Ⅵ/急襲②

2019年10月18日

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「敵兵が、10分後にはくる。兵力、50から60」


「10分後? かァ、ったく。ろくに態勢整える暇もねぇぞ?」


「悠長にやり取りしてる場合じゃねぇな。とにかく俺の部隊が先陣切る。あとのことは任せたぜ!」


「わかった。くれぐれも無茶すんじゃねぇぜ?」


「ンなもん今に始まった話じゃねぇよ……じゃあな!」

 それだけやり取りし、ベトは再び駆ける。
 広間の左端に集まっていた自身の隊の連中に向かって、

「よし、行くぞお前ら! 先陣風を切り、向かい来る奴らを薙ぎ払えェエ!!」

『ウォ――――――――ッ!!』

 ベトの号令と共に、彼らは一斉に駆け出す。

 傭兵は基本的に、歩兵だ。
 馬など持てず、そして剣のみで簡素な鎧に身をまとい、突撃する。
 城の正規兵にも使い捨てと思われている。
 そんな存在だった。

 だが、ベトは死んでたまるかと思っている。

「う、オラァ!」

 突撃し、敵の鎧の上から幅30センチ長さ1メートル70センチにも及ぶ大剣を、叩きつける。

「ごァ!?」

 その衝撃で敵兵は吹き飛び、地面に叩きつけられ、そのまま沈黙。
 鎧を着た上からの戦いなど、こんなものだ。
 技術ではなく、ただ勢い。
 パワーに任せた、特攻だ。

 その中で生死を分けるのは――考えないことだ。

「らァ!」

 再び身体ごと大剣を、振りまわす。
 今度は運よく敵の鎧の脇にある隙間に潜り込み――

 ベキン、という心臓に響く感触。

「――――」

 そのまま敵兵はモノ言わず、倒れ伏した。
 脇腹を五、六本へし折った音だった。
 それどころから勢いそのまま、折った骨は間違いなく心臓を貫いているだろう。

 既に刃は、相当に摩耗している。
 だから基本的には、ただの尖った鈍器としての使い方が主流となる。

 だからどうしたというのか。
 一切、疑問を抱かない。

「この野郎っ!」

 敵兵が二人、ベトに突撃してきた。
 双方大上段に振りかぶった剣を、こちらの脳天めがけて振りおろしてくる。

 それを迷いなく、右手の敵の懐に飛び込み、胴を薙ぐ。
 その際振りおろされた剣が、ベトの右肩を打ち、肩当てを陥没させた。

 もちろん、激痛が走る。





「ぐ、が……ッ!」

 胴を打たれた相手はアバラを砕かれ、その場に倒れ伏した。
 しかしベトはすぐに振り返り、空振りして態勢が崩れている相手に肉薄、その頭部に――フルスイング。

「おがァ!!」

 兜を吹き飛ばすその一撃で頭がい骨は粉砕、二メートルは吹き飛び、男は絶命した。
 しかしベトは喜んだり安心したりすることなく、次の敵に向かう。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……!」

 息は、激しく乱れている。
 だからと言って戦場の真っただ中で休みなど入れれば、次にああなるのは、自分だ。

 だから、考えない。
 ただどうすれば生き残り、敵を駆逐できるか。
 それだけを瞬間的に判断し、実行する。

 それだけだ。

 それこそが、生きているということだ。

「ハッ、ハッ――あァ!!」

 さらに敵の眉間を割り、打ち倒し一瞬息を整えた次の瞬間、振り返らずに真後ろに剣の切っ先を――

「ごえ!?」

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