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2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 パンをお手玉にして紙袋が立てる音を楽しみながら階段を昇り、吹き抜けに出た。
 喧騒の中から開放された寂しい空間に、以前のように安堵しようとした。

 だけど、今日は普段と様子が違っていた。

 いつも座っていた左から二番目の指定席に、既に一人の先客が座っていたのだ。

 僕は最初それを見た時、その人は身内が死んで、その葬式に行った帰りかなにかなのかと思った。

 長袖と膝丈のスカートという、上品なワンピース。
 丸く縁が取られた、フォーマルな帽子。
 防寒用ではない、薄手の手袋。
 ハイソックスに、堅めのローブーツ。
 そして小さめのハンドバッグに至るまで、その全てが厳かな黒一色に統一されている。

 それに加えて、雰囲気が冷たく、暗い。
 眉一つ動かず瞬き一つせずにじっと一点を見つめている。
 それは、見る者をぴりぴりと緊張させる。

 さらに付け加えて、髪は床に達する程の長さだった。
 ……身長は、かなり小さいように思う。
 見た感じ、多分百五十くらい。
 とにかくこの学校に似つかわしくない格好と雰囲気と髪の長さをしている。

 一瞬、その非日常に気を取られた。

 だけど次の瞬間、瞬く間に空腹を思い出した。

 ――だるい。

 正直、色々考えたりどうこうしたり、したくない気分だった。
 昼休みはただぼんやりと食事を取ろうと決めていたのだ。
 たまたま指定席に人がいたからって、どうこうしたものでもない。
 それなら他の椅子に座ればいいさ。
 そう考えて右に三つ離れた席に座り、僕はパンの袋を開け始めた。

 十五分後。

 半分放心した状態でのんびりとパンを口に運び咀嚼するを繰り返し、今日買った分の三分の二ほどを消費したところで腹も落ち着き、気持ちにも余裕が出てきた。

 そこに至ってようやく僕は、まるで思い出したかのように隣の隣の隣に座る彼女に興味が出てきた。

 誰なんだろう?

 いつもは誰も寄り付かないようなプライベートスペースに、人がいた。
 それも学内で一回も見たことがない女の子。
 何かあったのかな?

 しかも服装は全身黒で統一。
 じっと一点を見つめ、冷たく暗い雰囲気を醸し出している。
 おまけに髪が超長い。
 いやでも気になる。

 ――うん。

 最後のパンを口の中に一気に放り込み、僕はようやくあの失恋と白昼夢の影を忘れられそうな面白いことに出会えるかもという期待を込めて、出来るだけさり気なく隣の隣の隣に座る女の子に目をやった。
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