第23話「大学③」
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本編
「そもそも聞いた話によるとさ、美香ちゃんには既に彼氏がいたって話だぜ」
「え、それって本当ぉ? だとしたら、あの告白自体意味なかったのかもね」
それを聞いて、尚更僕は肩を落とした。
やっぱ、彼氏、いたんだ。
じゃああの告白前の態度も、そのあとの変化も納得できる、か……。
僕の大学生活は隼人(はやと)や切間(きりま)と授業を受けたり、休み時間とか一緒にくっちゃべったりしながら過ごして、昼休みの昼食だけは別れて食べる、という感じのものだ。
隼人は写真部の、切間も遊び系のサークルにそれぞれ所属しているので、昼休みと放課後はそちらに顔を出すようにしている。
切間が、僕が肩を落としたのをまたもめざとく見つけ、
「普通さ、誰か好きになる前にそういう大事な情報は調べておけよなー」
隼人が、それに朗らかな笑顔を見せながら、
「でも、人は理屈で好きになるものじゃないから難しいと思うよ~」
その意見に僕は無言で頷く。そう、恋なんて突然落ちてしまうものだ。
事前にとか、そんなん出来るのはお前くらいのものだろう。
別に僕たちは示し合わせて科目を履修しているわけではないので、いつも三人で授業を受けれる訳ではない。
だけど、たまにはこういうこともある。
そういう時はロクに授業に身が入らない。
どうしてもあっちこっちに話が盛り上がってしまうからだ。
今も筑島先生の存在をすっかり忘れてしまっていて、声を潜めてさえいなかった。
切間は頬杖をつき、
「……大体さぁ。進也は趣味が空手に寄りすぎなんだよ。もっとこう……なんていうか色んなことに手ぇ出せよ」
「例えば?」
意外な切り口の言葉に興味を持ち、僕はそう尋ねてみた。
「ナンパとかクラブとか」
即座に飛んできたあまりにも切間らしい言葉に、僕は露骨に顔をしかめた。
「いやだ。僕は純愛主義なんだ」
切間は口をぽかん、と開けて頬を引くつかせ、あからさまに呆れた、という顔を作った。
「お前……現実見ろ。それで彼女いない暦二十年だろが」
ぽん、と肩に手を乗せる。
「ぐっ!?」
自分の顔が苦虫を噛み潰したようにしかめられるのがわかる。
彼女いない暦、二十年――
言葉にすると、その重みに押し潰される心地になる。
だから僕は決して口にしない。
ああ、してたまるかよ。
だから勝手に口にした切間、お前の口を刻んでしまいたい。
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