第22話「大学②」
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本編
考えていると余計に気が滅入り、僕は教授に気づかれないように机の陰に俯いた姿勢で、溜め息をついた。
それに二人の人物が目ざとく気がつく。
「ん? なんだぁ、進也。不景気にため息なんかついてよぉ」
後ろの席に座っている切間(きりま)が顔を出し、
「ひょっとして、まだ落ち込んでるの?」
左の席に座っている隼人(はやと)が心配そうに表情を歪める。
その二人に力なく笑顔を作って手を振り、何でもないとアピールする。
誤魔化すように携帯を取り出し、ついでに日付を確認した。
今日の日付はあの玉砕から数えて三ヶ月あまりたった、五月十四日、水曜日。
僕も四月を過ぎて、大学二年生から大学三年生になっていた。
そして僕は、二ヶ月の夏休みを終えて科目の履修期間を過ぎてさらに一ヶ月がたった今でも、美香ちゃんに振られた恋の痛手を癒しきれずにいた。
三連敗目だったし、今までで一番うまくいきそうだったし、結局あの告白以来すっかり疎遠になってしまったこともきつかった。
振られた分際(ぶんざい)だっていうのに、それにも関わらず外のゼミの男とは楽しそうに喋ってるのを見るのは辛かった。
それを紛らわすようにいつも以上に空手に没頭したり、悪友の切間(きりま)と騒いだり、普段はそうでもないのに、そのことを忘れられるような面白いことはないか探すように外をぶらついたりしながら毎日を過ごしていた。
――それと、他にもう一つ。
あの振られた日、道場の外で見かけたあの人影は一体何だったのか……
頬杖をついて考えていると、後ろから呆れるような声が上がった。
「――ったく女々しいなぁ、進也は。んな落ち込んでる暇があんなら、とっとと次の恋でも見つけろよ。男なんて動いてナンボだぜ?」
その声に僕は、はいはいそうですね、といった感じの適当な相槌を返す。
現在僕には大学に、三人の仲の良い友達がいる。
一人目がこの、さっきからこなれた口調で話していて、同じゼミに所属している、通称『渋谷系大学生』切間敦(きりま あつし)だ。
体は痩せ形で、言動は軽く、常にくねくねヘラヘラしている印象がある。
耳にはピアス、胸にはネックレス、腕にはブレスレット、指にはリングが光り、いつも流行りの最先端の格好をしているが、なんといっても目を引くのは肩まで届く鮮やかなプラチナブロンド。
半端な脱色ではなく、どちらかというと白髪に近いほど透明感があって光輝いており、どこにいてもとにかく目立つ。
口ぐせは『マジだって!』
「まぁまぁ。しんやもそれだけ本気で好きだったってことなんだからさ」
そしてこの、さっきからおっとりした喋り方をしてるのが、僕が名前だけ貸している写真部部長の、通称『癒し系少年』――いや、少年じゃないけどね――鏡水隼人(かがみ はやと)だ。
僕たち四人の中で一番背が低く、髪は俗にいう坊っちゃん刈り。
服は特にこだわりはないようだけど、あえて言うなら淡い色のシャツ系が多い。
性格はおっとりとしたマイペース型で、僕を始め、他の友達二人も未だに掴みきれない所がある。
基本イメージとしては何があってもニコニコしてるやつ、といった所か。
あと、時折語尾が間延びする
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