Ⅴ/傭兵の生活⑥

2019年11月22日

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 その日の夕食。

 アレは生まれて初めて、おばあさん以外の人と一緒に食事をとることになった。

 それも、大人数の異性と。

 しかも、大広間で。

「…………」

 少し濁った野菜スープを、一杯スプーンですくう。
 野菜スープといっても、人参や玉ねぎが糸くずみたいに細く切られて入っているだけだ。
 しかも濁っている理由が得体が知れない。
 飲むのには、かなりの勇気を要する。

 考え、しばらくして、かなりゆっくり、口元へ運ぶ。

 啜る。

 なんていうか、ぬるいお湯を呑んだ感じ。
 しかもべちゃ、ってしてる。

「…………」

 感想は、言い辛かった。
 他の食材に、目を向ける。

 なんだか焼かれた肉というか肉の塊というかそんなものがあった。
 どうやって食べるんだろう、あれ?

 フォークじゃ、とても無理そう。

「おう、嬢ちゃんどうしたん?」

 唐突に後方から、声をかけられた。
 周りはみんな他より少しでも多く食べようとガフガフやっていて話しかけられることはないだろうと油断していたアレは振り返るよりもビクッ、と身を固くする。

 そこに肩を置く、不審人物。

「そ、そんなに緊張しなさんなや……おじさん、そんな小兎みたいな初心な若い娘見ると、興奮しちゃうぞ……ハァ、ハァ」

「くたばれ不審者」

 真下から、またも脇腹にアッパーカット。

「ぐべらぁアア!?」

 それに不審人物――スバルの100キロを超える巨体が、30センチは浮き上がる。
 そして床に、べちゃ。
 あとは打ち砕かれたアバラを押さえてのたうち回った。

 それを上からゴミを見るような目でベトは見下ろし、

「……ったく、本当このじじぃはエロで適当で自分勝手で、どうしようもねぇ」

「あ、ベト……」





 それにアレは、水場を見つけた子羊のような瞳で振り返る。
 それにベトは少しうろたえ、

「お、おう。飯、食ってっか? う、美味いか?」

「うん……う、ん? ぅ、んん?」

「て、なんだその反応? 食ってねぇのか?」

「う、うぅん?」

「どした? 不味いのか?」

「う、うん」

「……ま、そりゃそうか」

 そして隣にどっかと腰を下ろす。
 そして皿を傾けスープを啜る。自分にとってみれば悪くないが、まぁ冷静に考えれば美味かぁない。
 普段がろくなもん食ってないから、舌が妥協してるんだろう。

 続いてパンを一口食い千切り、手近の肉塊をフォークで、ぶちぎる。
 そして未だパンをムシャムシャしてる口内へ放り込む。
 味付けも雑なそれでも、貴重なたんぱく質、栄養源。
 うむ、悪くない。

 肉食わないと剣なんて振れるか。

「……うわぁ」

 隣から、引くような声。
 それにベトは、アレの存在を思い出す。

 確かに、女性から見ればこの食卓は荒々しいの一言か。
 しかもこの子は、今までずっと部屋のベッドの上で純粋培養されてきたわけだし。

 ――汚してみたい。

「なぁ、あんた?」

「な、なにベト……」
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