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Ⅸ/不吉な兆し①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「……使命、ね」

 考えていた。

 使命。
 使わされた命。
 命の、使い方。

 そんなものがあるだなんて、考えたこともなかった。

 人はただ、生きている。
 他の生物を食って、加工された水を飲んで、吐き出して。

 そして、死ぬ。
 それだけだった。

 それだけじゃないのか?

 なにか、しなければならないのか?

 それだけだと、生きていることにならないのか?

 間違っているのか?

 自分の生き方は、本当は悲しいモノなのか?

「……ふぅ、わかんね」

 わからなかった。
 今までの生き方と、考え方と、在り方と、あまりに真逆な存在。
 本当に人間か? とさえ疑うことすら――

 悪魔憑き。

「…………」

 厭な単語が、脳裏をかすめた。
 それに思わず、いつの間にか閉じていた瞼を開く。

 窓から差し込んでくる月の光は、いつになく眩しかった。

「まさか……」

 な、とまで言いたかった。

 だが言えなかった。
 それは、それを言えばあまりに今までの行動の不可思議が解決される言葉だったから。
 だとすれば、あの変貌も、神との契約という言葉も、そして昼間の事件も――

「……どうすっかな?」

 面倒だった。

 聞くべきか?
 でも悪魔憑きは、自身ではわからないという。
 なら、確かめようがないか?

 悪魔祓い(エクソシスト)。

「…………」

 対抗手段といわれているのは、聞いたところでそれだけだという。
 教会が所有しているという、対悪魔の特殊部隊。
 ツテは、ないでもない。
 こんな稼業をしていると、あちこちで色々と恩を売ることにもなる。

「明日……」

 衣擦れのような音がした。

 キン、とベトは傍らの愛剣を、静かに抜く。
 物音には、昔から敏感だった。
 敏感でなければ、死んでいたような環境だったから。
 それに戦場で産声を上げたというのも大きかったのかもしれない。
 だからベトは今まで、不意打ちというものを喰らったことがなかった。

 しかし今のは、起きていなければ気づかないほどの些細なものだった。
 たまたま遅くまで珍しく考え事をしていた今日だったからこそ、気づくことができたのかもしれない。
 それにベトは、眉をひそめる。

 ――なんだ?

 息すらひそめ、態勢を変えず剣のつかに手をかけたまま、気配に神経を集中させる。

 動きが、あった。

 ひどくゆっくりだが、それは徐々に、こちらではなく入口に――

 まさか。

「……アレ=クロア?」

 微かに微かに、呟く。
 既に中にいて出ようとしているなら、他に該当する者はいないだろう。
 自分の感覚を無視して進入することは、不可能だ。

 気配が完全に外に出たことを確認して、ベトは起き上がった。
 そしてあとを追おうとして――移動用の杖がその場に置き去りなことに、気づいた。

 どうしたというんだ、あの娘は?
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