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ⅩⅩⅢ/アレ=クロア②

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 声が、低くなる。
 ありえない。
 自分がここまで接近されるまで、気づかないなんてことが。

 自然手は、剣の柄へ。
 抜刀術は得意ではないが、まぁやって人並み以上にこなせる自信はもちろんある。
 その間、おそらくは0,4秒ほど。

 その時間を、果たして目の前の人物はくれるか?

「こんにちわ、ベト・ステムビア」

 聞き覚えのある声に、全身の血液が急速に冷めていった。

「……まともに話すのは、初めてかね?」

「そうデスね。お初に、というところですか?」

 ひとを喰った物言いは、確かにあの夜自分の部屋でスバルと話していたものだった。
 どこか人の言葉を真似ているような、滑稽な発音。

 単刀直入の、質問。

「で。お前、誰だ?」

 あんたとは呼ばない。

「わたしは、アレ・クロアです」

「違う」

 お前は、彼女じゃない。

「どうしてデスか?」

「あの子は、そんな風に喋らないからだ」

「ベト……わたシを、信じてクレないんでスカ?」

 振れる。
 気持ちが。
 そこから、感じられるものが、判断できるものがない。

 同情を誘っているような、もしくは罠にかけるような気配を、感じ取れない。
 なんなんだ、これは?

「……お前は、なんだ?」

「わたしは、アレ・クロアです」

 そこで至る、疑問。

「アレ・クロアとは……なんなんだ?」

 彼女は二コリと、笑ったような気がした。

「アレ・クロアとは、魔法使いです」

 せんせいからすら聞けなかった単語を、聞く羽目になった。





 まずこの状況が、尋常ではなかった。

 自分はアレを探しに、石牢を出て危険な城内を歩き回り剣を求め貴族を殺し、こうしてここに至ったはずだった。
 誰もいないパーティーホールを抜けて、渡り廊下から離れのこの建物は、いったいどこなのか?
 わからずただ導かれるように、事ここに至っていた。

 魔法使い。

 それがなんなのか、気にならないでもなかった。
 この状況も、不可思議ではあったが。

 なんだか身体の中から、少しづつ歪み、周囲と溶け込んでいくような心地を味わっていた。

「……オレを、どうするつもりだ?」

 だからなのか、意図と関係ない質問が口をついていた。
 輪郭すら定かではないその人物は今度は優しげに微笑んだような気配を見せ、

「なにもしません」

「あの子を、どうするつもりだ」

 質問に、人物は僅かに落胆したような雰囲気を滲ませた。

「あの子、っていうのはわたしのことですか?」

「同じなのか?」

 理解の外で、会話は進んでいく。
 まるで自分の身体が、自分のものではないようだった。

「わたしは、わたしです。わたしはアレ・クロア(あの子)であり、わたしはアレ・クロア(わたしじしん)なんです」

「ならなんで、そんなに喋り方や雰囲気が違うんだ?」

「例えるなら、過去のわたしと現在のわたしだからです。封じられたわたしと、表に出ているわたしといってもいいかもしれません」

「過去……」

 そういえば、とベトは思う。

 アレは昔から、祖母と暮らしていたという。
 そして家のベッドの上で、ただ街を眺めて生きていたと。

 だがその経緯については一切語らなかった。
 父母は?
 生まれた状況は?
 祖母に至るまで。

 さらにはなぜ足を不自由にしているのか?
 なぜ家から一歩も出さなかったのか?

 疑問だらけだった。
 しかしそれを、アレは疑問にもしていなかった。

「あんたの過去に、なにかあったってことか?」

「あったというより、過去、わたしは……いえ、」

 そこでアレは、なぜか言葉を濁した。
 それにベトは、頓着しなかった。

 のんびり話をしている暇は、今はなかった。

「それであんたは、なぜいまオレの前に姿を現した?」

「聞いておきたくて」

「なにをだ?」

「わたしは魔法使いです。普通の女の子じゃありません。そんなわたしに、それでもあなたは……」

「悪魔と契約でもしたのか?」
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