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2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「…………」

 その鋭い視線に、男は圧倒される。
 こんな女を、男は見たことがなかった。
 先ほど奇しくも自身が語った獅子という軽口は、図らずも当たっていたことになった。

「――あんた、どうしたい?」

 それは男が、意図せずに発せられた言葉だった。
 この少女には、行くべき場所がある。
 そこに溢れ出る信念がある。

「世界を、変えなければ……!」

 それは折れるような歯ぎしりの元紡がれた、執念のような言葉だった。

「よっ、と」

 それに男はアレの身体をひょい、と抱え上げた。
 首の後ろと、膝の後ろに、手を回して。

 いわゆる、お姫様抱っこ。

 その突然の所業に、アレは目を剥いた。

「なっ、ちょ、か……」

「まーまー落ち着きなよ。あんた、歩けないんだろ? だから俺がこうしてお、ぶっ!?」

 と話の途中で、男は顔面に蹴りをもらった。

 つま先による一撃が、鼻に食い込む。

 アレは男の腕の中で、暴れに暴れた。
 ただでさえ人との接触に免疫がないのに、自分の行く先をどこの誰とも知らない男に握られるのは、耐えられなかった。
 それになにより先の出来ごとによるトラウマで、男性に肌を触れられるのが嫌で嫌で仕方なかった。
 なりふり構わず、蹴りまくる。

「う、ぅー……離せ離せ離してっ!」

「ちょ、ま、って……った!?」

 さらに踵を使った見事なアッパーカットが、男のアゴを打ち抜いた。
 それに男は脳震盪を起こし、仰向けに大の字に倒れ込む。

 さらに上からアレがお尻から、落ちてくる。


 顔の上に。

「おぶっ!?」

「ったい!」

 お尻と地面とのサンドイッチに、男は目を回す。

 アレはそのおかげで軽減された衝撃から先に立ち直り、

「……たいたい、っ、い、行かなきゃ!」

「つ、っづ……って、ちょっと待てって」

 踏み出したアレの右足を、男は掴んだ。

 それでアレは、前のめりに――顔面から、地面に突っ伏す。

「ッたい!」

「あ、わりぃ」

「わるい、じゃ、なひ……! あなたは、いったいなにをしたいんですか!?」

 涙と僅かに鼻血をこぼし、アレは男に詰め寄った。
 意図がわからない。
 意味がわからない。
 危害は加えるつもりがないようだが、いったいなにがしたいのか?

 初めてに近くまっとうに声をかけられ、男はニヤリと笑った。

「へへ……お、俺? 俺は、別になにがしたいなんてないさ。ただ単に、あんたのことを手伝ってやろうかなんてことを考えてるかもしれないな」

 その言葉に、アレの表情が和らぐ。
 というより落ち着いた。

 男はどうしたのかと眉を寄せていると、

「……手伝う?」

「おー、そうだな。まぁ一秒後には気が変わってるかもしれないけどな」

「……わたしを?」


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