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ⅩⅩⅢ/アレ=クロア①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「うむ、これでいよいよ悪魔と契約した可能性が高くなったな……くわばらくわばら」

「いやいや、嫌な時代ですな。おちおち舞踏会もひらいとられんですよ」

「まったく。今日は女でも激しめに抱いて、早めに眠るとしましょう」

「そりゃいいな。オレも是非ご一緒したいところだ」

『え?』

 それがたまたま殺人鬼がいる廊下の角に差し掛かった、哀れな貴族の最後の言葉になった。
 いや殺人鬼ではなく首斬り公か。

 死体を隠す手間が惜しかった。
 とりあえず手近な部屋に投げ入れ、ベッドの下にでも。
 少しは時間が稼げるだろう。
 なお見つかれば、天命だ。

 廊下を進む。
 あまり時間はないらしい。

 処女かどうか、か。
 最初の会話を思い出す。
 元は娼婦だと思い、一発ヤろうと声をかけたのが最初だったか。
 思い返せば遠くまできたものだ。
 いったい、どうしたもんだか。

 あの初心さから、間違いなく処女だろう。
 しかしあの豹変振りから、悪魔憑きの可能性は拭いきれていない。
 契約、という口ぶりも気になる。
 結局擁護する要素は、ほとんどない。

 だからここに、論理的要素は存在しない。
 だいたいそれなら、この考え自体が余分だ。

 妙だな、とベトは笑った。
 この自分が、色々ウダウダ考えるだなんて。
 やはり迷っているのだろうか?
 それとも怖いのか?
 もしくは自信がない?
 どれもありそうで、どれも確信は持てなかった。

 ただ。

 やっぱり、あの子くらいは守ってやりたいと思ったりした。





 大きな広間に出た。
 誰もいない。
 パーティーホールかなにかだろうか?

 警戒を強める。
 遮蔽物が少ない。
 身を隠しづらい以上、これ以上進むかどうか悩むところだった。

 だが、直感がいっている。

 この先に、なにかある。

「――――」

 気配を、殺す。
 消す以上に、心臓さえ止める勢いで自分の存在をこの世から抹消する。

 そしてすり足で、少しづつ前に進んでいく。
 壁を伝い、柱で身を隠し。
 誰もいない。
 気配すらない。

 それに心臓が、高鳴りそうになる。
 それと戦う。
 向こうのキャットウォークに天窓があり、そこから月明かりが差し込んでいた。

 綺麗だ、となぜか思った。

 まともに月なんて、見たことなかったくせに。
 そんなものに、興味なんてなかったくせに。

 生きて、殺して、食べて、殺して、呑んで、殺して、生きるだけ。
 そんな生き方とも言えない生き方を、選んできたはずなのに。

「アレ……」

 ふと、口元から言葉が漏れた。
 誰にも届かない、発した自分にしか認識できない程度の声が。
 なにを想ったかわからない。
 ただ、出た。

 ホールを、抜ける。
 そこから渡り廊下が伸びていた。
 一本道だ。
 脇には、中庭が見える。

 大きな噴水と、無数の植物。
 そして廊下には巨大な石柱が何本も立っている。

 気配が、まったくない。
 だから進む。
 時間の無駄だ。
 アレが気がかりだ。
 処女検査。
 ろくな取り調べじゃないだろう。
 心配とは違うが、彼女が妙な汚され方をするのは我慢できなかった。

 樫作りの扉。
 今までのモノと違い、それは酷く粗野で汚らしかった。
 離れにある、という時点で妙にキナ臭い。
 だからきっと、ここにいるだろうか?

 押し、開ける。

 なぜか鍵は、かかっていなかった。

「お……」

 声が、漏れた。
 そこは暗い場所だった。
 なにひとつ、視界では捉えられない。

 石牢よりなお暗い。
 とりあえず気配を探る。
 まぁもう半自動で勝手に探っているが。
 じゃないととっくにベトは奇襲や暗殺でこの世を去っているし。

 いた。

 ほとんど、目の前に。

「――だれだ?」
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