Ⅱ/最悪な出遭い③

2019年11月17日

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 アレからの反応はない。

「ん? あんたを」

「あなたが」

「あぁ、俺が」

「…………」

「えーと、理由は聞かねぇの?」

「あ……ありがとぅうっ」

 泣き出した。

 いきなり、前触れなく、それも壮大に。ボロボロと大粒の涙を地面にまで零して落とし、周囲に響き渡るほど大声で喚き散らす。

 それに男は思い切り、面喰らう。

「お、おぅ!? ど、どうしたあんたいきなり!?」

「だ、だって……! おばあちゃん死んじゃったし誰もいないしわたし外に出たことなくてだけど神様と世界を変えるって約束しちゃって……でも不安で怖くてそれで、え、ぇええ……ッ!」

「お、おぉう? そ、そうかそうか、そりゃあ大変? だった、なぁ……?」

「んく、ぅえ、おぇ、ぅえええゲホッ、ゴホッ!」

「うわ、大丈夫かよ!? ほ、ほら、水飲みな?」

「おえ、ごえ……! あ、あびばどぅ……」

 腰の水筒を渡され、吐く一歩手前に咽ながらそれを受け取り、喉を鳴らして飲む。ごくごくと、何の迷いも躊躇もなく。

 それを男は、不思議な生き物でも見るような心地で見ていた。

「お、おぉ~……」

「んく、ごく、ぅく……あ、ありがどぅうう」

 涙目は、変わらなかった。
 さっきまで凛としてて、さらには睨み、引っかき、ろくに立つことも出来ないのに杖をついてでも旅立とうとしていた娘だとは、到底思えなかった。

今のこの娘は、年相応――いや以下ぐらいに、弱々しく、脆く、儚く見える。

「……あのさ、」

「な、なんですぅ……ぅぐううぅう!」

 話しかけても、言葉を出すだけで泣き出してしまう。
 おそらくよっぽど張り詰め、思い詰めていたのだろう。

 もはやこの場所でのこれ以上の問答は、無理だと思えた。

「――も、いいや。とりあえず、一緒に行こう。ここにいたんじゃ飢えて、死ぬだけだし」

 そして再び、首のうしろと膝の下に手を回す。

 泣いて、両手で目を塞いでる間の所業。
 アレは泣くのに夢中で、気づかなかった。

 最初ベトは、からかうつもりでお姫様抱っこしようとしていた。

 だけど今度はお姫様抱っこしてあげたくて、してみた。

「う、うぅ……あなたの、名前は?」

 呼びかけに、傭兵は応えた。

「ベト。ベト=ステムビア」

「ベト……ベト、ベト……」

 自分の胸の中で泣きながら自分の名前を繰り返す少女の姿に、ベトは不思議な気持ちに襲われていた。

 それを言葉で表すすべを、ベトは知らなかった。


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