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ⅩⅥ/育ての親③

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「なぁ、少しでいいから考えてみないか? 本当にお前、このままでいいのか? 傭兵としてひとを殺して、その糧で生きていく。そんな生き方に、お前は本当に満足してるのか?」

「……おいおいスバル、冗談はたいがいにしろよ? いいも糞も、それ以外俺にどんな生き方が出来るってんだよ? あんたまでアレみたいな夢みたいなこと、言ってんじゃねぇよ?」

 最後のつもりだった。
 ここが限度のつもりだった。

「だがベト……」

 スバルは、気づけなかった。
 それに遂に、ベトは爆発した。

「――ッざっけんな!!」

 振り返りスバルの手を弾き飛ばし、肩をいからせて叫んだ。
 それにスバルは突き飛ばされ、抵抗も出来ず尻もちをつく。

 それを見下ろしベトは息を荒らくし目を血走らせ、

「そんなつもりじゃなかった? 最初は止めたぁ? 今のままでいいのか、だとォ!? っざけんな! 他になにがある? 殺して、殺して、生きていかなきゃ、生きていけねぇ! それが俺だ。力がないなら、なにされても仕方がない。俺にそう教えたのは、他ならねぇあんただろうが!!」

 激昂するつもりはなかった。
 だけど言葉は、口から迸っていた。

 感情に身を委ねるなんて、自分らしくない。
 そんなことを心のどこかで、なんとなく感じていた。

 スバルは育てた息子の言葉に、まるで捨てられた子犬のような顔をしていた。
 それがますます、気に食わなかった。
 そんなスバルが気に食わないというより、そんな顔をさせている自分がというか、そんな状況になっていることそのものがというか――

「ッ! くそが! ンだってんだ、よッ!!」

 思い切り叫び、ガン、と扉を蹴開けて、ベトは部屋をあとにした。
 それをスバルは、ただただ見送っていた。


 その夜、アレはスバルの部屋に呼ばれた。
 アレはそのことを告げて、ベトの部屋を出て行った。
 そのことについてベトは、一言もいわなかった。

 スバルの部屋の前で、コン、コン、とノックをする。

「……嬢ちゃんかい?」

「はい」

「入ってくれや」

 言葉に導かれるように、扉を開く。
 片手で杖を握り、片手でドアを押し。

 スバルの部屋は、ベトの部屋よりふた回りは大きかった。
 床にはカーペットも敷いてあるし、窓際にあるベッドのほかに壁の一方に樫の机、もう一方にはいくつもの本棚が見てとれた。

 その机に、スバルはいた。

「おぉ、ようきたなあ。とりあえず、そこのベッドにでも座ってくれ」

 いわれ、ベトは黙って頷き、トコトコと歩きベッドの上にちょこん、と正座した。
 そのまましばらく、微動だにしない。
 まるで人形のようにすら見える。

 それを見てスバルは、

「……楽にしていいぞ?」

「はい」

「……それが楽か?」

「はい」

「……ふぅ」

 その頑固さに折れたのか、スバルは行っていた書類作業の手を止め、椅子を回してアレの方を向いた。

 アレは微動だにしない。
 それこそ人形のようだと、スバルは思った。
 銀髪は、それこそ少女によく似合っていた。

「お嬢は、マテロフとはどうだい?」

「マテロフさんはいい女(ひと)です」

「いいひと……いいひとかァ。それはどういう意味だい?」

「性格がよくて人がよくて素敵な女性です」

「性格……いいかァ? まぁ見てくれはいいが――」

「いいです」

 断言する。
 それにスバルは、少し驚く。

 みんなの前ではあれだが、対一でこれだけハッキリものをいうところを見るのは初めてだった。
 というかよく考えると、対一で話すところを見るというか、話すのは初めてだったから、当然だったが。
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