んでみた。
すると、人がいた。
それも、3人も。
「ん? おぉ、目が覚めたかお嬢ちゃん」
知らないおじさんが、話しかけてきた。
たっぷりした身体の、ひげをたっぷりたくわえた。
丸いという印象を受ける人だった。
服は粗末なものをつけていた。
「…………」
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