”最恐巨神兵” セーム・シュルト ~K-1史上最強の四人
K-1史上最強の男
問答無用で浮かぶのがまさに天を見上げるかのような巨体と、確かに裏打ちされた空手の技術によって無双状態とも言える、3連覇を達成した、この男を置いて他にいないだろう。
セーム・シュルト、もしくはセミー・シュルト、オランダ語ではではセム・スヒルトとは、元々が極真、芦原会館を経て、大道塾という特殊な空手団体に所属していた。
道着を着て戦うのだが、スーパーセーブと呼ばれるほとんどヘルメットのようなヘッドギアをかぶり、手にサポーターをつけて、その状態で投げてよし、極めてよし、もちろん殴るけるもありという、そういった特殊ルールの団体だ。
世界的にも、歴史的な格闘技の流れを見渡してみても、これだけ特殊なルールを掲げている団体は他にない。
そこで無敵の王者となって、続いて挑戦したのが総合格闘技界の各団体だった。
総合格闘技界にて最強王者たちに連敗
大道塾主催の北斗旗と同時進行で出場していたパンクラスに、世界的にも最大手といわれるUFC、そして日本発祥のPRIDE。
大道塾自体が総合格闘技に準ずるようなルールを敷いているので、それは当然と言えば当然だったのかもしれない。
しかしそこで、セーム・シュルトは勝ち星を挙げることができなかった。
そこでPRIDE三強とも呼ばれた、"千の技を持つ柔術マジシャン"、"南米の太陽"アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、"氷の拳"、"60億分の1の男"でありコマンドサンボのチャンピオンでもあるエメリヤーエンコ・ヒョードルに、グラウンドに持ち込まれ、その巨体を活かすことなく、敗北に追い込まれている。
その後セーム・シュルトは戦場をK-1に移した。
そこで我々は、恐ろしいものを見せつけられた。
突き刺す前蹴りと岩石のジャブ
セーム・シュルトはその巨体ゆえに、巨人症のきらいがある。
動きは機敏ではなく、どちらかと言えば鈍重な趣きを含んでいる。
しかし、空手時代に培った広い間合い、そして確かな技術を有していた。
上背がある相手には、飛び込んで、間合いを潰して、かき回してしまえば何もできないと言う定跡があった。
しかしセーム・シュルトには、それが通じなかった。
セーム・シュルトとの生命線とも言えるものが、左のジャブと、そして左の前蹴りだった。
前蹴りというものは、足首を伸ばして、指だけを返したところに現れる厚みのある肉である、中足と呼ばれるところを、膝を十分に曲げてスナップを利かせて蹴り込む必要がある。
これがまたかなり難しく、慣れていない人間では返した指を相手の肘などに打ち付けてしまい、突き指や、爪が剥がれたり、ひどい場合だと骨折などしてしまう。
だから必然的に、押すような形に逃げたり、廻し蹴り中心になりがちだ。
しかしセーム・シュルトは、あの巨体で実に見事な前蹴りを使いこなす。
そしてジャブがかなり五月蠅く、連打でしつこく打ち込み、間合いやタイミングも研ぎ澄まされている。
リーチが長く、対戦相手の多くが語っているように骨が非常に硬いために、ジャブだけで効かされてしまう。
そしてガードが上がったところに、槍で突き刺されるような前蹴りを腹に打ち込まれて、ノックアウトされる選手が続出した。
K-1唯一無二の三連覇王者
さらに空手家らしく、下段回し蹴りも強烈無比。
ローキックをこれだけ的確に使う上背のある選手と言うのも、他にいないのではないか?
さらには時折見せる上段回し蹴りは必殺の破壊力を秘め、あの無敵の打たれ強さを誇るマークハントを決勝で葬り去った後ろ蹴りにと、空手のありとあらゆる技術が非常に高いレベルでまとめられている。
そして当然のことながら膝蹴りは、同じく長身のグラウベ・フェイトーザをK-1グランプリ2005の決勝戦にて、完全にノックアウトせしめた。
正直言ってほとんど穴という穴が見当たらないレベルだ。
あえて弱点といえる弱点を挙げるとすれば、回転力がある選手に距離を詰められるのは多少不得手にしているところがあるかもしれない、さすがにその辺はリーチがあるので仕方ないともいえる。
これだけの攻撃のバリエーションと、破壊力を秘めているにもかかわらず、防御面に関しても非常にレベルが高い。
そのうえ打たれ強さも相当なものがあり、対戦した相手はどう攻略したらよいか頭を悩ませているうちに頭、腹を効かされて倒されるというパターンがほとんどだ。
まさに最恐巨神兵、その二つ名に相応しい圧倒的な実力者だった。
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