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Ⅳ/最悪な出遭い①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 わけがわからず剣と男を交互に繰り返し見るアレに、男は試すように声をかける。

 それにアレは剣をゆっくりと持ち上げようとするが、

「こ、こんな、の……振れ、ない、けど……っ」

「けど、ないよりいい」

「う……う、わっ」

 さらに押し付けるように、鞘も渡される。
 その二つの重量合計2,5キロを持て余し、アレは後ろにひっくり返る。

 その様子に男はケラケラと笑い、

「かかか……で、あんたバイタじゃねぇだろ?」

「……?」

 初めて聞く単語に、アレは剣をとりあえず鞘に収めて横にのけ、疑問符を浮かべる。

 男はボサボサの髪をかき上げ、

「売りやってる女のことさ、売女(バイタ)」

「?」

 これだけ言ってもわからないアレを男は覗き込み、

「娼婦じゃ、ねぇだろ?」

「かっ」

 アレは唐突なその言葉に、むせかえる。
 意味だけは知っていたが、とんでもない言葉過ぎて空気が肺から喉を通って漏れ出ていた。

「あ、当たりっ、前」

「かっかっか、そう怒んなよ」

 男は、楽しんでいた。
 この無知で無垢な少女とのやり取りを。

 そして一通り笑った後、

「で、この村の人間でもない」

 唐突な断定文に、アレはドキリとする。

「……なんで」

「見りゃわかるよ。服装、立ち振舞い、視線に、気品……あんたいい女だ」

 ぐい、と腕を引き、再びアレを立ち上がらせる。

 それにアレは目をむき、怯える。


「ぃ? あ、の……」

「心配すんなって、今すぐ無理やりなんて気、もうねーよ」

 男はすぐに手を離し、そして改めて同じ目線でアレを見る。

 アレは微かにそれに、気圧される。

「あんたの、名前は?」

「――アレ=クロア」

 今度は男の方が微かに、気圧される。
 予想していなかったほど、それは高貴な名前だった。

「……っへぇ、イカすぅ。で、あんたなにやってんの?」

「――なにって?」

「なにって、そりゃあ……」

 そこでガクッ、とアレはくずおれた。
 跪き、そして痛みに呻く。

 それに一瞬男は呆気に取られ、

「と、これは失礼。レディに立ち話をさせただなんて、紳士として礼に失して――」

「…………」

 恭しく一礼する男を、ただアレは感情のない透き通った瞳で見上げるだけだった。

 それに男も軽口を止め、

「……どうしたん?」

 ただ、一言。

「……わたし、普通に歩けない」

 男はそれに、言葉を失った。
 それは男が想像もしていなかったことだった。

 だがしばらくして、言葉の違和感を感じとった。

「……"普通"に?」

「こうすれば、歩ける」

 言ってアレは近くに転がる杖を手にして、全身の力を振り絞り、それを頼りに立ち上がった。

 息を切らし、挑むように。

 その腰には、先ほど与えた剣を差して。

「ハーッ、ハーッ、ハーッ、ハーッ……!
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