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ⅩⅦ/愛と優しさ③

2020年9月27日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikukose

本編

 直球過ぎた言い回しだった。
 普通の人間なら、その露骨さにしっぽを巻いて逃げだすところだろう。

 だけどアレはその直球さゆえに、意図を正確に理解した。

「……頼まれます」

「おぉ、そうか! 頼まれてくれるか!」

「わたしもベトに、死んでほしくないですから……」

「ありがとう! 嬢ちゃん本当にありがとう! わしゃ嬉しい――」

「でも、なんでなんですか?」

 唐突な疑問。
 いくつもの意味を含んだ問いかけ。

 それにスバルは一瞬躊躇し、

「……育ててきたからな、あのバカを」

 少し寂しそうに、少しばつ悪そうに、そして少し嬉しそうに、スバルは笑った。
 その面影をアレは、今は亡き祖母のものと重ねていた。


 がちゃ、という遠慮がちな音。
 そのあと部屋に入り、静かにドアを閉め、ごそごそと床の布団に潜る音。

 間違いなくアレが部屋に戻ってきたことを感覚だけで悟り、ベトは再び物思いに耽った。

 今日の自分は、どうかしていた。
 スバルに怒鳴る――というより誰かに怒鳴るなんて、以前のものを思い返すことすら難しい。
 効率と実地だけを旨にしてきたベトにとって、それは忌むべき行為の筈だった。

 なんなんだ、と自問する。
 どうもアレに出会ってから、自分はおかしい。

 身体ではなく、心の方が。

 シンプルに生きてきた。
 間違いはなく無駄はなく、それは最高の生き方の筈だった。

 そう自分は、信じてきた。
 もう信じてきた、という時点でその歪みを認めているようなものだった。
 他の生き方があると知ってしまった時点で、もう鑑みないではいられない類の事象だった。

 さらに追い打ちをかけるような、せんせいとプライヤとの会話。
 トドメとばかりのスバルの独白。

 ――オレにどうしろっていうんだ?
 ここまでベトは、窮まっていた。

 もう決めて、受け入れてきたことを、改めて考えろという。
 そんな話はない。

 選択肢はなかったから、他のことは頭から追い出して、それだけに努めてきて、今さらそれを俺にいうのか?

 無理だ。
 そんなもの受け入れられない。
 というのは簡単だったが、だが事実はそう簡単には済んではくれなかった。

 だからこそ、こんなに激しく感情が揺らいでいる。
 叫んでいる。
 憤っている。
 感情は遠の昔に、キチンと凍結させたはずなのに。

「……アレ・クロア」

 思わず、非常に小さな声で呟いていた。
 口の中だけで、声の形だけ成すように。

 すべてはあの子と、出会ってから始まった。
 始まってしまった。
 なにか自分ではどうしようもない運命の輪が、無理やり動き出してしまったような感覚を味わっていた。

 運命の輪は、止められない。
 だからこそ運命という。
 以前せんせいが、ベトに話した言葉だった。

 死ぬつもりだった。
 のうのうと生きるつもりはない。
 散々殺してきたのだ。
 いつかは同じように、誰かに斬られて路傍で野垂れ死のうと決めていた。

 だけどそれが、それが――

「ッッ!!」

 思い切り歯を食い縛り、ギリギリ歯軋りさせながら胸を思い切り掴んで、ぐりぐりとして、爆発しそうな想いをとどめる。

 絶対にダメだ!
 それは、思っちゃいけない。
 思う権利がない。
 思うべきどころか、そんな在り方そのものが、許されない――!

 こんなに苦しいことはない。これが生きるということなのか?

 前に戻りたい。
 戻れない。
 運命が動き出したから。
 ジレンマだ。

 どうすればいい。
 答えなどない。
 ならば自分はずっとこのまま、こうして?

 それもありえない。

 ベトはずっと、歯を食いしばり胸を抑えて、夜をやり過ごそうとした。

 だけど耳に、他の人間の鼓動が聞こえる。

 それを無視することが、出来ない。

 ――彼女も、もう先はないだろう。

 バラすべきではなかった。

 少なくとも、この傭兵部隊以外には。

 だけど彼女は、使ってしまった。

 その力を、自分がいない時に、自分以外の仲間のために。

 その皮肉な出来事が、なんだか納得できなかった。

 まるで大きな流れに、自分たちが翻弄されているようで。

 すべきことはないのか?

 来るべき時のために、こんな風にのうのうと眠っていていいのか?

「…………」

 考えても、結局いまこの場所で出来ることは、他にはなかった。

 自分はこの日々を捨てられず、彼女にもほかに居場所はなく、そして事態は変えられない。

 変わらないんじゃない、すべては変えられないんだとベトは理解した気になった。

 確信も、ないまま。

 そして明日が、やってきてしまった。
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続きはこちらへ! → 第Ⅳ章「革命 -revolt-」

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