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2020年10月8日

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この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「今日の卒論発表会、結構長くてだるかったね。正直みんなもっと色々と見応えがある大掛かりなものが出たり、飽きないような趣向を凝らしたものが出てくると思ってたから、僕なんか途中結構寝ちゃってさ。切間(きりま)たちと後ろの方に陣取ったから良かったけど、前の方座ってたら結構やばかったよ」

 そう言って笑った。
 あんまりうまく笑えなかったように思う。

 美香ちゃんも、そうですね……と力なく微笑んだだけで、僕の笑い声もしりすぼみになって間もなく消えた。

 日付は一月三十日、土曜日。
 僕たちは夕方まであった大学のゼミの卒論発表会を終え、恒例の追い出しコンパを一時抜け出して会場の居酒屋の入り口で向かい合っていた。

 彼女の向かい、僕の後ろの方からは客が大笑いしたり談笑にふける賑わいがずっと続いていた。
 暖色系の照明が、僕の背中を照らしている。

「ぼ、僕らもあと二年したらあそこに立って発表するんだよね」何言ってる、当たり前だ。「そ、そう考えると、今のうちからそれなりに色々考えたほうがいいのかな? あ、でも来年の後期には就職活動も少しづつ始めなきゃいけないとか言うし、なんだか大学生っていっても色々と忙しくなるんだね、ハハ」

「そう、ですね」

 彼女の表情は終始堅い。
 少し俯き加減でスカートの裾を握っている。
 僕が何をやろうとしているのかもバレているのだろう。
 早く本題に入らないことに、逆に責め苦のような思いを感じているのかもしれない。
 そう考えると、なんだか自分がとても悪いことをしているような気分になった。

 沈黙が降りた。

 しばらく僕らはお互い俯いたまま、動きを止めた。

 彼女の背の向こうの道路を、何台もの車が通り過ぎる。
 僕の背の向こうを何人ものサラリーマン風の男や大学生風の軽い格好をした男女が通り過ぎる。
 排気音、人のざわめき。それだけが僕の耳を打つ。

 心臓が締め付けられる心地がした。
 黒い空の下、僕はまるで迷い子のような気持ちでいた。

 目を閉じて、深呼吸を二つして、覚悟を決めた。

 瞼を開き、彼女のハイヒール、ストッキングに包まれた足、タイトスカート、ジャケットの三つボタン、シャツの襟と視線を上げていき、美香ちゃんの顔を正面から見た。

 拳を握り締める。

 もう一つ深呼吸。

 家で三十回は練習した台詞を、口にする。

「……ゼミで。初めて、会った時から、ずっと、見てきました」
 一つ一つ、区切るように発音する。ここで一旦息が切れて再び息を吸いなおし、先を口にする。

「……好きです。付き合って下さい!」

 最後の言葉だけは、一息で力強く言った。
 言った瞬間怖くて目を閉じてしまった。

 美香ちゃんはその言葉を息を深い吸い込むように飲み込んだ後、その息を吐き出すように肩を落として、
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