凄く、良いやつ

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「え。い、いいの?」

 にっこりと笑顔で頷く。
 ……察するに、どうやらそのパンが美味しくて笑ってたようだった。

「あ、ありがとう」

 僕が受け取ると、彼女は更に嬉しそうな顔をした。
 こんな至極自然で当たり障りないやり取りが出来るようになったことに、僕はやっぱり顔がにやけるのを止められなかった。
 照れ隠しに一口かじったパンはからは味がしなかった。

 そこまで経ってから僕は心の中で仕切りなおすように咳払いをして、切り出す。

「――実はね。今日は、友達と一緒なんだ」

 彼女の表情が一瞬にして強張る。
 その反応にこちらも緊張したが、それでも出来るだけ平静を装い、

「凄く、良いやつだからさ。昼食、一緒にしてもいいかな、と思って」

 彼女は少しの間考えるように俯いていたが、やがて顔を上げて僕の顔を見上げた。

 視線が絡む。
 彼女の瞳は黒目がちであどけなくて、いつまでも見ていたいとか関係ないことを考えてるうちに多少不安気に、こくり、と頷いた。

 その反応にようやく僕もほっ、と胸を撫で下ろしてから、後ろでずーっとニコニコして待機してた隼人を親指で差す。

「こいつの名前は、鏡水(かがみ)隼人、二十歳。現在写真部、部長。彼女、なし」

 皮肉を混じえた紹介にも隼人はまったく笑顔を崩さない。
 ちょっぴり恐い……。


 次に隼人に向かって、

「この娘(こ)は暗戸夜月……そういえば歳、ていうか、学年は何年なの?」

 彼女はバッグから携帯を取り出して、おもむろに何かを熱心に打ち出して――ポケットの携帯が震えた。
 取り出す。
 案の定、彼女からのメールだ。
 見る。

『一年』

「……と、まぁ。こういう照れ屋やな娘なんだ。よろしくな」

 僕がフォローを入れつつ紹介する。

「うん、よろしくね~」

 相変わらず動じないやつだった。
 彼女も再び何かを打ってから、隼人の方を見た。

 携帯が震える。

『よろしく』

 この二人、たぶん気が合うんじゃないかという予感がした。

 僕がいつものように彼女の右隣に座り、その更に右に隼人を座らせて、僕が購買部で買っておいたインドカレーパンの袋を開けて頬張り、隼人はいつものように自分で作ったであろう弁当箱を開けて厚焼き玉子と鯵のフライに箸をつけたところで一旦止めて、声を掛けた。

「よづっちゃんて、何かサークルには入ってるの?」

 よ、よづっちゃんかぁ……。
 いきなり作られたとんでもない呼び名に呆れていると、僕の携帯が震えた。

『入ってない』

 隼人にも見せる。
 再び笑顔を作り、

「あ、そうなんだ。ぼくはね、写真部に入ってるんだ。しんやも一応部員何だけどね、ほとんど幽霊部員で。困ったもんだよ」
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