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ⅩⅢ/弓兵①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「…………」

 アレは俯き、静かに呼吸を整える。
 好意が見えないから、安心する。

 それは普通の在り方からは考えれないと、少女はわからない。
 普通というあり方を、知らないから。

 世界を変えたいのはただ単純に、世界が怖いからなのかもしれなかった。
 もちろん未だに、断言できるものではなかったが。

 だから大衆の前で演説したり、単純な呼びかけには笑顔で応えるアレだったが、対一でまともに話せるのはベトと、素っ気なくされても頑張るスバルだけだった。

 他の者は好意は持っているが、持て余していた。
 真っ白いレースドレスのような少女の、扱いに。

「……ハァ」

 一息吐き、杖をついてアレは立ちあがった。
 陽射しが眩しい。

 ご飯を食べて、次はどうしよう?
 考えていた。

 世界を変えなきゃ。
 それ以外、自分の生きる意味がない。

 だけどこうして剣さえ振っていればいいと、そういう風にだけは思えなかった。
 ベトに、会いたかった。

「あ……」

 建物に入る直前、アレは声を漏らした。

 そこには、アレが会って、一緒に荷馬車でここまで一緒して――そして今まで一度も話したことがない相手が、玄関の脇に座り込んでいたから。

「…………」

 あぐらをかき、そして自身のものだろう弓を熱心に手入れしている。
 弦を張り、固定し、状態を見る。

 理由はない。
 なぜかアレは、その光景を見つめていた。

「……おーい嬢ちゃん?」

 上の階から、スバルの声がかかった。
 それにハッ、と我に返る。

 どれくらい見ていたのかわからない。
 そしてそれに彼も、微動だにしない。

 ご飯を食べないのだろうか?
 そんな子供じみた発想さえ出てしまうほど、彼は弓の手入れに没頭していた。

「――お昼ご飯、食べましょうか?」

「え……」

 その呟かれた声が、すっと音もなく立ち上がり弓を背中に担ぎ直し伏し目をしている目の前の男だと気づくまで、4秒ほどの時間が必要だった。

「あ、はい……その、」

「マテロフ・アルケルノ。マテロフで、結構です」

 そう言って弓使いマテロフは、先行して二階の食堂に続く階段を上っていった。



 マテロフの所作は、見事なものだった。

 周りがフォークなど無用とばかり立ち上がり前のめりで我先にと手を伸ばしてパンを、肉をわしづかみ、千切り、貪り、野菜がほとんどなし野菜スープで流し込む中、ひとり丁寧にナイフとフォークを駆使してほとんど音を立てることなく粛々と食事を進めていた。

 しかも胸元には白いスカーフまでつけて。
 見ようによってはフランス料理のフルコース食べてるようにさえ映る。

「…………」

 その様子をアレは同じようにカチャカチャとフォークとナイフを使いながら、黙って見つめる。
 改めてみると、マテロフは綺麗な顔立ちをしていた。

 褐色の周りと違い肌も白く、肩まで届く白金を想わせる髪も手入れが行き届いている。
 鼻筋も通っており、肩幅も細く、眉毛も細い。

 ふとすれば女性と見紛うほどの美男子だった。

「…………」

「うめぇ、肉、うめぇ!」

「おい、てめぇ取りすぎだろ戻せや!」

「っせ早いもん勝ちだろうが!」

「お、お頭ァ……」

「情けねぇ声出すなてかわしに寄こせ!」
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