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ⅩⅩⅤ/国王エリオム十四世①

2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 国王はぴくりとも、反応すらしなかった。

「フィマール――なんだ、この茶番は?」

「は……ハッ。こ、このたび謁見を賜らせていただいたのは、他でもありません。このフィマール、裁判長として進言が――」

「なんだ? つまらぬことなら――斬って、捨てるぞ?」

 傲慢、そして残虐性。

 それをベトは、見た気がした。
 その時湧いた感情を、ベトは苦い思いで感じた。

 まるで、自分のようだと。

「い、いえ、その……」

「わたしの名前は、アレ=クロアといいます」

 その極限の緊張状態ともいえるさなか、アレはただ一人平然ともいえる面持ちで踏み出した。

 どくん、とその光景に、ベトは心臓がわしづかみにされたような錯覚を覚えた。
 それに、自分がこの子に手助けを申し出た理由を、理解した。

 危ういのだ。
 この子は。

「なんだ、お前は?」

 冷ややかな視線にも、アレは怯むことはなかった。
 というより、理解しているのか不安になった。
 アレにとって王国の知識は、余りに少ない。

「わたしは、その、世界を……」

「なんだ、と我が聞いておるのだ。答えんか」

 ビリ、と重圧をこちらが感じるほどの、高圧的な問いかけ。
 それにアレは明らかに、うろたえた。

 ここまで相手の話を聞かない――存在を認めない存在という者に、出会ったことがないのだ。
 それでもアレは、どこまでいってもアレだった。

「あ、は、はい。わたしは、その、国王陛下にお話を聞いて欲しく……」

「ふざけているのか、貴様?」

「い、いえっ……そ、そんなことは、ないですっ。ただ、わたしは話を……」

「フィマール」

「は、ハッ!」

 とつぜん名前を呼ばれ、フィマールは慌てて返事をした。
 エリオム十四世は表情、格好こそ変わってはいなかったが、あきらかに不興をあらわにしていた。





「貴様、我に無駄な時間を取らせおって……相応の覚悟はしておるのだろうなァ?」

「い、いえ! この娘は、ただの娘では、ございません……!」

 頭は下げたまま、決死の思いといえる面持ちでフィマールは叫んだ。

「なんだ? この娘が、この戦争を終わらせるとでも言うのか? あ?」

「終わらせます」

 二人の会話に、アレは割り込んだ。

 初めて、エリオム十四世は微かにだが眉をあげた。

「――なんだと?」

「終わらせます。わたしが戦争を、終わらせてみせます」

 いつもの落ち着いた様子に、アレは戻っていた。
 というよりも、見せかけていた。

 ベトは気づいていた、その胸の内が、信じられないほどのプレッシャーに押しつぶされそうになっていることを。
 握りこんでいる左手の、僅かに震える小指から。

 それを抑えつける強さは、なんだろうと考えた。
 尋常ではないそれは――言っていた、一度死んでいるという想いに起因しているんだろう。

 一度死に、そして神に救われたから、その使命にすべてをかける。
 だからこそ、彼女は命懸けで行動しているのだろう。

 だからその行動は、心を打つ。

「ほう……」

 初めてエリオム十四世は目を細めた。
 それにぞく、と嫌な予感がベトの背筋を駆け抜けた。

 それはその場にいる者たちすべてが近い想いのようだった。
 ざわつき、戸惑っている。

 しかしその最中、アレだけは真っ直ぐにエリオム十四世を見つめていた。

 睨んでいた、わけではない。
 瞳に力を込めて、その姿を視界に収めていた。

 負けないように。
 想いが届くようにと。

「貴様が、戦争を終わらせる?」

「はい」

「どうやってだ、あ?」

「わかりません」

「ふざけるなよ、貴様」

 ふい、とエリオム十四世は右手を振り下ろした。

 その意味が、アレはわからなかった。
 ただなんだろう? と首を傾げていた。

 その瞬間、ベトは飛び出していた。
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