ⅩⅩⅢ/アレ=クロア③

2020年6月1日

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 ニヤリと笑ったベトの問いに人影は慌てて、

「い、いや、してませんよっ! それはいわゆる魔女でして、わたしは魔法使いで、その違いは――」

「なら、関係ないな。オレにとって問題は、あんたが魔女か――悪魔に憑かれてるか、ってところだけだったからな。あんたは、あんただろ?」

「え……あ、う、はい。わたしは、わたし? だと思います、はい」

「なら関係ないな。ンなことよりオレの剣を知らないか? ないとちっと心細くてね。あと、あんた自身はいまどこにいんだ? 助けに行ってやっから、いえよ」

 ニカッ、と笑う。
 ようやくすぅ、と胸のつっかえが取れた様な心地だった。
 これでもうなんの気兼ねもない。

 悪魔の掌で踊らされるっていうのは気分が悪かったから、ちゃんとこの子の意思で、この子自身がやりたいことを手伝ってるっていうんなら、もう迷うこともないだろう。

 すると人物は唐突に、

「剣は、ここにあります」

 がちゃん、という物音。

 そちらを見ると、身の丈もある棒状のなにか。
 間違いなく、自分の愛剣に間違いはなかった。

 拾い上げる。
 久しぶりの感覚に、頬ずりしたくなった。
 というか、頬ずりしてしまった。
 商売道具という観念を越え、もはや相棒の領域に達していた。
 いや手足か?
 近くに携えておかないと、落ち着かない。

「おぉ、あんた助かったぜ。じゃあこれからいってやるから、あんたの居場所――」

 そこで、気づいた。
 この場所が、おそらくは様々な押収品を収めた倉庫のような場所であるということ。
 カビ臭く、整理の欠片もなく無造作に無数の装備品が積み上げられている。
 隅には弓矢も大量にある。壁にはよくわからない布のようなものがかけられている。

 しかしそこに、人の気配はどこにもなかった。




 アレはひとり、寝室に通されていた。
 豪華な赤い絨毯が敷かれたその部屋には、天蓋付きのベッドがあり、その迫力にアレは一人気圧されていた。

「え、あ、の……?」

「さぁ、そこに座んなさい」

 戸惑うアレを、その老婆は奥へ促した。
 されるがまま、アレはベッドに腰を下ろした。

 それに不覚にも、アレは安堵してしまった。
 ベッドに腰を下ろすという行為に、懐かしさすら感じてしまって。

 目の前に、祖母がいた。

「おばあさん……」

「なに言ってるんだい?」

 違った。
 目の前にいたのは祖母ではなく、処女検査とやらを行う女官だった。

 それでわけがわからずここまで連れてこられて、この状況だった。
 ここで処女検査というやらを行うのだろうか?

 思っていると、女官はおもむろに顔をこちらに寄せてきた。
 皺の深く、白く濁ったその瞳に、アレは――どこか深い悲しみを、見た気がした。

「あんた本当に――」

「どうしたんですか?」

 女官の言葉を遮るような形で、アレの言葉が紡がれた。

 女官は一瞬、言葉を失った。

「……え? なんだい?」

「どうしたんですか?」

 まったく同じ言葉をアレは呟いた。
 目は真っ直ぐ女官を見つめ、身体を乗り出し、真剣に。

 それに女官は、たじろいだ。

「……なにを言ってんだい、あんた?」

「おばあさんに何かがあったのか、気になるんです」

「なんで気になるんだい? いまここで会ったあたしに……」

「関係あるんですか?」

「いや……そりゃ……関係ないこたないでしょうが?」

「そうなんですか?」

 すっかり水掛け論だった。
 一歩も前に進まない。

 そう考えたのだろう女官は言い方を変え、

「――なら、あんたはなんであたしに何があったのか気になるんだい?」
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