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Ⅲ/絶望のはじまり①

2020年10月9日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

 アレ=クロアは、母の墓を作った。

 家の裏手に。
 既に村のほとんどが襲われ、みな逃げ出すか――殺されてしまっていたので、村はガラン、としてしまっていた。

 伽藍洞だった。

 そこは既に、村ではなかった。
 今までアレ=クロアが生きてきた世界では、もはやなかった。
 今までの世界のすべては、終わってしまった。

 もはや、今までの人生は続けていけないということは、明らかだった。

 もう、祖母はいない。
 もう、食べ物も飲み物と、やってきてはくれない。
 窓で閉ざされた、ずっとベッドで寝てさえいればいいあの狭い空間は、二度とは戻ってこない。

 これからは、自分一人で生きていかなくてはならなかった。

「……おばあさん」

 その場で、アレは泣き崩れた。
 今まで支えてきてくれたことが、失って初めて骨身に染みていた。

 ありがたかった。
 感謝はしていたが、それでもまったく足りないものだった。

 最期に自分の命を、助けてくれた。

 あれがなければ、自分はここでこうしていない。
 たった一人、生き残ることができた。

 でもこれから先を、生きていく自信はない。

 何の当てもない。
 自分はベッドの上から外を眺める以外の生き方を、知らなかったから。
 あの悲しい世界に飛び込む勇気以前に、その発想すらもなかったから。

 だけど、やらなければいけない。
 死ぬと、死んだと、そう思った瞬間心の底から、細胞の一つ一つから、自分は誓った。

 命を神に、捧げる。

 その代わり、世界を変えると。


「う、ぅう……っ!」

 だから、諦めるわけにはいかなかった。
 どんなに苦痛でも立ち上がり、向わなければいけなかった。
 わからなくても、身体が動かなくても、どこかへ向けて歩き出すなくてはならなかった。

「っ、う……」

 涙を拭って、アレは祖母が使っていた杖をついて、立ちあがった。
 それに両手で全体重を支え、アレは一歩一歩と歩み出す。

「おばあさん……いってきます」

 最後にもう一度振り返り、アレはあてのない旅に身を投じていった。



 村の全景を、初めて見ることになった。

 それは思っていたよりも、ずっと大きかった。
 窓から見えていた世界は、村のほんの一部に過ぎなかった。
 同じような街角を何度も目にしながら、そして村の入り口までやってきた。

 そこには繋がれた馬が3頭もいた。
 すごい迫力に、アレは圧倒された。

「ハァ……ハァ……」

 そこで、体力は尽きてしまった。
 ぐったりと、その場に倒れ込む。
 まるで動いたことがなかったから、あっという間に限界を迎えてしまう。
 窓から見えた走りまわっていた子供や大人が、少しだけ羨ましく思えた。

 これから、どうしたらいいのか?

 ここまで、誰ひとりとも会わなかった。
 このまま村にいても、どうしようもない。
 だけど村を回るだけでも、この有様だ。

 このあと、どうすればいいのだろう?

 へたり込み、両手を後ろの地面につき、天を仰いだ。
 青いまっさらな空が、そこには広がっていた。

 広い広い空だった。

 こんなに、空は広い、そして高い。
 それを初めて知った。
 自分が存在する世界は、こんなにも広い。

 手を、伸ばした。

 届かない。

 まったく、なんにも。

 自分の小ささ、無力さを思い知らされる。
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