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2020年10月7日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 オルビナがそんなエリューの肩に手をやり、

「さて、マダスカは無事済んだようだね。ではエリュー、次はきみの番だ」

「あ、はい」

 促され、エリューは扉を開き、中に入った。
 その内装の豪奢さに目を見張り、

「おわ! す、すげー……なんだこりゃ!?」

「きたまえ」

 たった一言の指示に――エリューは、眉をひそめた。

「……きたまえ、ですか?」

「ここにだ」

 正直、傲慢な物言いに思えた。

「……はぁ、まぁ、いいですけど」

 とりあえず従い、トピロ司教の元に歩み寄る。
 するとトピロ司教は有無を言わさず、

「これを、飲みたまえ」

 出し抜けに、赤い怪しい液体が入ったボロい盃を差し出す。

「……あのー」

「…………」

 返事もしないし。

 考える。
 さすがに言われたままバカ正直に飲んで、変なことになっても困る。
 かといって、無下にことわってもいいものか。
 どうすべきか、迷う。

「……あの、これって、変な薬とかじゃないですよね?」

「…………」

「その、飲んで変なこととかに……」

「…………」

「あの……」

「早く飲みたまえ」

 そこでエリューの中で、何かが切り替わった。

「……答えてくれても、よくないですか?」

「なに?」

 初めてトピロ司教は、エリューに対した。

「……人形に話してるんじゃないんですから、そういう一方的な言い方ってどうかと思うんですけど」

 眉間に、しわが寄る。

「誰と話しているのか、わかっているのか」

「会話は、受けて答えるものです。今のこれは、会話とは言えません」

 双方、一歩も引かない。





 初めてトピロ司教の、表情が変わった。

「もう一度、聞いてやろう。誰と話しているのか、わかっているのか?」

「……トピロ司教と、存じますが」

 その手に持つ司教杖が、床石を叩いた。

「クッタ」

「――はっ」

 トピロ司教の呟きに、左奥の壁際で覆いを掛けられた奉献台の裏から――一人の男が、現れた。

「…………誰ですか?」

 背はエリューより、10センチは高い。
 それに肩まで伸ばされた髪は金色で、顔の彫りも深く、精悍だ。
 というよりは身にまとった白地に金で縁どられた騎士服と相まって、色男という印象が強い。

 思っていたら、いきなり目の前に迫っていた。

「……へ?」

「よっ」

 という間に、組み伏せられる。

「でっ、つ……く?」

「で、トピロ司教? この男、どうしますか?」

 容姿通りの軽い口調が、上から聞こえてくる。
 エリューは右腕を上に向けて取られた姿勢で、背中に、馬乗りになられていた。
 いわゆる関節技の、肩固めの体勢だ。

 屈辱に、エリューは顔を歪める。

「な、なんだお前……くっ、放せ! お、降りろよ!」

「あー、うるせーな……それで、トピロ司教?」

「これを飲ませろ」

 トピロ司教は杯を一瞥した。
 それに男は苦笑いして、

「……せめて手渡ししてくださいよ。こっちは拘束してんですから……っと」

「あ、あででででででで!」

 その体勢で無理やりエリューの腕を引っ張って、握ってない方の腕を伸ばして宝座の上に置かれた杯を引っ掴み、そのあともう一度エリューの腕を引っ張り、

「で、でででででででで! て、てめぇこら……!」

「おら、口開けな」

 人差し指と親指で無理やりエリューの口を開き、他の三本指で器用に杯を掴み、傾け――中身を、流し込んだ。

「く、んく、く……やめ、ぐ」

「おら、飲め飲め飲め。クッタ様じきじきの……なんだ? まぁ、とにかくありがたく飲め」

「ぐ、ぐぐ……んくんっ!」

 口の端から零しながら、エリューは結局全部飲まされてしまった。
 そして指の拘束からは解放されるが、ほぼ同時に――

「……ぐ? つ、て……ででででででっ!?」

「ハハハ。お前、痛がり方は全部そんな感じなんだな」

 激痛にのたうち回りたいのに、上で笑ってる男のせいでそれも出来ない。
 ただ和らげるために、叫び続けることしかできない。

「あだ、あだ、あだだだだだだ!? ぐぁ、くっそ……お、お前降りろやァ!!」

「おっと。暴れるなよ?」

 男が飛びのき、そしてエリューはその痛む箇所――である胸を、シャツを引っ張り、露出させた。
 そこには痛々しく刻まれた、赤い血文字。

「な、なんだこりゃ……?」

「―――gid temista」

 それにトピロ司教が、何事か呟く。
 しかしその前に、少し間があったような……?

「最初の数文字はちと掠れて読めんが、『武剣士』だな」

「武剣士……?」

 エリューはそれに、再び疑問符を浮かべる。
 それにあの金髪の男が壁にもたれかかって腕を組んだ姿勢で、

「そんなことも知らないのか? お前、どこから来た田舎もんだ?」

 エリューはその声に険しい表情で振り返り、

「……あんだよ、てめぇ? さっきからフザけやがって……喧嘩売ってんのか?」

「売られれば、買うけどな?」

「やめろ、クッタ」

 二人の間に張りつめた空気が流れ始め、トピロ司教が制止の声をかけた。
 それにクッタと呼ばれた男は身なりを正し、

「はっ。失礼いたしました」
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