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Ⅵ/ありふれた傭兵②

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 隣で剣の手入れをしてた髭もじゃが、勝手に会話に参加してきた。まぁ許可はいらないんだけど。
 ていうか今さらだけどとベトはこのおっさん何回ていうか何十回おんなじとこ手入れすりゃ気が済むんだ? と眉をしかめた。
 なんだかんだでしっかり聞き耳立ててやがった、相手だけはこっちに押し付けて。

 むかっ腹が立ったので、めいっぱいその突き出た脇腹をグーで、殴ってやった。

「うぐぅおわっ!?」

 えらい派手な悲鳴をあげ、くの字にひしゃげるスバル。
 なんだ情けねぇ、とベトが自分の拳を見ると、ガントレットつけっぱなしだった。
 うわやべぇ、肋骨へし折れたかもしれねぇ。

 ベトはそっ、とガントレットを外した。

 証拠隠滅。

「――んで、なるほどそりゃ傭兵も知らねぇわな」

 スバルのおかげで適度な小休止だった。
 ベトは頭をボリボリかき、改めてアレと向き合う。

 するとアレは、ぐったりとしていた。
 俯き、力なくうなだれている。

 今までだったらなぜかと頭を傾げていただろうが――

「……疲れた、みてぇだな。とりあえず、アジトに着くまで休み――」

「……くぅ」

 既に眠っていた。
 その警戒心のなさに、ベトは呆れる――と同時に、

「……ったく、仕方ねぇな」

 少し、可愛らしくも思っていた。
 と感慨に耽っていたら、いきなりガクン、と荷馬車が揺れた。

 それにベトはバランスを奪われ――もろに壁に鼻から、激突する。

「うぶっ!?」

「よーし、着いたぞお前ら荷物を降ろせ!」

『ウォ――――!』

 長話しすぎたようで、既に目的地に着いてしまったようだった。
 貴重な移動中の休憩時間を無駄に過ごしてしまったと、ベトは頭をガリガリとかき――落ちたふけがアレにかかりそうになり、慌てて手で受け止めた。

 焼き、回ったかな?

 予想通りというか、やはりギャハハハ、と爆笑が巻き起こった。

「おいおいベト、なんだよその子は?」
「女付きとは焼きが回ったかァ?」
「それともその子はお前の妹か、ベトちゃん?」

 沸き起こる爆笑と揶揄に、ベトはひたすら苦笑いでやり過ごした。
 誤解でバカにされるんだったらガントレットで殴ってでも訂正するタチだったが、実際こんな傭兵稼業とは似ても似つかない華奢な少女を背負って歩いているんだから反論のしようもないのも事実だった。

 ここは甘んじて受ける。

 ったく、こういう発想からしてガラにもない。

 なにやってんだろうな、俺は。

「まぁ、お嬢ちゃんのあの事情知ったら助けたくもあるわな。わしも協力してやるぞ、なんかあったら言ってこいや」

 と耳元で言い残し、スバルはとっとと去っていた。
 あのおっさん、相変わらず美味しいとこだけ取ろうとするその根性は怒りに値する。
 そしてマテロフは気づけばいなかった。

 やれやれ、頼れるのは自分だけか。

 ベトはまるで羽毛みたいに軽いアレを担ぎ直し、自分の部屋へと向かっていった。
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