あの日のその後⑥

2019年11月17日

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 両手をポケットに突っ込んで歩き慣れた道を歩く。

 コンクリートで舗装された車道と歩道と電柱と電線、そしてそのさらに両脇には見渡すばかりの田んぼが広がっていた。
 もっと向こうには山も見える。
 あと五分も歩くと民家も見え始めるが、それにしたって赤茶色に変色した昔ながらの木造建築一戸建てだらけだ。
 今までの鉄筋コンクリートとかマンション、デパートなどの都会的な町並みがまるで夢の中の出来事のように思えなくもない。

 変な街。

 両極端な主義が、お互いギリギリの線で妥協した末の形だと思う。
 中途半端な位置にいるものだから、開発を望む中央と若者と、現状維持を望む土人と年寄りがこうしてそれぞれの暮らしやすい環境を作った。
 変な街、極端な街、歪な街。

 でも、キライじゃない。

 昔からここで育った。田んぼの中を走り、川に飛び込み、ゲームセンターに行き、ボーリングをした。
 好きな時に好きな環境を選べたこの土地を、僕はキライじゃなかった。
 見慣れた風景にも感慨にも飽きて、僕はさっきの記憶の続きを思い返すことにした。

 その後。

 無事に退院し小学校に復帰した僕は、だけど友達との――というより、人との付き合い方がどうにもわからなくなってしまっていた。
 事件によるショックも抜け切れてなかったのだろう。
 前と同じようにやろうとしたのだけど、そのたび沙那を守れなかったことが、自分の無力さが、選んでしまった安易な力が、僕に負い目という形の枷となって、自然な人間関係を築くことを阻んだ。





 当たり前に笑顔を作れなくなった。

 当たり前に言葉を交わせなくなった。

 当たり前に人を信じられなくなった。

 当たり前に自分を信じられなくなった。

 ――苦笑が浮かんだ。
 今考えると、あの頃の僕は酷かった。
 いちいち相手の言うことに戸惑うのだ。

 あ、とか、う、とか、え、あ……、とか。

 そりゃ男友達は白けるし、女の子は引くよな。
 先生もそんないつも苦笑いしてる子供、どうしたらいいかわからないだろうし。

 そんな僕を支えてくれたのは、やっぱり家族だった。
 お母さんは前以上に僕に気を回して美味しい料理や話の相談に乗ってくれたし、おとうさんに至っては暑苦しいくらいに話しかけてきて、引きもりがちな僕をあちこち連れ回し、笑顔を見せてくれた。
 沙那すら。あの、肩を切り裂かれた沙那ですら、僕には気を遣ってくれた。
 友達にからかわれたり笑われて部屋の中にいると、そっと襖を開けて「……おにいちゃん。だいじょうぶ?」と言って隣に座って僕を安心させてくれたのだ。
 そうして小学校を卒業し、中学校も卒業してそれまでのメンバーと別離した。

 そして高校に入った。

 変わるチャンスだった。

 いつまでも自分だけ傷ついたフリをしているわけにはいかなかった。

 いつまでも負い目に潰されているわけにはいかなかった。

 必死だった。
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