ブライアンホークのモデル! 常識無視なナジームハメドの変幻自在ファイトとは!
ブライアンホークのモデル
ボクシングに疎い私ですら聞いたことがあり、そして何より格闘家にしてオタクであるそれもかなり濃いというかとても濃いオタクに属する私にとってボクシングの教科書とも言えるはじめの一歩に出てきた非常に有名なキャラクターのモデルということを聞いている。
ブライアンホーク。
鷹村守が、初めての世界戦に挑んだ、その相手。
酒、金、女、ニューヨークのスラム街、路地裏の底辺でただただ暴力に身を任せていたその彼が、ボクシングトレーナーミゲルゼール見出され、その才能を開花、ほとんどボクシングと言うものを学ぶことなく、その暴力とも言える天性の身のこなしと振り回すパンチ日本で世界王座につき、そして鷹村守にもボクシングともいえないような戦いぶりでギリギリのギリギリのところまで追い詰めた。
はじめの一歩史上でも、圧倒的なまでの存在感を持っているキャラクターと言えるだろう。
その、ボクシングスタイルのモデル。
プリンス、そして日本では悪魔王子とも呼ばれている、その実力。
悪魔王子
イングランドのシェフィールドでイエメン人の両親のもとに生まれ、7歳の時に父親のもとでボクシングを始め、アマチュアで67戦62勝5敗の成績を残した後、18歳でプロデビュー。
2年後にはEUヨーロッパバンタム級タイトルを獲得し、その5ヶ月後にはスーパーバンタム級のWBCインターナショナルタイトルの主張に収め、さらに翌年に世界タイトルを獲得すると、IBF、さらにはWBA、WBCの世界タイトルを奪取、実質的に4団体の世界フェザー級王座統一。
世界戦10連続KO、他団体王座2度の統一戦を含む15度の防衛、生涯戦績37戦36勝31KO1敗。
まさにその戦績をざっと見ただけでも、それは凄まじいとしか言えないものを保持している。
しかしそれ以上に驚くべきは、彼の評価がまずその驚異的な身体能力から繰り出される、変幻自在の回避能力と言われているにもかかわらず、圧倒的としか言いようがないほどのそのKO率の高さだろう。
ナジームハメドの影響力は凄まじいものがあり、有名なものだけをあげても、レスリングからK-1を経て総合格闘技の世界に飛び出し、現在は政治家として活躍している須藤元気がその入場パフォーマンスやバックハンドブロー、ステップ、相手から視線を外すなどの動きがハメドを参考にしたと語っており、さらに山本“KID”徳郁もK-1ルールに初挑戦する際にビデオでハメドを見て参考にしたと証言し、テレビ解説を務めて畑山隆則もそれを実際に評価したとされている。
さらには極真空手で世界大会準優勝2回、全日本大会5度の優勝を果たしている数見肇も師匠にハメドのビデオを見せられ、あんな風にスタスタ歩いて自由に強いパンチが出せるようになりたいと1つの理想型としていたと言い、新極真会で、ウェイト制4度優勝、全日本大会3度のベスト4、体重別の世界大会2度の優勝に、無差別の世界大会でも3位に輝いているの谷川光も、ハメドの影響を受けてその動きを真似ていたと言う話もある。
まさにボクシングの枠を超えて、漫画、キックボクシング、MMA、極真空手まで、幅広い影響力を見せているその戦い、その進化、それを少しずつだが私も追っていきたいと考えた。
そして私が今回取り上げたいのは、1994年10月19日に行われた、WBCインターナショナルバンタム級タイトルマッチ、初防衛戦にあたる、ローレアノ・ラミレス戦だ。
インターナショナルと言うのはWBCのランキング、11位から30位の中での、その中でのチャンピオンを作ると言う、ある意味ではジュニア選手権という意義だったという。
ナジームハメドは、控え室で、アップ中だと言うのにカメラが向けられるや否や、胸の筋肉を動かしてわざわざパフォーマンス、こういうことする人見たことないからすごい心臓してるなと思う… (笑
頭にターバンを巻いて、笑顔でくねくね腰を振りながら、余裕綽綽自信満々で現れるナジームハメド。
リングサイトに来てもまるで海外のカートゥーンのキャラクターのような奇妙な動きで観衆にアピールしてなかなかリングインせず、頭の被り物をとってまさかのコーナーのゴムを使って前方宙返りで飛び込むと言うパフォーマンス。
間違いなく生粋の、エンターテイナー。
当時20歳のナジームハメドに対して、ラミレスが28歳、ドミニカの生まれで4年に1度開催される南北アメリカ大陸の国々が参加し競われる、パンアメリカンゲームスでは1983年ボクシングフライ9部門で銀メダルを獲得し、さらにはIBFのインターコンチネンタルのチャンピオンにも輝いていた。
その時点で18戦17勝7KO1引き分け、無敗。
緊張やプレッシャーは微塵も感じられない、筋肉も張ってまさに相手にとって不足なしの間力を備えているように見受けられた。
対するナジームハメドは14戦14勝12KO。
戦績だけを見るならば、KOの差こそあれ、それ以外では遜色なし、むしろ相手有利といってもよいのかもしれない。
試合開始。
スタスタ歩く
でええええええ!?
私は思わず変な声を漏らしてしまった。
ゴングと同時にナジームハメドはその場駆け足をして、そしてまるで喜劇師がそうするかのように背筋を伸ばして膝を伸ばしてまっすぐと相手に向かって歩いていったのだ。
信じられない、こんな真似するやつ初めて見た、これ一応世界戦に準じるタイトルマッチなんだぞ?
最初に思ったのは、ラミレスのジャブが切れていることだった、やはり実力者、決して噛ませ犬なんかではない。
対してナジームハメドは?
飛び込んでのフックが、相手のジャブが霞むほど早い!
体ごと打っているのに、フックなのに、さらに早いってどういうこと!?
しかも下向いたり横向いたり、一瞬空手革命家、塚本徳臣を連想した。
構は低めのデトロイトスタイルと言うところだろうか?
かと思えば頭を下げて、両拳を合わせて、ロケットのように飛び出たりと、なかなか判別が難しい。
かと思えばデトロイトスタイルに戻り、フリックを繰り出すかと思えばまっすぐなジャブを打ったり、というか右ストレートに近いか?
すべての攻撃に、フェイントが入っている。
そしてノーガードで、体をおそらくは120度とか130度とか逸して、見事にかわすステップバック。
まるで荒川静香のイナバウワーだ。
観客が沸く。
1分半ほど見て気づいたのが、彼の見えている世界は、おそらくは我々とは違うのだろう。
我々には見えていない何かをつかもうとして、おそらくああでもないこうでもないと、試行錯誤しているのではないだろうか?
しかしラミレスも、ほとんど被弾していない、ジャブしか出せていないが、今のところはポイント的もダメージ的にも5分といったところだろう。
すごい、完全に横向いて、飛び込んできたところ形でガードした。
超高等テクニック。
ディフェンスで見せる選手なんて、お前はモハメドアリか?
ラミレスがピーカーブースタイルでガードを固めながら、強烈なアッパーで反撃しているところから、なんとなく幕之内一歩に見えてきた。
1ラウンド終盤、ナジームハメドの目の色が少しずつ変わってきた。
何か、何かが見えたと言うのだろうか?
2ラウンド。
ナジームハメドは手数を抑え、天空まで届くかのような凄まじいアッパーを見せる。
当たっていたら、もしかして首がもげていたのではないかとぞっとするのを禁じえない。
明らかにスタイルが変わった、デトロイトスタイルからのフリッカーの連発、まるで獲物を狩る狩人。
たまたまガードにあたって、頭を下げてからのジャブが早すぎる。
無駄な動きが減っていき、徐々に間合いが近づいていく。
その分エネルギーを、パワーを貯めているかのようだった。
その隙をついて、ラミレスはラッシュする、左右のフックで前に出る。
それをショルダーガードだけで見事に交わす。
その隙をついて、左右のフックで前に出て、飛び込んでのジャブがラミレスの画面を直撃!
おそらくはここに来て初めてのクリーンヒット。
完全に間合いとタイミングをつかんだのか、飛び込んでのジャブの後、反撃のフックを同じ勢いで体を逸して躱す。
まるで足に加速装置でもついているかのよう。
そして3ラウンド。
塚本徳臣との共通点
ここにきてナジームハメドは完全にデトロイトスタイルで構えて、オーソドックスにフリッカージャブで前に出て、飛び込んでのジャブを交えて行く。
ラミレスは雲の糸に絡みとられた獲物のように、距離を測るような威力のないジャブしか返せない。
狙っている。
それこそ、まるで両者の間には、ナジームハメドが張り巡らした、無数の糸が見えるかのようだった。
そしてナジームハメドは飛び込んでのジャブでダメージを積み重ねて、そして相手の不用意なジャブに、躱しざまのカウンターの右フックを炸裂させ、ダメージを見定めての左右のとびこんでの逆ワンツー、そして相手をロープに張り付けての、串刺しにするようなスイッチしての右ストレート一閃!
スタンディングダウンをとっても良かったと思う。
ダメージを被って、まともに頭も働かないところに、やはり飛び込んでのジャブを繰り返し、そして意識もうろうの中放たれて右ジャブに、見事なフックのライトクロスを合わせて、ナジームハメドはラミレスを切って落とした。
文字通り、糸の切れた人形のように、ラミレスは倒れた。
多分、何が起こったのか本人わかっていない。
そのまま、試合は終了。
衝撃、そしてナジームハメドのその一端がわかった気がした。
理詰めだ。
彼の頭の中には、すべての流れ、相手の攻撃、間合い、自分がやるべきこと、それが視覚情報として見えているかのようだった。
そして、並外れた体のバランス、そして足の筋肉、それにより、飛び込みよってパンチを加速することができる。
間合いが違う。
距離感が違う。
空間把握能力が違う。
やはり私は、塚本徳臣、それも第34回全日本大会、その時を思い出していた。
あの時も塚本徳臣は、常人には理解できない長大な間合い、胴廻し回転蹴り、後ろ回し蹴りを武器に、1部の人間にはあれは空手ではないと言われていた。
彼の動きが理解できる人間は多くはないと思う。
だからこそ彼のパフォーマンス、そのウィービングにだけ目がいっている人も多いと思う。
彼は、どちらかと言うと左脳タイプだ。
それが自分にだけ理解できるなどと驕るつもりはないが、なんとなく彼が考えていること、見えている世界、その一端が覗けたような気がした。
間違いなく世界に、格闘技、スポーツ界に、その影響を及ぼしたと言うことに納得がいった。
ある意味で彼は、美術の世界で言うのならば、ピカソのような立ち位置いる人間なのかもしれない。
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