ゾンビランドサガ 残酷で理不尽でも負けない彼女達の願いが奇跡を起こす!
強烈ネタなタイトルと相反するクオリティ
このアニメを知ったのは友達の勧めだった。
正直、名前のインパクトが強烈すぎた。
ぶっちゃけ佐賀県がゾンビだらけのディズニーみたいなゾンビのテーマパークになったのかと想像していた。
何をどう考えてもネタ。
まぁネタに走っても良い時は見てもいいかなぁぐらいの感じだった。
そしてたまた選んで観ていた作品が妙に生真面目でその割に肩透かしな作品ばかりだった時、ちょうどそんな気分になって、思い出して、見てみる気になった。
まさかだった。
この作品、長さは1クールなのだが、観終わったその直後リピートし、結果3週した。
今までいろんなアニメや漫画やらを見てきたけれど、いきなりノンストップで3週したアニメなんて、かつて1つぐらいしかすぐには思い出せない。
それぐらいすごかった、それぐらい面白かった、それぐらい飽きさせなかった、それぐらい感動させられた。
そう、このゾンビランドサガ、まさかのネタアニメではなく、基本的にはギャグの、感動成長アニメだった。
ゾンビモノ、アイドルモノを越えた輝き
正直私はアイドル系の物語に対して若干の苦手意識がある。
確かに面白いものもあるが、中にはアイドルがかわいいと言うことにかまけて、ストーリー性が多少おざなりにされているなぁと感じるものもあったりしたからだ。
しかし、このアニメに関してはそういった事は全く何の問題もなかった。
開始直後にヒロインがはねられて、起きたらゾンビだらけの屋敷で、逃げたら鏡で自分がゾンビだと気づかされて、警官に胸を撃ち抜かれる。
いやいやいやいやいやいやいやいやいきなり詰め過ぎだろいきなり(笑
そして出てきた謎のプロデューサーに、お前はゾンビだ、ゾンビはゾンビ映画のアレな感じだ、俺が立派なアイドルにしてやる。
もうツッコミどころしかないわ!
しかもその夜のうちにライブデビュー、まさかのデスメタルで、首をへし折ってのヘッドバンキング。
つまりは、そういうこと。
まったりしたり、日常だったり、次の展開への繋ぎの話が、一切ない。
常に全力疾走、プロデューサーの巽幸太郎はほんとにひどいし、声優さんは全身全霊で演じているし、それに対するゾンビアイドル・フランシュシュの5人の全身全霊の活躍は本当に目を見張る。
何度画面の前で釘付けになったことか。
大体が何の練習もしてない状態でのライブでデスメタルだし、次はおじいちゃんおばあちゃんの前でラップだし、さらにゲリラライブでは転んで歌が止まったところでの頑なに協力を拒んでいた平成と昭和の伝説アイドルが手を差し伸べるという胸熱展開。
そして1番のお気に入りである第5話。
ろこつなまでのステマというかプロモーションであるドライブイン鳥の店長さんの何の訓練も受けていない声の演技も素敵だが、ハイライトは後半戦。
いきなりいつものホワイトボードに、エッフェル塔とか国旗とかパリっぽいのがやたらと描かれていて、そして現れたプロデューサーの巽幸太郎は画家っぽい帽子とか被ってフランスパンとか持って、メルシィ~と登場。
そしてかなりきつい性格である平成アイドルである水野愛の耳元で、ボンジュール、サガジェ~ンヌ?と意味不明な言葉をつぶやく。
それに対しても水野愛の返しが奇跡的すぎる!
「あぁ?」
と絶対にアイドルがしてはいけない声を出して、さらにめげずに巽幸太郎がやたらと良い発音で
「サガジェヘェエンヌ?」
とささやいたのを受けて、今度はチッ! と舌打ちかまして、
「はいはい、さがじぇんぬさがじぇんぬ」
とほんとめんどくせぇなぁといった感じで相手に合わせる。
それにすかさず巽幸太郎が
「お前のどこがサガジェンヌじゃーい!」
とあまりにも理不尽な言葉とともに、フランスパンで殴りつけるという暴挙に出たのも束の間、次の瞬間にはそのフランスパンを奪い取り、逃げtる巽幸太郎の襟首をつかまえて、そしてそのフランスパンが真っ二つになるほどの強烈な一撃のお返し!
そして水野愛は何なのよーと至極真っ当なツッコミをした後に、巽幸太郎は見えない甲子園の砂をかき集め、そしてポツリとどこからしれないツッコミ、
「あ、砂」
くそほど笑った、息ができなかった、しかもそんな水野愛がなんかもう1周回ってめちゃくちゃ可愛く思えた、俺も舌打ちしてほしいとか、フランスパンでぶん殴られたいとか今までにない性癖が生まれた瞬間だった、本当にこれは中毒だ(笑
その後星川リリィが、巽幸太郎がプロモーションのために作ったTシャツを見て一言、
「なにそのゴミみたいにダサいTシャツ」
マジで第5話は個人的にアニメ史に残る神回だったと思う(笑
名言連発!彼女たちの生き様!!
そして6,7話は昭和アイドル・平成アイドル2人の、その違いによる葛藤、時代を乗り越えて、トラウマを乗り越えて、そして2人で立ち向かった末の、奇跡みたいな雨の中での雷を受けての、文字通り輝くライブ。
名言回だった。
チェキ会をやりたくないという昭和から蘇ったアイドル紺野純子に巽幸太郎が語る。
「ならやらなければいい。
無理に迎合する必要はない、それが私のキャラだと言ってやれ。
お前らはゾンビだがロボットじゃない。
この時代に……昭和アイドルの矜持を持って活動するその姿を、メンバーやファン達に見せてやれ!
水野愛は野外ステージの落雷で死んだ、不安と戦っているのはお前だけじゃない!
アイドルならばステージに立て、紺野純子!!」
そして出立するワゴンに轢かれながらも、紺野純子は立ち上がる。。
「私は……昭和のアイドル、紺野純子です!」
多くは語るまい、本当に胸打たれた。
さらに星川リリィの、父親との過去話。
全体的に素晴らしいクオリティーだったが、特にアイドル時代に、2人でテレビを見ているときに、星川リリィが目の下にクマがある疲れ切った顔で、またお出かけしたい、近くの公園に行きたいと言う儚い願いに対して、次のドラマ撮影が終わったらと言う至極真っ当ではあるが駆け抜けている渦中にありがちな落とし穴にハマった出来事をリリィが死んだ後に一人父親が思い返して、それが取り返しのつかないことだと嘆き、悲しみ、泣きながらテレビを投げつけるシーン――
そして星川リリィの握手会に行って、迷惑をかけたからもう行かないなどと言ってしまうところなどは、涙なしには見られない。
結構そこまでシリアスなシーンが続いたから、ここで挟む二階堂サキの男らしいチキンレースとか、親友とのやり取りなどで、ほっと一息つくことができる。
そして終盤の、ヒロインである源さくらの、自らの生い立ちを思い出し、あまりにも不安で、持っていない自分を嘆き、絶望し、そこから立ち直っていくところが本当に胸を打つ展開の連続。
そんな姿を、きっと誰も笑えないんじゃないかと思う。
がんばってもがんばっても努力しても努力しても報われなくてどうしようもなくてそれどころか悪くなってそんなことしてないうまくやってる人がさらにうまいことやって全部持っていって高笑いしてるような、そんな世の中って思ってしまうことがいくらでもある世の中だと思う。
だからこそ、さくらのことを笑えなくて、しかもそれで人に迷惑をかけるのが耐えられなくて、そんな彼女を見てると本当に胸が痛くなる。
頑張り屋で頑張り屋で、頑張って頑張って、それでも駄目だったから、駄目だったから、死んでしまったから、これ以上はもう…と言う気持ち。
そしてツイート数17万越えの伝説最終回へ…
それで全部突っぱねて、拒絶して、そうしようと思っていたところで、プロデューサーの巽幸太郎雄叫びが胸に響く。
「俺が持っとるんじゃ――――い!!
いくらお前が持ってなかろうが、俺が持ってりゃええじゃい!
何かこうでっかい、すごい何か、でっかくて凄いのを、俺は持っとるんじゃい!
いいか、さくら!
だから俺は、お前を、絶対に見捨ててやらんッ!!」
そしてクライマックス、500人のライブ当日、会場には何十年に1度の大雪が降り、それでも集まってくれた観客のためにさくrたちは踊るのだが、雪の余りの重みのために屋根が崩落、機材が倒れ、音楽は途絶え、続行不可能となってしまう。
さくらはその中で絶望し、やっぱり…と諦めかけた時に、巽幸太郎が手拍子を始める。
誰もがあまりの状況に絶句し、続行不可だと感じている中で、ただただ巽幸太郎たちが手拍子を続ける。
――想いに答えろ、さくら。
お前の真の力は、追い詰められた時にこそ、覚醒する。
それは大きな波となり、桜以外のメンバーが立ち上がり、叫ぶように歌い、ポーズを決めて、さくらの歌声を待つ。
その時の歌詞が象徴的だ。
ヨミガエレ
天国も、損得も、吹き飛ばせ
ボロボロのまま前を向く、今だけがリアル
限界もトラウマも乗り越えて
首の皮一枚、繋いだ希望に
全てを賭けて行こう
ハイアガレ
何度でも、何度でも、立ち上がれ
諦めなければ終わりは始まりへ変わる
残酷で、理不尽でもっ、敗っけないっでー!
立ち止まった日々に、笑顔で手を振り
新しい夢を見よう
ヨミガエレ
ヨミガエレ
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
観客の雄たけびがあがる。
それに気づけば、私も合わせていた。
涙で画面が見えなかった、3週したが、3周ともほとばしる涙が止められなかった、なんだったらこの曲だけで泣ける。
このアニメは放送当時、最終回の時にTwitterで17万以上もの関連ツイートを記録し、あらゆるアンケート、アニメ総選挙で一位を叩きだし、その名の通りのムーブメントを巻き起こし、名だたるアニメプロデューサーが敗北を認めたほどのアニメだと言う。
本当に、それこそこのアニメのキャッチコピー、
「私たち、生きたい!」
その通りの叫びが想いが、込められている。
笑って笑って感動して、そして何度も何度も何度も何度も泣ける、一緒に叫びたくなる、そんな作品だ。
ぜひゾンビランドサガと言うタイトルに騙されずに、選り好みせずに、食わず嫌いせずに、挑んでほしい。
きっとそこには、唯一無二の味があるはずだから。
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