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第21話「大学①」

2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 現在壇上のホワイトボードは白いスクリーンに覆われており、そこにはこの時間の講義を担当している筑島(つくしま)教授お手製のパワーポイントがプロジェクターを使って映し出されている。

 筑島先生――ちなみにうちの大学では教授のことは教授や教諭ではなく、先生と呼ぶ傾向がある。

 さっき教授といったのはある意味揶揄だ――は要所要所を手に持った指し棒で示しながら、マイクで説明をして授業を進めて行く。
 放射状に広がった段々畑式に高くなる大学ならではの、大教室。
 後ろから二番目の席に座っているため全体がよく見える。

 見回すと、席は空いているところが多い。
 ふと高校までの、小さい机と椅子がぎっしりと敷き詰められた狭苦しく堅苦しい教室を思い返し、それと比べた時のあまりの広さと開放的な配置に爽快感さえ感じた。
 しかし残念なことにこの講義が昼休み前という時間配置で、しかも終了五分前ときては集中力が持続しているやつを探す方が大変だった。
 注意されるほど派手に騒いでないやつがいないのが逆に不思議なくらいだ。

 この教授と講義はそれなりに人気があり、事実中身もある。
 筑島先生は経営学では有名な人で、何冊も本を書いておりテレビにも出ることもあるという。
 ただその著書を買わないとレポートが書けないというは正直横暴だと思わないでもない。

 打ち疲れたノートパソコンのキーボートから指を離し、ふと背後の窓の外を見ると、桜の花が散り出していた。
 ゆったりと舞う桃色の花弁に、春ももう終わりかなぁ……などと干渉に耽ったことを思ってしまう。

 教室の中はよくきいたエアコンにより適温適湿に保たれており、窓の外に映し出される春の陽気も相まって、余計にけだるさが醸し出される。
 しかしその弛緩した時間は同時に余計なことを思い出す心の隙を作ってしまうため、今の僕にとってはあまり歓迎できることではなかった。
 なんかこう、ぴりっとした緊張感とか没頭できる集中力の中に身をおいておいた方がマシというか――

「……はあ~」

 考えていると余計に気が滅入り、僕は教授に気づかれないように机の陰に俯いた姿勢で、溜め息をついた。
 それに二人の人物が目ざとく気がつく。

「ん? なんだぁ、進也。不景気にため息なんかついてよぉ」

 後ろの席に座っている切間(きりま)が顔を出し、

「ひょっとして、まだ落ち込んでるの?」

 左の席に座っている隼人(はやと)が心配そうに表情を歪める。

 その二人に力なく笑顔を作って手を振り、何でもないとアピールする。
 誤魔化すように携帯を取り出し、ついでに日付を確認した。

 今日の日付はあの玉砕から数えて三ヶ月あまりたった、五月十四日、水曜日。
 僕も四月を過ぎて、大学二年生から大学三年生になっていた。

 そして僕は、二ヶ月の夏休みを終えて科目の履修期間を過ぎてさらに一ヶ月がたった今でも、美香ちゃんに振られた恋の痛手を癒しきれずにいた。
 三連敗目だったし、今までで一番うまくいきそうだったし、結局あの告白以来すっかり疎遠になってしまったこともきつかった。
 振られた分際(ぶんざい)だっていうのに、それにも関わらず外のゼミの男とは楽しそうに喋ってるのを見るのは辛かった。

 それを紛らわすようにいつも以上に空手に没頭したり、悪友の切間(きりま)と騒いだり、普段はそうでもないのに、そのことを忘れられるような面白いことはないか探すように外をぶらついたりしながら毎日を過ごしていた。
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