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Ⅵ/ありふれた傭兵⑤

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 どうしようもない世界。

 その言葉は、ベトの胸に突き刺さるようだった。

 わからない、理解できない、そんなものは知らない。

 ベトにとって世界とは、ただそう在るものだった。
 力がなければ、どうされても文句が言えない。
 それは仕方がないことだった。
 だから傭兵になり、力をつけて、人を殺して生きてきた。

 それがイコール人生だった。

 疑問という概念すら、ベトの中にはなかった。

 だからそれが"どうしようもない世界"だなんて呼ばれる謂われは、ないはずだった。

「あんたさ……」

「わたしは、契約した。この命を捧げると。だからこの身は、既に死んでいる。だからわたしはすべてを捨ててでも、世界を変えなければいけない」

 アレは、両手を開いた。

 そして、天を仰いだ。
 まるで教会の神父が、そうするように。

 その瞳は、尋常な色をしていなかった。

 限界まで見開かれ、瞳孔も開き、そこには凄まじい迫力が込められていた。

 今までのアレとは、違う。
 まるで別のなにかがのり移っているかのようですらあった。

「あ、あんた……」

「――でも、わたしには何もない。知識も、力も、歩くことさえままならない。そんな時、あなたが現れてくれた。
 嬉しかった」

 そこでいきなり。

 不意打ちにみたいな笑顔が、ベトを襲った。

「っ!?」

 それは襲った、という表現が一番近かった。
 見つめた、というレベルじゃない。
 今までの緊迫感から急転直下の、無防備で花咲くような可愛らしい笑顔。

 それはベトの間合いを一瞬で詰め、防御を容易く貫き、そのまま心臓を刺し、遥か後方まで突き抜けていった。

 あとにはただ、衝撃が胸の内に残るだけだった。

「……ベト?」

 アレからの問いかけにベトは言葉で応えず、アレの腰に差した剣を無言で抜いた。
 そしてその美しい切っ先を見つめ、

「――オレが手伝えるのは、剣の振り方を教えるくらいのもんだ」

 その言葉にアレは一拍遅れて、

「あ……は、はい! よろしくお願いします!」

 ひゅん、とベトは剣を振るった。
 そして横目で、無邪気な笑顔でこちらを見ている少女を確認した。

 なんなんだろうな、ホントに。

 初めて、自分の部屋以外の場所で眠ることになった。

 胸がハラハラして、なかなか寝付けなかった。
 まるで、夜という名の闇に、呑み込まれていくようで。

「……ハァ……っ」

 寝返りを打つ。窓側のベッドは、さすがに部屋の主であるベトが使用している。
 自分は反対側――ドアの傍の床に、毛布を敷いて横になっている。
 感触は硬く、そして少し寒いが、それよりも問題なのは、場所だった。

 月が、遠い。

 光が、足りない。

 いつも窓際のベッドで、空を見てきた。
 どんな時でも、月を見ていた。
 月を見ていれば安心できて、安心できればそのまま眠りにつくことができた。

 月が遠い。

 光が足りない。

 恐い。

 おばあさんが死んでしまい、自分だけの世界が終ってしまって、こうして何も知らない所にきてしまった。恐い。
 これからどうなるのかわからないし、どうすべきかもわからないことが。

 恐い。

 夜の闇が、恐い。
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