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ⅩⅩⅧ/死の在り方①

2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 だから、やるしかなかった。

 まるでアレのようだな、とベトは笑った。

「なにがおかしい?」

 隊長格の男が、低く尋ねてきた。
 今すぐ畳みかければすぐに終わるというのに、こいつも随分付き合いがいいと思った。
 これが、この男なりの騎士道というやつなんだろうか?

 ならば、口だけでも動かしておこう。

「……もう、ンでも、いンだよ」

「なんだと?」

 もう自分でも、なにを言ってるかわかんねぇ。
 でももう、死ぬなら理屈も糞もねぇ。

 シンプルにいこうぜ。

「わかんねぇな……もう、いンだよ。勝とうが、負けようが、死のうが、生きようが。そンなこたァ、もうどうだって、いンだよ。ただただただただ、戦うンだよ。それ、だけだ」

「……理解出来んな。所詮、獣か」

「違うな。それは違う。オレは今まで、獣になろうとして、考えて生きてきた。その結果、大いに間違えて生きてきちまった。
 オレは、ビビってたんだよ。本当にすべきことをせず、出来ることをやってきちまった。でも本当は、最初からこうすべきだった。あぁ、そうだ。

 それをそこの子に、教えられた」

 チラリ、とベトはアレを見た。
 ったく、最初バカだ無謀だ意味不明だと罵し――ってはいないか思ったことを、反省しねぇとな。ベトはニヤリ、と笑っていた。

 ふと、そこでベトは気づいた。
 なぜ、斬りかかってこない?

「……あんた?」

「ひとは、思うように生きるのは、難しいものだな」

「? なにいってンだ?」

「なんでもないさ。貴様と喋れて、悪くはなかった。だが――」

 槍斧(ハルバート)を、振りかぶる。
 やべぇな。ベトは苦笑いを浮かべる。
 今度あれが来たら、どうやったって避けられる自信はない。

 首斬り公が首を斬られて終わりだなんて、最高だなと笑いが止まらなかった。

「――さらばだ。俺は俺の生き方を、まっとうする。お前もお前の我を――通せッ!!」


 轟音を巻き起こして"死"が、やってくる。

 それをベトは、決して目をそらさずに見つめていた。
 それはベトにとって、決して避けるべき相手ではなかった。

 それは生まれた時から、ずっと傍にいた。
 しかし決して交わることはなく、適度な距離で一緒にいた。
 語ることもあり、そして酒を酌み交わすこともあった。

 いわば、友のようなものだったんだと初めてベトは、理解した。

「そうか……」

 そしてベトは、受け入れた。

 死を。
 自分の中に。
 それは矢が飛んできた時のあれとは、また違う。

 死を特別なものをと思わず、ひとつの結果として、自分の中で消化することだった。

 死が、頬の肉を削ぎ落として通過していった。
 怖い怖くないを、それは越えていた。
 ただひたすらに、それは事実に過ぎなかった。

 だからその一撃が、"左腕を肩口から斬り落とした"ことにも――

「ベト……っ!」

 アレが、叫ぶ。
 一瞬、隊長格の男が笑った。

 それは冷めたものだった。
 こんな男でも笑うということに、しかしベトはなんの感慨もわかなかった。

 頓着しなかった。

 ただ右腕を振り上げ――剣の切っ先を男の兜と鎧の間に出来た隙間の喉元に、突き立てた。

「ガッ――――」

 生体反応により男は血を吐き出し、しかし男の瞳はじっとこちらを見つめていた。
 その揺れない、真っ直ぐな視線が、語っていた。

 ――見事。

 男は、崩れ落ちた。
 前のめりに、ベトの方に。

 それをベトは、黙って受け止めた。
 左腕からは、それこそ濁流のような出血が起こっていた。
 だがそれを、ベトは構わなかった。

「わりぃな……」

 ただ一言。
 謝罪を口にして、そしてベトは、王の方を向いた。

「……さーて。あんたにゃ一言、いってやんないとな」

 踏み出す。
 それに伴い腕の出血が、酷くなる。
 それにベトは一瞬顔をしかめたが、なんとか歩みを再開する。
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