眼窩底骨折!内山高志スーパー王者初防衛戦vsジョムトーン・チューワッタナとの衝撃破壊劇!

2024年4月9日

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日本史上初のスーパー王者

OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者を5度防衛、WBAスーパーフェザー級王座11度防衛、WBAスーパーフェザー級スーパー王座を2度防衛。

私はそれまで知らなかったのだがスーパー王座というのはWBAが2001年1月より始めた新しい制度という話で、同団体以外のタイトルを同時に獲得、もしくはWBAの王座を5度もしくは10度連続防衛した場合に認定され、内山高志の場合は9度の防衛中7つのKO防衛という試合内容が評価されたという話だ。

その栄えある称号を、日本人として史上初めて獲得したのが内山高志だという。

その強烈なパンチ力によるあまりにも鮮烈な戦いぶりから、ノックアウト・ダイナマイトと呼ばれ、歴代3位となる11回連続防衛の記録も作り上げ、パウンドフォーパウンドランキングにも山中慎介に続いて日本史上二人目となるランキング入りを果たしたという。

そんな内山高志の試合の中で今回ご紹介したいのがWBA世界スーパーフェザー級10度目、そしてスーパー王者として初の防衛戦、VSジョムトーン・チューワッタナ戦である。

その時点で内山高志はKOに次ぐKOで、日本人世界王者在位期間、具志堅用高の4年5ヶ月、長谷川穂積の5年14日を向いて、第1位の5年3ヶ月を記録しており、さらにはその時点で先にも述べた、五階級制覇のフロイド・メイウェザー・ジュニア、13回連続KO防衛中のゲンナジー・ゴロフキンと並ぶ、スーパーフェザー級のスーパー王者に認定ということも相まって、大変な期待が高まっていた。

それに対してジョムトーンは、ムエタイ200戦以上、現WBCムエタイライト級王者にして、ボクシング9戦全勝、東洋太平洋など3つのタイトルを獲得という、恐るべき実績を保持しており、さらには試合前のインタビューでも5ラウンド以内に倒すという強気な姿勢を前面に押し出していた。

25歳でプロの道へ渡り、30歳にして世界一となり、そして35歳の今宵という、正しく節目の1戦。

その時点で内山高志が23戦22勝18KO無敗1分け、対するジョムトーンが9戦全勝4KO、WBA世界スーパーフェザー級7位、無敗同士の戦い。

ムエタイ王者ジョムトーン・チューワッタナ

第一ラウンド。

ジョムトーンはサウスポーでかまえ、内山高志がそのグローブに対して軽いジャブで挨拶。

ジョムトーンは内山高志の前の手を捌くような仕草を見据え、なかなか第一撃目を放たない。

そんな状態から一瞬内山高志が左手を下げたの見逃さず、鋭い右ジャブ。

鋭く、まっすぐとした一撃。

それに内山高志も鋭い左ジャブで反撃。

しかしいまだにリング状の空気はゆったりとして、お互い戦力を図っているような段階か?

ジャブジャブジャブジャブ。

差し合い、きれいなボクシング、未だお互いどのようにするか計りかねている。

探っている。

お互いのボディーへのストレートが交錯する。

緊張感が徐々に高まる。

さらにお互いのジャブが当たる、距離感が、徐々に近くなり、合ってきている。

と思っていたところ、ジョムトーンがロープを背にしたタイミングを狙っての、静かにして全くモーションがないワンツーがその顔面をとらえる。

一気には会場がわく。

追い詰めるが、ジョムトーンはそれをガードして冷静に反撃。

しかし顔をしかめるジョムトーン、効いている、さらに内山高志はたたみかける。

左フックが当たるたび、まるで鈍器で叩いたような音が会場に響く。

右目を閉じている、当たったのはその右眼か。

左フック、ジャブ、ワンツー、このコンビネーションが強烈無比。

さらにボディーのストレートから、そのまま右顔面にもっていく。

多彩なコンビネーションから、まるで台風のようなフックの連打。

しかしジョムトーンもここで沈まず、逆に内山高志にロープを背負わせての左ストレートを繰り出す。

まだ1ラウンドとは思えない怒涛の展開。

接近戦からお互いの大砲が顔面をかすめる!

そこからジョムトーンがフックフックフックで圧力をかけてきたところに、まさかのボディーでのカウンター。

高等技術のオンパレード!

それにここまでほとんど被弾もしていない、ノックアウト・ダイナマイトはパワーだけでは成し遂げられないということを証明しているようだった。

スローモーションを見て気づく。

ジョムトーンは内山高志の右ストレートを、かわそうとして、躱しきれず被弾して、右目にもらったようだった。

ワンツーが、ほとんど同時に飛んできたような感覚だろうか。

恐るべきスピードということだろう。

第二ラウンド、

ジョムトーンは自分のコーナーに頭突きして、気合いを入れてかリング中央に向かう。

まずはジャブから、そしてジョムトーンはツーまで、丁寧なボクシングから始まり、お返しのように内山高志もワンツー。

それにジョムトーンは超光速のワンツーで返す。

接近戦でアッパー、そしてフックが交錯する。

これで2ラウンドなんて、ありえないだろ普通。

ジャブジャブジャブジャブで、お互い間合い、タイミング、大砲を狙うそれを計っているようだった。

小さく小さいジャブを何発も何発も放ち、鋭い右ストレートをジョムトーンが躱し、それに強烈なフックで反撃し、それをガードして内山高志が離れ、回り込んで回り込んで――

一瞬。

眼窩底骨折のワンツー

第一ラウンドと同様、しかしそれ以上のスピードと威力、これまでに把握したその場合、タイミングで放たれたワンツーが、ジョムトーンの顔面に、皆が完全に意表をつかれたタイミングで、打ち込まれていた。

がくんとなり、のけぞり、体制を戻そうとするが、しかしそのままジョムトーンはバネじかけの人形のように、その糸が切られた人形のようにマットに尻餅をつき、仰向けに、倒れた。

そして両手を広げ、大の字になり、まぶたを閉じて、まるで死んだように、ピクリとも動かなくなった。

ノックアウトというのも数多あるが、ここまで全く起き上がる気配もなく、ダメージが心配になるKOというのは、非常に珍しいといえるのではなかろうか。

解説者が叫ぶ通りの、まさしく完璧なる勝利。

ジョムトーンは全く動く気配なく、ひたすらまぶたを閉じてリングの上で横になっている。

心配になる…

その両手が、マジで大砲に見えてくる…

2ラウンド1分15秒、KO勝ち。

さらにスローモーションシーンの中で、フックに対するボディーのカウンターがボクシング漫画はじめの一歩のハートブレイクショットのように心臓を的確に捉えており、それも効いたような表情がはっきりと見て取れ、さらにはその当時の解説で、ジョムトーンはあの一撃で右目の下が眼窩底骨折の疑いが出ているといい、その破壊力の恐ろしさに解説陣一同戦慄している様子が見て取れた。

それに解説がすごい拳ですね、と聞くと――

「いや、いやー、あの…まあやっぱ倒すために日々練習してますから」

と控えめに、謙虚に答えている様子が印象的だった。

スローモーションのその一撃。

まっすぐ伸ばした左ジャブで距離を図り、タメを作り、そしてまるで引き寄せられるように迫る右拳、それがまるで砲弾のように右目へ直撃し、それが下に降りて行き、ジョムトーンもまた、マットへ引きずり込まれた。

正しくノックアウトダイナマイト、スーパーチャンピオン、その名に恥じない、いや、その称える言葉以上の衝撃的なノックアウト劇といえるだろう。

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