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Ⅺ/月が世界を食べる夜①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 ベトはあのあとアレを抱えて、部屋まで連れてきた。

 そして自分のベッドに横たえたあと傍の椅子の上に自身も座り込み、あとはじっ、とアレの様子を見守り続けていた。

 こんなに誰かを見ていたことはなかった。

 ベトは基本的に、他人に対して関心が薄い方だった。他人がすることに口出しすることはないし、逆に口出しされるのを酷く嫌う。
 そして楽しくやってくれればいいが、自分は巻き込まないで欲しいと思うタイプだった。
 だから他人の動向など、基本それほど気にはならなかった。
 もちろん戦闘の作戦行動中は話が別になるが。

 なんなんだ、とベトはアレを見てずっと考えていた。

 行動が、まったく読めない。

 話すら、うまく疎通できない。

 結果的に、理解に苦しむ。

 だけど、気持ちは伝わってきた。

 そこに駆け引きや、損得といった感情が、無い、に等しい。
 もちろん断定はできないが。

 それでなぜ生きていけるのか、ベトには不思議で仕方がなかった。

 いや事実としてアレは今まで自身が生まれた家で祖母に守られ、野盗に襲われた時もたまたま自分たちがちょうど駆けつけたため、難を凌いでいた。

 いつも、誰かしらに守られてきた。

 ただ、偶然に頼り切ってきた。

 幸運に、恵まれてきた。

 だけど事実として、この娘は生きてきた。

 その芯のこもった言葉に、みな心打たれている。

 この自分をですら、心乱されている。

「…………」

 わからない。
 そんな生き方を、ベトは知らない。
 そんな在り方を、ベトは知らない。
 でも自分がそれに心奪われているのも、事実だった。

 理解したい。
 そう思っていた。

 損得抜きで、純粋に。
 そう思ったのは、初めてのことだった。

 なぜか?
 それすら、よくわからなかった。
 わからないことだらけで、考え過ぎて、とりあえずその対象であるアレをベトはじっと見つめていた。

 こうして見ると、ただの娘だ。
 それはただの、信じられいほど美しい娘だった。
 なんの力もない、どこでにもいるで、どこにも見当たらない――

「……ん、んん」


 アレが、目を覚ました。目を擦り、上半身を起こす。
 以前と似たようなシチュエーションに、なぜかベトは笑顔を作っていた。
 怖いというか、笑って欲しいというか、なんというかという心境で。

「おう、起きたな」

 アレは?といった感じの寝ぼけ眼でこちらを向き、

「…………」

 無言。

 それにベトは、言葉を失う。

 無言というものは、意外とプレッシャーがあるものだと思った。
 特にアレの場合、心情が読みにくい。
 皮肉な話だった。

 今まで楽しい時は笑い悲しい時は喚き怒った時は暴れる粗野な男どもしか相手にせず楽してきたことへの、しっぺ返しのようだった。

 しかも、長い。

「……そ、そういや腹、減ってねーか?」
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