第95話「21点マッチ」

2020年8月2日

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 そこからのビーチバレーも熾烈を極めた。

 内容は元々背が高く力があり、運動神経もいい神龍と、驚異的なジャンプ力と体のバネに加えて、動きの俊敏さをも併せ持つ彼女との渾身のアタックと必死のレシーブの応酬となる。
 自然僕と隼人はサーブ係兼、レシーブされた球を必死になってトスして上げるためだけにそこにいるような立ち位置となった。

 何点マッチか決めてなかったので、途中で僕が二十点マッチを提案したが、神龍の「公式は二十一点だ」の主張により二十一点マッチということになり、そして今――

 神龍の手から放たれた爆撃機のようなアタックが僕と彼女の間のスペースに炸裂し、十六対二十で神龍サイドがマッチポイントを迎えた。
 神龍が
「おぉしっ!」
 とガッツポーズを決め、彼女が苦しげな表情を浮かべる。

 負けている原因は、彼女の消耗にあった。

 スタミナもそうだが、何より問題はその両腕。
 真っ白で透き通り、まるで発光体のようだったそれは神龍の強烈なアタックを受け続け、赤く腫れ上がってしまっていた。
 いや、もはや赤紫色、といった方が近いかもしれない。
 表面だけじゃなく、内出血も起こしているようだった。

 そしてその痛みのせいだろう、今までのような電撃的な反射速度が、動く一瞬躊躇われるような間が出き、そこを突かれて神龍サイドのリードを許していた。

 振り返ると、前傾姿勢で構えている彼女の肩が、上下に激しく揺れていた。
 ただでさえ、今日も物凄い暑さだ。
 全身から滝のように噴き出している汗が、日差しを浴びてキラキラと輝いている。


 僕も額の汗を手の甲で拭う。
 そしてもう一度その痛々しい腕を視界に入れて、

 ……しょうがないな。

「隼人ー。ちょっと、タイム」

 サーブを打とうとしている隼人に合図してから、彼女に駆け寄る。
 彼女は不思議そうな視線を僕に向けている。

 僕は手を口に添えて、それを彼女の耳に寄せて、

「次のアタックは、僕に打たせてくれない?」

「?」

 よくわからない、という顔をする彼女に僕は続ける。

「ちょっと考えがあるんだ。……いい?」

 やっぱりよくわからなそうな顔をしていたが、なんとなく、という感じで彼女は首を縦に振った。

「いいかー?」

 神龍が叫ぶ。

「お――っ、いいぞー!」
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