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2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 まるで血の海で、泳いでいるようだった。
 斬っても斬っても、人からは血が吹き出る。
 まるで血が詰まった血袋だった。

 人は血で出来ている。

 自分の剣が相手の頸動脈を切り裂き、後ろからかかってきた相手の剣が自分の目の横を通過して行きながら、ベトは思った。

 極限状態に事ここで至った。
 集中力が高まった状態により、視界のすべてがスローモーションのようにゆっくりに見えている。
 相手の剣が、目の先を横切っている。
 それを躱し、相手の喉元に剣を突き立てる。
 既に先がないそれは、刺すというより骨を砕く鈍器のような役割を果たした。

 続いて、横の敵が胴を薙ごうと剣を振りかぶってくる。
 それを躱そうと、腰を引く――が、躱しきれず、微かに肉が、抉られる。

「かっ!」

 火が吹き出るような激痛に、一瞬身体が硬直する。
 その隙を突くように、上から槍が降ってくる。

「ぐぅ……!?」

 それもスローモーションに見えているが、しかし身体がついてこない。
 当然のように。
 それをなんとか前転し、回避する。
 反撃する余裕なんて、まったくない。

「ゼッ! ゼッ! ゼッ! ゼッ!!」

 息がまったく整わない。
 手先が痺れて、ついてこない。
 汗が全身覆っていて、視界すらまともではない。

 既に、何人倒しただろうか?
 一応普段の癖で7人目くらいまでは数えたが、あとは思考そのものが消え去った。
 そして集中力だけが高まり続け、限界までいった。
 しかしそれに反比例して、身体の方は徐々に機能を停止していった。

「ガッ、ハッ……ッ、ぐ!」

 なんとか膝たて立ち上がり、剣を構えた。
 その切っ先は震え、おぼつかない。





 重い。
 なぜこんな重い剣を選んだのかと、過去の自分を責めたい気分になってくる。

「おうらァ!」

 敵が、必死の形相で襲いかかってくる。
 武器は、槍斧(ハルバート)。

 逃げようかと考えたが、既に足がバカになっていた。
 しかたなくスタンスを広く取り、剣を両手で、身体の上を覆う。

 重い、衝撃。

「ヅっ……く、なろ!」

 目を充血させ、剣を横殴り。
 しかしそれは容易く槍斧(ハルバート)の側面に、受け止められる。

 そのお返しとばかりに――強烈無比な突きが、穿たれる。

「ヅゥ――っ!!」

 なんとか剣の腹で、受け流した――いや違った、実際はもろに剣の腹の上から喰らってしまった。
 衝撃は背中を突き抜け、そのまま遥か後ろの壁にまで到達したようですらあった。

 4メートルは、吹っ飛んだ。
 ひとはこんなに飛べるのか、と少し滑稽ですらあった。

 地面に、衝突する。
 それと同時に、口から血を吐き、それに自分が濡れそぼった。

 アバラが何本か、持って行かれたらしい。
 ハハハ。
 なぜか楽しくて仕方なかった。

 槍斧(ハルバート)を持った敵が、目の前までやってきてこちらを見下ろす。
 よく見ればそれはいかつい鎧に巨躯、兜の間からは太い眉と濃い髭が見てとれた最初に自分と問答をした隊長格の男だった。

 槍斧(ハルバート)使いだとは、やたらと似合ってやがる。

「まったく……あそこで殺しておくべきだったな」

 苦虫を噛み潰したような声。
 その男の視線をそのまま追うと、自分が殺した躯の山。

「大暴れしてくれたものよな……さすがは悪名高き首斬り公」

「脱帽したか?」

 ニヤリ、と笑ってやる。
 残念だが、もう身体は動かない。
 弔い合戦はここまでのようだった。

 最後にと横目で、アレの亡骸を確認する。
 もしもなんらかの手を出してやがったら、怒りのぱわーで目の前のこいつくらい道連れに出来るかもしれないが。

 そこでベトは、それまでの思考が吹き飛んだ。

「あんた……なにしてんだよ?」

 既に二人以外の視線は、それに釘づけになっていた。
 誰も、なにも言わない。
 戦闘が隊長格の男によってひと段落したとたん、警備の正規兵たちもそちらに視線を奪われていた。



 死んだはずのアレが、立ち上がっていた。
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