ⅩⅧ/哀しい笑顔②

2020年4月4日

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 さぁ、ここが岐路だ。
 あんたの覚悟を、試させてもらおうか。

「軍隊って、なんですか?」

「また、そこからかよ……っ!」

 ベトは思い切り、頭を抱えた。
 ふとすると忘れがちだが、この子は無知な子供そのものだ。
 言動が堂々としたり、やたら物怖じしない時もあるからあれだが。

 ベトは気を取り直して、

「……軍隊ってのは、俺たちみたいなのをたくさん従えてる組織のことだ。戦争してるっつったろ? 国は、軍隊を使って戦争してるんだよ。
 その軍隊が、あんたを御所望なんだと」

「わたし、を……ですか?」

「ああ。あんたの妙チクリンな力を、貸して欲しいんだろ。で、あんたはどうすんだ?

 行くのか、行かねぇのか?」

「いきます」

 肩透かしもいいところだった。
 悩みすらしないとは、失望させてくれる。
 いやでもこの予想の斜め上感も、らしいといえばその通りか?

 結局ベトは、感想を結論づけられなかった。

「そうか、行くか。じゃあな、短い付き合いだったが案外楽しかったぜ。ああけど、戦争を舐めん方がいいぜ? 確かにあんたは変てこな力を持ってるみたいだが、それだけでそうそう簡単にはいかないのが戦争ってもんさ。色んな奴いるし、戦略や地形とか――」

「いって、みなさんにもお願いしてきます」

「……お願い、だと?」

「はい。世界を変えたいんで、協力してくださいって」

 一瞬、正気を疑った。

 けれど、この自分をして協力を願い出たこの子を思い出し、現実問題に直面することになった。

「……あんた、あの連中にも助けてもらおうと考えてやがるのか?」

「助けてというか、わからないことを教えてもらおうと。そして出来たら、わたしにできないことをやってもらえたら、嬉しいです」

「……あめぇ」

 俯き、ベトは低い声を出す。
 それにアレは頭の上に疑問符を浮かべて頭を傾げたが、それにベトは吐き捨てるように、

「あめぇ……あんた、奴らのこと知らねぇからンなこと言えンだよ。奴ら人の命なんて、道端の石くれ以下ぐらいにしか考えてねぇンだぞ? 人が死のうが生きようが、自分たちの利益さえ守って、人の利益を奪えればそれでよしとしてる連中だぞ? そんな奴らに、話が通じるとでも思ってんのかよ!」

「でも、お話は出来ると思います」

「できねぇよっ! 薄汚ねぇひと殺しのおれたちに、毛が生えた様な連中だぞ?」

「でもベトたちは話を聞いてくれました」

「ッ……き、気の迷いだ! そんなもん、他の連中にまで期待すんじゃねぇ!」

「でもやらないと」

「やるやらないの問題じゃねぇ、できねぇっつってんだ! 理屈で考えろ、頭で理解しろ! 出来ないって、無理だってわかってっから誰もやんねぇんだろうが!」

「でもやらないと、世界を変えられないから」

「夢見てんじゃねぇ!」

 ベトはついに爆発し、アレの胸倉を掴み、引っ張り上げた。

 それにアレは、抵抗しない。
 その瞳は怯えもなく、真っ直ぐにベトを見つめていた。

 むしろ吼えているベトの方が、その純粋な瞳に怯んでいた。

「ッ……わかってねぇわかってねぇわかってねぇわかってねぇッ! あんたなンにもわかってねぇわッ! 世の中ってのは、あんたが思うほどみんな優しくねぇ! できねぇもんはできねぇし、世の中諦めなくちゃ――」

「――――」

「……あんた、」

 言葉が、続けられなかった。

 もう、その瞳がすべてを物語っていた。

「……どうしても、行くのか?」

「はい」
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