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Ⅶ/傭兵の生活⑦

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 笑顔で問いかけてやると、アレはびくびくしながら後ずさりつつも必死に笑顔を作って応える。
 その健気さに、胸中に三つの感情が同時に出現、渦巻いた。

 まず、そんな処女(おとめ)を汚したいというさらなる欲求。

 二つ目が、そんな信頼されている彼女を裏切りたくはないという想い。

 三つ目が、そんな今の状態とさっきの奇妙な事態とがあまりに符合しないという、猜疑心。

 そんな状態にベトはまるで歪んだような笑みを作り、

「あ……ぅあう、え……肉食えっ」

「うぷ!?」

 顔は横を向いて、無理やりフォークに刺した肉塊を微かに開かれたアレの口の中につっこんだ。

 それにアレはあっぷあっぷしていたが、よく考えるとこれで顔を汚し、食べ方を教え、問答をしないことで猜疑心もそのままという見事な正解を演じていた。
 我ながら、びっくりだった。

 アレはつっこまれた肉を小さな歯で必死に噛み、たっぷり時間をかけて千切ってから、

「はぐはぐ……ん、おいし」

 耳を疑うような言葉。

「う、うまい? こ、これがか?」

「? うん、おいしい」

『おいおい、マジか?』

 後ろから突然声がしてベトが振り返ると、そこには傭兵仲間たちがズラッ、と列をなして勢ぞろいしていた。
 それにベトは、驚き仰け反る。

「うぉ!? な、なんだよお前ら?」

 仲間は首を石垣のように重ねて、

「おいおい嬢ちゃん、本当にこんな糞飯うめぇのかよ?」

「あ、はい。美味しいですが?」

「かぁ、すっげな。まるで天使さま、こんな殊勝な娘見たことね!」

「……だから、俺はなんだと」

「おい嬢ちゃん、あんたどこから来たんよ?」

「おばあさんの家から、ベトに連れられて」

「って、おいなにかベトお前この娘の祖母さんから攫ってきやがったのかこの鬼畜!」

「なんの話だ! てかお前らなんなんだ!?」

 結託してアレに質問を浴びせベトを責めていた。
 そんな状況でベトは憤慨し、アレは意外に冷静に対処していた。

 仲間たちはさらに肩まで組んで結託し、

『紹介しろよー、この嬢ちゃん気に入ったぞ、俺らにも紹介しろよー』

「――――ハァ」

 額を押さえて、ため息ひとつ。
 頭痛かった、こうなるとは思わなかった。
 だいたいこんな子、こいつらの好みでもない筈なのに、なんで――

「わたしの名前は、アレ=クロアといいます。ずっと、ベッドの上で暮らしてきました。普通に歩くことが、できません。生まれた時から、おばあさんしか知りません。そのおばあさんを、知らない人に殺されました。すごく、悲しいです」

『――――え』

 突然。

 アレが立ち上がり、振り返り、大衆に向けて行った告白に、一同は言葉を失う。

 それはベトも、同様だった。
 わけがわからない、というかこの子は会った時から一切の行動おの意味がわからない。
 みなと同じように、だからただ聞き耳を立てていた。

 それにアレは真っ直ぐ、真摯に、言葉を紡いだ。

「わたしは、おばあさんを殺されたくなかったです。でも、殺されました。どうしようもありませんでした。でもこの世の中は、どうしようもないことで溢れてると思います。わたしはそんな世の中を、どうしても変えたいのです。だから皆さん、よろしければ、どうかわたしに、力を貸していただけませんか?」
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